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[第四話、春のフレッシュ新生活]

毎週、月、水、金の更新を予定してます。

※夜の21時までには投稿します!

どうぞよろしゅうに〜

いよいよ入学式が始まった。


広々とした講堂の奥、荘厳な扉がゆっくりと開く。

新入生である俺たちは、校長の「新入生に大きな拍手を」という言葉を合図に、一組ずつ長い通路を歩き、指定された席へと向かう。

 

俺の隣にはジョン。

 

周囲を見渡せば、見覚えのある顔レイラ、ミシェル、ミケロスそして俺を助けたリンと呼ばれていた少女も見える。

 

改めて、俺はこの世界で"新たなスタート"を切ることを実感した。


校長の挨拶が始まる。


「ご入学おめでとうございます」


壇上に立つソフィア校長は、小柄な体を真っ直ぐに伸ばし、新入生を見渡す。

その声音は、まるで包み込むように柔らかく、それでいて芯のある響きを持っていた。


「皆様がこの三年間で学ぶことは、他の何にも変えられない、一生の宝物になることでしょう。時には辛いことも、苦しいこともあるかもしれません。ですが、そんな時こそ——同級生、先輩、そして先生方が皆さんを支えます。どうか安心して、沢山学び、立派な魔法使いになってください」


ソフィア校長の言葉が静かに講堂に広がる。

 

それを合図に、舞台の端で待機していた楽団の生徒たちが演奏を開始。

 

美しい旋律が講堂全体を満たし、新入生としての心が引き締まる。


「続いて、今年度の生徒会長からの挨拶です」


教頭のマーシャルの言葉と共に、大きな扉が再び開かれる。

 

そこから、黒髪ショートの女生徒が堂々と壇上へ歩いていく。


その瞬間、周囲の空気がピリッと引き締まった。


「やっぱりレイヴン先輩が今年の生徒会長なのね」


「そりゃあそうでしょう! だってサンクチュアリのリーダーにもなったんでしょ?」


そんなヒソヒソ声が、新入生の俺たちにも聞こえてくる。


「なぁジョン、あの人の名前教えて」


「レイヴン・アーチボルド。ギルド『サンクチュアリ』のリーダーでもある凄い人」


「なんだよそのサンクチュアリって」


「後で説明あるから、今は黙って聞いとこうよ」


壇上の生徒会長を見る。

顔立ちは凛々しく、黒のローブにはファーがあしらわれ、風格すら感じさせる。

まさに**“トップ”**といった佇まいだ。


「はじめまして、1年生諸君」


生徒会長が口を開いた途端、講堂の空気がさらに静まり返る。


「私の名前はレイヴン・アーチボルド。入学おめでとう。今年度から生徒会長を務めることになった。よろしく頼む」


その声には、無駄な飾り気も、甘ったるい歓迎の色もない。

 

ただ、研ぎ澄まされた意思の強さが宿っていた。


「さっそくだが、今年は去年よりも更に飛躍するために君たちの協力が必要だ。ぜひこの学校で、各々が努力し、立派な魔法使いになってくれ。……以上」


生徒会長の挨拶が終わるや否や、講堂に盛大な拍手が響く。

彼女は一礼し、静かに自席へと戻った。



---


「お疲れ様、レイヴン」


「……あぁ」


隣に座る少女が、微笑みながらレイヴンへ声をかける。

 

ふわりとした長く艷やかなエメラルドの髪、穏やかな雰囲気とは裏腹に、どこか悪戯っぽい光を宿した瞳。

 

彼女の名はメリファ。

 

生徒会副会長にして、レイヴンの右腕だ。


「今年の1年生は、粒ぞろいだと噂に聞いたわ」


「そうらしいな」


「何人がサンクチュアリに入るかしら?」


「何人でもいいさ。使えなきゃ切るだけだ」


「こわーい♡ さすが生徒会長」


メリファは悪戯っぽく笑うと、そっと机の下でレイヴンの手を握る。

 

レイヴンの顔が一瞬で赤く染まる。


「バカっ// 机の下で手を握るのはやめろ、メリファ!」


「ふふ、怒った顔も可愛いわよ、レイヴン♡」


「やめろっ!!」

 

---


教頭が再びマイクを持ち、次は先生方の紹介が始まった。


「続いて、1年生の担任、さらに各委員会やギルドを担当される教員の紹介です。まずは、新たに1年生の担任を務めるホシノ・オリビア先生です。」


壇上に現れたのは、金髪ロングの女性教師だった。優しげな笑顔を浮かべながら、生徒たちに手を振る。


「ホシノです♪ みんな、3年間よろしくね!」


その瞬間、男子生徒たちの間にざわめきが走る。俺も思わず食い入るように見つめた。


この先生、めちゃくちゃ美人でしかも巨乳じゃねぇか!ナイス!


「ホシノ先生は引き続き魔法遺産調査団の顧問も担当していただきます。」


なるほど、つまり担任だけじゃなくギルドの顧問も兼任してるのか。担任がこの先生とか、俺の新生活、めちゃくちゃ楽しくなりそう。


「次に、魔術学研究所の担当、ライラ・ギャビン先生です。」


壇上に立ったのは、水色の髪を三つ編みにし、メガネをかけた研究者風の女性だった。白衣姿で、いかにも研究オタクって雰囲気が漂ってる。


「新入生諸君!ぜひ、ウチのギルドへ!」


俺の視線は、つい下へと向かう。


ケツデカい!ナイス!


そんな俺の隣で、ジョンが興奮気味に鼻を膨らませ、目を輝かせながら小声で叫んだ。


「ユウマ!僕はこの魔術学研究所に入るためにここに来たんだ!」


「そうだった?」


「うん!僕の目標は偉大な魔法学者になることだからね!」


こいつ、意外とちゃんとした夢を持ってるんだな。俺は何も考えずにこの世界に放り込まれたが、ジョンにはしっかりとした目的があるらしい。


「次に紹介するのは、魔法遺産調査団と園芸委員会を担当する、ガイ・バートラム先生です。」


登壇したのは、黒髪に無精ひげを蓄えた渋いイケオジだった。落ち着いた声で話し始める。


「やぁやぁ!今年も引き続き顧問になれて嬉しいよ。新入生も、もし古代魔法や植物に興味があれば、ぜひ入団してくれ。」


その瞬間、女子生徒たちから「キャー!」という歓声が上がる。


やっぱりな。ヒゲの似合うダンディな男ってのは、どの世界でもモテるんだな。


「本日不在ですが、サンクチュアリの顧問は、引き続きケビン先生です。」


サンクチュアリ、あの生徒会長レイヴンさんが率いるギルドのことだ。どんな先生なのか気になるが、名前だけでは想像がつかない。


その後もいくつかの先生が紹介され、ようやく入学式は校長の最後の挨拶を迎えた。


「ここまで長い時間、お疲れ様でした。では皆さん、良い一年を!」


再び壮大な演奏が響き渡り、俺達1年生は会場を退出した。



---


「ここが俺の部屋か……前に住んでたとこよりも広いな。」


入学式が終わり、俺は男子寮へと向かった。部屋に入ると、思った以上に広々としていて、つい独り言を漏らしてしまう。


「家具もそれなりに揃ってるな。冷蔵庫にキッチン……唯一足りないのはベッドくらいか。……って、俺、ベッド買う金なんかねぇじゃん。」


まさか異世界に来てまで金欠を味わうとは。俺は頭を抱えながら、部屋を見回す。


そのとき、ピンポーン!


部屋のインターホンが鳴り、俺は応答する。扉の向こうに立っていたのはジョンだった。


「うぃーす、どしたジョン?」


「へへっ、お金がなくて困ってるんじゃないかと思ってね。」


「お前ってやつは……神様か?いや、もう神と呼ばせていただきます!」


「誰もお金をあげるとは言ってないぞ!働かざる者食うべからず、って言うだろ?この学校には無数のギルドがあって、基本的にみんなそこに所属して仕事をしながら生活してるんだよ!」


「えぇ……異世界でも労働からは逃れられねぇのかよ……。」


「当たり前だろ!それに、ギルドには人気なところもあって、早めに申請しないと学校の外で働かないといけなくなるよ。」


「……で、さっき言ってたサンクチュアリ?あれって結局どんなギルドなんだ?」


「仕方ないなぁ、この情報通の僕が説明してあげるよ!サンクチュアリは、この学校のトップオブトップしか入れない実力主義のギルドなんだ!」


「ほうほう……じゃあ、そこに申請しに行こうぜ!」


「アホかーーー!!」


ジョンの強烈なツッコミが俺の側頭部を直撃し、俺は「ブルラァァァ!!」と叫びながら床に倒れ込む。


「いてぇ!なんで殴るんだよ!」


「サンクチュアリはスカウトされないと入れない!だから申請なんか行ったら鼻で笑われて、紙をビリビリに破られて、粉々にされて、木っ端微塵に……」


「分かった分かった!じゃあ、どこなら入れるんだよ!」


「そんなの決まってるだろ!僕が目指す魔術学研究所だよ!さぁ、行くぞー!」


「そこに行くのはいいけど……まずは、なにか奢ってくれませんかね?ジョンさん、朝から何も食べてなくて、そろそろ死ぬ……。」


「はぁ……仕方ないなぁ。じゃあ、食堂に行こう!」



---


ジョンの粋な計らいで、俺たちは食堂に向かった。


「おいおい、食べ過ぎでしょ……僕のお金がぁ……」


「しゅまん……でもマジで、朝から何も食べてなくてさ……」


「飲み込んでから話してよ、何言ってるか聞き取りづらいよ!」


俺はガツガツと食べ物をかき込み、ようやく落ち着いて水をゴクリと飲み干した。


「ふぅ……ごちそうさまでした!この恩は働いて返すから安心してくれ!」


腹も満たされ、満足気に水を飲んでいると、ふと隣から声がした。


「隣、空いてますか?」


「どうぞー……って、あれ!?君!」


顔を上げると、そこには今朝俺を助けてくれたポニーテールの少女が立っていた。


「あっ、あなた……今朝の……」


「ユウマ君、この方と知り合いなの?」


ジョンは若干焦りながら俺を見る。


「俺の命の恩人だ!……えっと、名前は?」


「剣崎 凛」


「オレはヤマトマルって言うんだぜ!よろしくッス!」


「ヤマトマル……言葉遣い……」


「すんません」


「俺はユウマ!ハヤシ・ユウマだ!」


「ユウマ、ね。じゃあ、私と同じ風華国出身なのね。」


「……どこだよ、それ?俺は日本生まれだぜ?」


「ニホン?それ、どこ?」


そうか、日本なんかこの世界には存在しないんだったな。


「あー、俺なんか忘却魔法をかけられたみたいで、若干記憶喪失なんだ。」


「なるほど。だからあのとき、縄を自分でほどけなかったのね。」


「ユ、ユウマ!早く行こう!剣崎さん、また後で!」


「おい、引っ張るなって!」


ジョンは俺の腕をグイッと引っ張り、その場を逃げるように去っていった。


「……変なの。」


凛は呆れたように俺たちの後ろ姿を見送った。



---


ジョンに引きずられてしばらく歩いた俺は、逆に奴の襟元を掴んで急ブレーキをかけた。


「ちょ、お前何すんだよ!?急に静かになって、どうしたんだよ?」


「どうしたもこうしたもないさ!よくあの剣崎凛と親しく話せるよ!」


「いやいや、親しく話してたわけじゃないって。ただ自己紹介しただけだろ?」


ジョンは真剣な表情で俺の目を見て言った。


「剣崎凛……僕たち1年の中でもトップクラスの実力者だ。しかも、剣崎家ってのはこの世界に伝わる三大魔法使いの名家のひとつ。その名を知らない者はいないレベルの有名人だぞ!」


「……いやいや、俺、この世界の住人じゃねえし?そんなこと知るわけないだろ。」


「とにかくだ!今度からは、親しく話していい相手じゃないってことだけは覚えておくように!」


「了解しましたよ、先生。」


なんだかよくわからないが、これ以上この話題に触れても仕方なさそうなので、とりあえず適当に返事をしておいた。


「さぁ、気を取り直してギルドの申請に行こう!」


そう言って、俺とジョンは魔術学研究所へ向かった。


[おまけ] ドライフルーツ大作戦


「うわぁ〜!美味しそうなドライフルーツがいっぱいッス!……じゃなかった、ござる!リン様!リン様!オレにこの美味しそうなドライフルーツ、買ってほしいでござる〜!」


「……ダメ。」


「えぇー!?ケチは老いのもとって言うでござるよ?」


「絶対ダメ。」


「ふーんだ!ダメダメ!リン様に頼まなくたって、自分で買うでござる!」


「……どうせまた食べきらないでしょ?あなた、飽き性なんだから。」


「ギクッ……!そ、それはそれ、これはこれでござるよ……。」


「ダメったらダメ。家にあるドライフルーツを食べきってからしか買いません!」


「えぇぇーん!リン様のケチん坊〜!!」


次回!「第五話、風呂は命の洗濯」

第四話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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