11.誹謗中傷に対しての誹謗中傷
「誹謗中傷に対しての誹謗中傷についてどう思いますか?」
「う〜ん、誹謗中傷に対しての誹謗中傷であったとしてもさ、やってる事は同じだよね」
「そうなんですよね。やってる事は同じ。ただ、これは個人的な感想でしかないですけど、普通の誹謗中傷と、誹謗中傷に対しての誹謗中傷では、それに対する印象というか軽蔑度合いと言いますか、その誹謗中傷を見た時の不快感が全然違うんですよね。勿論、内容にもよりますけど」
「まあ、分からなくはないよ。多分だけど、誹謗中傷に対しての誹謗中傷を見た時って、その元々の誹謗中傷を自分が見た時に感じた心の中の思いを代弁してもらった感覚に近いと思うんだよね。だから、そこまで不快にならないんじゃない?」
「あ〜、確かにそうかもしれません。自分は誹謗中傷を絶対にしないですが、それはそれとして、何かを思ったりとかはありますし」
「別に心の中だけで悪口を言う分には構わないと思うよ。だけど、それを本人に伝わるかもしれない場所で発信することが問題なんだよね」
「それで言いますと、誹謗中傷に対しての誹謗中傷もアウトですね」
「そう。アウト。・・・・・・なんというかさ、人って相手が悪人だと知った途端に自分の行動を正当化して過激になるところがあるよね」
「そうですね。なんなら、自分は良いことをしていると思いながら誹謗中傷してる人のほうが多い可能性すらあります。まあ、これは前にも言いましたが、誹謗中傷という罪に対しての罰が適切ではないのが一つの要因だとは思いますけどね」
「そうだね」
「・・・・・・本人は誹謗中傷に対しての誹謗中傷をしているつもりなんでしょうけど、誹謗中傷をしてきた相手だけに留まらず、全く関係ない不特定多数に対しても誹謗中傷で返してしまっているパターンって結構ありますが、あれ、どう思います? 個人的には、普通の誹謗中傷よりも不快に思うことが多いのですが」
「最悪だね。この前テレビ見ててさ、飲み放題のジョッキが小さいとかで炎上した店があったみたいで、それに対してどう思うかみたいな内容だったんだけど、飲み放題の店なんかに行く貧乏人ごときが文句を言うな、って発言してる俳優がいて凄い嫌な気持ちになった」
「え? それ、本当の話ですか?」
「やばいよね」
「誰がその俳優を好きになるんですかね」
「・・・・・・どうだろう。まあ、ファンは沢山いても、人柄を好きになってる人はいないのかもね。・・・・・・その人からすれば、飲み放題のジョッキが小さいと文句を言っていた人に対しての発言なんだろうけどさ、それを聞いた人からすれば、飲み放題の店に行く全ての人に対しての誹謗中傷になってる訳で、それに気付いているのかどうかは分からないけど、普段から、お金で苦しんでいる人に対して貧乏人と馬鹿にして見下しているということが分かる発言だし、心が貧しいんだろうね」
「人を馬鹿にする人ほど、自分がその馬鹿にしている人に馬鹿にされている事に気付かないですからね。その人はお金で苦しんでいる人を貧乏人と馬鹿にしているのでしょうけど、その馬鹿にしている人達に、心の貧しい人だと馬鹿にされてる事には気付けないのでしょうね」
「しかもこういう人とかってさ、多分、飲み放題の店に行く全ての人を見下した発言になってるよって指摘されたとしても、俺はジョッキが小さいと文句を言ってる連中に対してのみに文句を言っただけで、そっちの読解力がないだけだろ、みたいに考えるんだよね」
「もう老害ですね」
「本当にね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・飲み放題のジョッキが小さいという理由で炎上。これだけ聞くと、そんな事で一々文句を言うなよと思ってしまう気持ちは分かりますが、例えばそれに加えて、人手が足りていないせいで注文の回転が遅かったりすれば、飲み放題なのに全然飲めないという状態になってもおかしくないですし、もしそうなら、炎上してしまった理由としては割と納得できますけど、なんか、正しい情報だったとしても、その情報が足りなければ印象はガラッと変わりますよね」
「そうだね。ただ、今のは仮定だし、実際に、本当にジョッキが小さかっただけで炎上している可能性もあるけどね」
「けど、ジョッキが小さかっただけで炎上しますかね? 昔、たこ焼きの食べ放題で、注文しても運ばれてくるのが遅くて、まだ空腹状態なのに食べ放題の時間が終了した、という経験があるので、ジョッキが小さかったせいで全然飲めなかったという背景があるなら、文句を言いたくなる気持ちは分かるのですが」
「そういう背景があるかないかでも、情報の印象は変わるけど、そういう背景を想像できるかどうかでも、情報への印象は変わってくるよね」
「そうですね。・・・・・・女性芸人のパワハラが問題になった時に、使えねえなと言われただけで辞めるやつは何処に行っても仕事続かないだろ、みたいなコメントを見て、使えねえなって一回言われただけで辞めてる訳ないですし、毎日のように人格を否定され、何かをするたびに使えねえなと罵倒され、一つ一つの行動を取るたびに何かを言われるのではないかと怯えだし、失敗を恐れてミスが増え、無能と蔑まれ、悪夢が続き、不眠症となり、更に上手くいかなくなり、仕事を辞める。そういった背景があるのではないかという想像が出来ないものなのかなと思いましたが、同じ情報を得たとしても、人によって、その情報への捉え方が違うので、まあ、意見は合わないですよね」
「やけにリアルな想像だね」
「まあ、飽くまでも想像でしかないので、実際のところは分からないですけどね」
「・・・・・・」
「・・・・・・思ったのですが、誹謗中傷に対しての誹謗中傷はアウトって話をしながらも、誹謗中傷に対しての誹謗中傷、に対しての誹謗中傷的な発言、を私達は自然とやってしまっていましたね。老害とか心が貧しいとか。まあ、誹謗中傷と言うよりかは批判や悪口って感じですけど」
「一口に誹謗中傷と言っても、どこからが誹謗中傷に該当するのかってところは人によっても違うだろうから、ただ批判をしただけのつもりが、相手からは誹謗中傷だと判断される可能性もある訳で、結局は、本人に伝わるような場所で何かを発信する行為自体を控えたほうがいいのかもね」
「そうですね」
「・・・・・・まあ、私が今のこの状況を配信していたとしたら、本人に伝わるような場所で何かを発信する行為に該当しちゃうんだけどね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・してないですよね?」
「・・・・・・どうだろうね」
「・・・・・・」
⚠︎この作品はフィクションです。




