17.迷惑ではある
「ヒッチハイクってどう思います?」
「別にどうも思わないけど」
「私は、何か旅の途中でトラブルがあって仕方なくヒッチハイクするなら全然構わないですし、乗せてあげたいとも思いますけど、ヒッチハイク前提で旅に出ている人を乗せたいとは思えないんですよね。それって人に迷惑をかける前提ですから」
「ヒッチハイクが必ずしも迷惑とは限らないけどね」
「刹那さんはヒッチハイクしてる人を乗せてあげますか?」
「私は絶対乗せない」
「理由を聞いても?」
「普通に迷惑だから」
「・・・・・・」
「本当に困ってるように見えても、そう装った犯罪者の可能性もあるしね」
「あ〜、確かにそれはありますね」
「人の善意を利用した犯罪は沢山あるから気をつけたほうがいいよ」
「そうですね」
「善意って、ときどき悪意として返ってくることがあるから基本的に割に合わないよね」
「そうなんですよね。善意って、それをしたことで得られる最大のメリットは感謝されることでしかないのに対し、デメリットは下限がない。例えばですが、高齢者が重そうな荷物を持っている時、その高齢者が本当に困っているのか、困ったふりして誰かに手伝わせようとしてるのか、手伝わせた後に荷物の中身が壊れていると難癖つけるつもりなのか、それを見分けることは難しいです。そして、その人を助けたことで得られるのは自己満足と感謝されることでしかないのに対し、もし難癖つけられて弁償するはめになったら、とんでもない損失になります。まあ、極端な例ですけどね」
「それでも困っている人がいたら助けるんでしょ?」
「・・・・・・まあ、心に余裕がある時は助けると思います」
「損な性格だね」
「そうかもしれません。ただ、最近は全然余裕がなかったですけどね。余裕がなくて、電車で高齢者に席を譲らず、譲らなかった自分に失望する、そんな日々を送っていました」
「優先席ならまだしも、必ずしも高齢者に席を譲る必要はないと思うけどね。辛い時なんかは特に」
「そうなんですけど、なんか罪悪感があって」
「まあ、分からなくはないけどさ。・・・・・・ちょっと今ふと思ったんだけど、仮にその高齢者がお金持ちだったとしたら、グリーン車に乗れよって思わない? 電車で立っているのが辛いのならグリーン車に乗ればいいだけで、席を譲ってもらう前提で、金に余裕があるのにグリーン車を使わないのはどうなんだろう」
「確かに、金に余裕があるのに席を譲ってもらう前提でグリーン車を使っていなかったとしたら腹立ちますが、そういう人は殆どいないんじゃないですか? あ、ですが、立っているだけで辛いような人が新幹線の指定席ではなく自由席にいたら何してるんだとは思いますね。金があるないに関わらず」
「確かにね。・・・・・・人に迷惑を全くかけない事は出来ないけど、出来るだけ迷惑をかけないように行動することは出来るからね」
「それで言いますと、電車やバスでの赤ちゃんの泣き声ってどう思いますか?」
「特には何も思わないけど」
「仮に車を所持していて、車移動に問題がないのなら車を使ってほしいとは思いませんか? 別に赤ちゃんが泣いていようが怒りとかは湧きませんが、それはそれとして、五月蝿いは五月蝿いですから。赤ちゃんに責任はないですし、親に対しても特に何も思わないですけど、仮に親が、赤ちゃんが泣いているのに対して全く焦らず五月蝿くしてるのは当たり前みたいな態度だったら少しだけモヤっとしそうですし」
「まあ、分からなくはない」
「夜中にバイクの爆音が響いてたら腹立ちますけど、パトカーのサイレンが鳴り響いてる場合は別に許せます。ですが、それはそれとして、夜中にパトカーのサイレンが鳴り響いているのが迷惑か迷惑でないかで言えば迷惑ではあります。まあ、だから何だという話ではありますけど、別に許せるし仕方ないとは思うけど迷惑ではあるよなっていう事とかを、言い辛いけどなんか言いたかった、それだけです」
「確かに言い辛いよね。人の、良かれと思っての行動とかもそうだけど」
「言い辛いですね〜」
「・・・・・・本当にね」




