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ふしぎ体験レストラン『ごまんたる』  作者: ひるき 将
第五章『歴神話巡り』

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第十三話「神様のため息・ポセイドンの悩み」

パルテノン神殿には、観光客が沢山いたので私たちは裏口に回りました。大理石でできた高さ2mほどの柱を、みんなでくるりと一周しました。

「いつも観光客が多いので、この柱を一周するのです。そうすると、観光客がいないパルテノン神殿を楽しむことが出来るのです」

「ほ~、それはありがたいです」私は感心しました。

「うっほ~」ゆきおさんも興奮しました。

「やるじゃねぇか」ホルモン氏は、これで一儲け出来ないか考えていました。神殿の中に入ると、アテナが出迎えてくれました。

「あら、リコさん。お久しぶりです」

アテナさんは、白い(よろい)(かぶと)に身を包み、赤いマントを羽織(はお)っているものの、清楚(せいそ)ないでたちでした。

「アテナさん、お久しぶりです。この方たちは、ごまんたるの常連さんたちです」私たちが紹介されました。

「こんにちは」

「うっほ~」

「わたくしは、こういうものです」ホルモン氏は名刺を渡しました。

穂留(ほる)()(もん)太郎(たろう)

・有名政治家の知り合いのいとこ

・有名サッカー選手のファン

・有名野球選手と同じ誕生日

・有名芸能人と同じ星座

※儲け話を聞くのが得意です


ホルモン氏は、もみ手をしながらアテナさんににじり寄りました。

「ときに、アテナさん。ひとつ儲け話があるのですが、・・・」と言って、いやらしい目つきでアテナさんを見つめました。

「ぞっわっ!」アテナさんの身の毛が弥立(よだ)ちました。

「あら、ごめんなさい。わたくし暇ですが、忙しいので失礼します」と言って、リコさんに会釈(えしゃく)をして行ってしまいました。

「(逃げましたね~)」ホルモン氏以外が、状況を瞬時に理解しました。

「ちっ! 儲かる話になるところだったのに・・・ぺっ」と言って、(つば)を吐きました。

「ちょっと、ホルモン氏! 神聖な神殿のなかで、そういう真似はやめてください! アナタは、何か所出入り禁止になりましたか?」リコさんは怒りました。

「んも~、怒る姿もカワイイね~。その顔が見たくて、ワザとやっているのさ~」

「あなたを、見捨てて逃げたいです!」リコさんは不機嫌でした。

「何も聞けませんでしたね~」私は残念でした。

「仕方がありません。ポセイドン神殿へ行きましょう」私たちは、ポセイドン神殿へ向かいました。

【ポセイドン神殿】バルカン半島の南端、スニオン岬にある海神ポセイドンを祀る神殿。紀元前444年に建てられた当時は、42本の大理石の円柱が並んでおり、6mのポセイドンの銅像がおさめられていたという。アテネの70km南に位置し、エーゲ海を一望できる。


私たちがスニオン岬に着くと、目の前に素晴らしい壮大な神殿が建っていました。

「! 素晴らしい!」私はため息が出ました。

「うっほ~」ゆきおさんも興奮していました。

「ね? ステキでしょ?」リコさんが言いました。

「? 何でぇ、ただの壊れた神殿じゃねえか」ホルモン氏がぶっきらぼうに言いました。

「・・・やはり、アナタには見えませんか。こんなステキな神殿が・・・」リコさんは残念そうでした。

「ん? 何か見えんのか?」ホルモン氏には、建築当時の壮大な神殿が見えていませんでした。そこにポセイドンさんが現れました。

「これは、これは、リコさんじゃないか。お久しぶりだね」白髪と白い(あご)(ひげ)が印象的でした。胸板も厚く、歴戦の刀傷が腕や足に残っていました。

「ポセイドンさん、お久しぶりです。こちらは、ごまんたるの常連さんたちです」

「こんにちは~」と、私は挨拶をしました。

「うっほ~」と、ゆきおさんも挨拶をしました。

「ごびさば~」と言いながら、ホルモン氏がポセイドンさんににじり寄りました。

「(うっぷっ!)」ポセイドンさんは、何かを堪えている様子でした。

「いつも尊敬しております。ですからひとつ、私を儲けさせてください」下衆な笑みを浮かべ、もみ手をしながら、ポセイドンさんにへりくだりました。

「こ~の、スカタン!」と言って、ポセイドンさんはホルモン氏にチョップをしました。

「初対面の相手に向かって、要求をするなどもっての外だ。スカタン半島まで飛んで行け~」と言って、ホルモン氏を蹴飛ばしました。

「リコさん、さよ~なら~。こんど結婚してね~」と言って、ホルモン氏は何処かに飛んで行きました。

「面倒なのがいなくなって、スッキリしたわ。ポセイドンさん、失礼しました」

「いや、い~んだよ。あの手の者は、追放するに限る。アテナより伝言があった」

「アテナさんから、お聞きでしたか」

「パルテノン神殿内で唾を吐いた罰だ。じつにけしからん!」

「大変失礼しました」

「もう、罰は与えた。水に流そう」ポセイドンさんは、寛大な方でした。私は、疑問に思いました。

「ポセイドンさん、質問してもよろしいでしょうか?」

「? お主の名は何という。何を生業(なりわい)としておるのだ?」

「はい。わたくし猫田(ねこた)銀杏(いちょう)と申します。作家(ものかき)をしております。楽しいことや、珍しいことを文章に書いて皆さんに伝えております」

「うむ。質問を許そう」

「私たちの知っているギリシャ神話の中では、ポセイドンさんとアテナさんは激しい戦いをされました。随分(ずいぶん)アテナさんと親しげですが、仲直りされたのですか?」

「うむ、みんな誤解しておるんだ」

「と、仰いますと?」

「お主たちと違って、神はみな長生きだ。いつまでもケンカしておるのはしんどいのだ。アテナのことなど恨んでおらんわ。勝敗を決めたのも『贈り物合戦』だ。血など流しておらんのだ」

「なるほど、寛大でいらっしゃる」

「ねこたとやら、考えてみなさい。年を取れば取るほど、知人も友人も少なくなっていくものだ。ただでさえ、少なくなっていく友人とケンカすることはない。みんな仲良くせねばならん。それにアテナは、ゼウスの一番お気に入りの娘ではないか。カワイイ姪っ子をいつまでも憎み続けるはずがなかろう。(よこしま)な目で物事を見る者は、いつも悪いところしか気にしないものだ。それではイカン」

(おっしゃ)る通りでございます」

「だのに、神話の世界では、いつまでもワシは暴れ者だ。無限に怒り続ける訳がなかろう」

「その通りでございます」

「弟のゼウスは、浮気ばかりが騒がれるし、兄のハーデスも嫁のペルセポネ誘拐で有名だ」

「存じ上げております」

「人は、悪い面ばかりを誇張して、ワシたちを反面教師にばかりする。『悪い面ばかりに目を向けてはいかん』と書いて、世の中に広く正しく伝えるのだ」

「仰せに従います」私は、ポセイドンさんの話を、取材用ノートの『閻魔帳(えんまちょう)』に書き入れました。

「『アテナとの戦に敗れてスニオン岬に追いやられた』とか、『嵐が激しいのは、ポセイドンに貢ぎ物を贈らないからだ』とか、ワシのイメージが悪くなる噂はコリゴリだ。ワシは暴れん坊ではないし、搾取王でもない」

「お目にかかれて、確かめることが出来ました」

「よろしく頼んだぞ!」

「承知しました」

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