[第五話、風呂は命の洗濯]
毎週、月、水、金の更新を予定してます。
※夜の21時までには投稿します!
どうぞよろしゅうに〜
「これ、もしかしてギルドの申請待ちの列なの……」
俺は目前に広がる光景を見て、思わずため息をついた。
先頭が見えないほどの長蛇の列、それはまるで超人気テーマパークのアトラクションに並ぶ客の群れのようだった。
「そ、そりゃあ……ギルドの中でも屈指の人気を誇るし、それに2年生や3年生も、この時期にもう一度試験を受けに来るって聞いてたけど……ここまでとはね……」
ジョンも圧倒されたように、列の長さを見上げる。
俺たちは流れに身を任せながら、じりじりと前進すること5時間。
日はすっかり落ち、辺りは夜の闇に包まれていた。
そして、ようやく俺たちの順番が回ってきた。
「あのー!ギルドの申請に来ました!ジョン・ミラーと申します!」
ジョンが元気よく名乗る。
が…
誰も返事をしない。
「……おかしいな?」
ジョンが眉をひそめ、カウンターの奥へと視線を送る。
「すみませーん!誰かいませんかー!?」
ジョンが声を張ると
ズドォン!!
突如、爆発音と共に部屋の奥から黒煙が立ち昇った。
「な、なんだ!?」
「事故か!? 行くぞ! ジョン!」
俺とジョンは即座に目を合わせ、迷うことなく部屋の奥へと駆け込む。
扉を開けた瞬間
黒煙が一気に吹き出し、視界を遮った。
「ゲホッ、ゲホッ……っ! くっそ、見えねえ!」
鼻と喉に刺すような刺激が入り込み、思わず咳き込む。
「ジョン! 魔法でなんとかならねぇのか!」
「やってみる!」
ジョンは素早くローブの内側から杖を取り出す。
そして杖の先から心地よい風が吹き起こり、黒煙がたちまち霧散していく。
——視界が開けた。
「よかった..僕の開発した杖が役にたった」
と、その時——
「ゲホッ、ゲホッ……いやー、死ぬかと思ったー! 誰か知らないけど、ありがとさん!」
床にへたり込んで咳き込む水色の髪の女性がいた。
毛先はピンクに染まり、白衣を着ていて、丸メガネの奥の目をぱちぱちと瞬かせている。
「あれ? 先生……ライラ・ギャビン先生じゃないですか?」
「大丈夫っすか!?」
俺とジョンは顔を見合わせながら駆け寄った。
「んー? 大丈夫、大丈夫! こんなの、いつものことだから! ハハッ!」
ライラ先生はケホケホと咳をしながらも、どこか楽しそうに笑っていた。
顔についた煤をタオルで拭い、メガネをかけ直すと、ようやく俺たちに視線を向ける。
「ところで君たち……申請に来たの?」
「はい! 僕たちが最後の申請者です!」
ジョンが胸を張る。
「なーるほどねぇ……でもさ、ごめんね?」
「え?」
「さっきの子でちょうど定員埋まっちゃったんだ。」
「……え?」
俺とジョンは呆然とした。
「そ、そんな〜……」
ガックリと肩を落とすジョン。
俺は軽く溜息をついて、彼の肩をポンと叩いた。
「……仕方ないだろ? 次のギルド探そうぜ」
「うぅぅ……」
ジョンは未練たらしく、ぶつぶつと何かを呟きながら、悔しそうに部屋を出て行く。
俺も最後にもう一度、ライラ先生の方を振り返った。
先生はヘラヘラと笑いながら、どこか申し訳なさそうに手を振っていた。
「ごめんね〜、また来年、よろしくぅ!」
ジョンの肩を落とす姿を見て、さすがに気の毒に思っていたその時——
「ちょっと待って!」
ライラ先生が突然、何かを思い出したようにジョンを呼び止めた。
「ん? なんでしょうか……」
「聞き間違えじゃなかったら、君さっき杖を開発したって言ってたわよね? もしかしてモノづくりが好きなの?」
その瞬間
ジョンの目がキラッキラに輝いた。
「好きです! 大好きです!」
「おぉ、いいねぇ! じゃあ聞かせてよ、君の杖はどんな仕組みなの?」
「これはですね! 氷の魔法石で空気を冷やし、炎の魔法石で空気を温め、その温度差によって風を発生させる構造になってるんです!」
ジョンは得意げに杖を掲げ、早口で説明し始めた。
「へぇ〜! でも魔法石ってそんな簡単に手に入らないでしょ? どうしてるの?」
「そこは工夫しました! 日常で使われる小さな魔法石を利用してるんです。これなら入手が容易で、戦闘用には向かないけど、僕みたいな土魔法しか使えない人間でも十分な風を起こせるんですよ!」
「ほうほう……なるほどねぇ……」
ライラ先生は腕を組みながら、興味深そうにジョンの杖を見つめた。
「ちょうどいいわ! 実はね、今、開発中の飛行用の箒があるんだけど、君のアイデアも聞いてみたい!」
「えっ!?」
「ちょっと奥まで来て!」
そう言うと、ライラ先生はジョンの腕を引っ張り、研究室の奥へと進んでいった。
俺も興味が湧いて、後を追うことにする。
---
「これが、今開発中の新型飛行箒!」
研究室の奥に入ると、そこには普通の箒……に見えるが、よく見ると細部に特殊な装置や魔法石が組み込まれていた。
「へぇ、面白そうですね。これはどうやって飛ぶんですか?」
「光の魔法石を使ってるのよ!」
ライラ先生は箒を指差しながら説明を続ける。
「光の魔法石はエネルギーを集中的に放出できるから、それを推進力として利用してるの。でもまだ試作段階でね、炎の魔法石よりは安全だけど、肝心の安定性が微妙なのよ」
ジョンは箒に近づき、興味津々といった様子で細部を観察する。
「なるほど……つまり、エネルギーの放出量が一定じゃないから、飛行が安定しないわけですね?」
「そう! だからどうやったらもっとスムーズに飛べるか、君の意見を聞きたいの!」
ジョンは数秒間、じっと箒を見つめ、頭の中で何かを組み立てるように考え込んだ。
「うん……まずですね、エネルギーの偏りをなくすために、魔法石の設置位置を最適化するのが重要です!」
「ほうほう」
「あと、飛行の安定性を高めるなら重力魔法石と風の魔法石を組み合わせるのがベストですね。重力魔法石で上下の揺れを抑えて、風の魔法石で横の安定性を確保する……」
「おぉっ、それだ!! それならバランス良く飛べそう!」
ライラ先生は手をポンと打ち、ジョンのアイデアを絶賛する。
「いやー、面白い! ねぇジョン君、うちのギルドに入らない!?」
「えっ!? いいんですか!?」
「もちろん! 君みたいな人材がほしかったのよ!」
「ありがとうございます!!」
ジョンは嬉しさのあまり、思わず飛び跳ねそうになったが
「あっ……でもユウマが……」
そこで、俺の方を気にして振り向いた。
「俺のことなら気にすんなって!」
俺は笑いながらジョンの肩を叩く。
「ジョン、お前はここでやりたいことをやれよ。全力で応援してるから!」
「ユウマ……ありがとう!」
ジョンがギルドを決めたことで、俺の行く先?も決まりそうだった。
「ハヤシ・ユウマ君、だよね?」
ライラ先生が俺の方に目を向ける。
「そうですけど……なんで俺の名前を?」
「そりゃあ、入学初日に校長室に呼ばれるなんて、滅多にないことだからね〜。 ある意味、有名人だよ?」
「いやいや……そりゃどうも……」
「ま、君なら園芸委員のガイ先生のとこに行ってみ? もしかしたら仕事をもらえるかもしれないよ!」
「マジっすか!? それ、助かります!」
「うんうん、それじゃジョン君! 明日からよろしくね♪」
「はい! こちらこそお願いします!」
こうして——
ジョンは希望のギルドに所属し、
俺もなんとか仕事を見つけることができた。
めでたしめでたし、というわけだ。
---
湯船の中で……
「あぁ〜、いい湯だ……」
俺の長い1日がようやく終わった。
初日から色々あって大変だったけど、ジョンっていう面白い友達もできたし……何より、これでしばらくは飯に困らないはず。
……そういや、某14歳が主役のロボットアニメに出てくるエロいお姉さんが言ってたよな……『風呂は命の洗濯』って。
きっと今日みたいなことを言うんだろうな……
それにしても、早いところ魔法を使えるようにならないとな……
湯気が立ち上る風呂場で、俺はぼんやりと天井を見つめながら、これからのことを考えていた。
こうして、俺の異世界転生初日は幕を閉じた。
[おまけ]
ジョン・ミラーのなんでもお応えします!のコーナー!!
「パフパフパフ〜! さぁ始まりました! 今日も元気にいってみよう!」
「今回のゲストはこちら! 僕の親友、ハヤシ・ユウマくんです!」
「どうもーこんちはー、ユウマでーす」
「今日は僕に何を聞きたくてここに来たのかな?」
「俺が今日知りたいのはズバリ! 魔術学研究所についてだ!」
「オーケー、それならこの僕が全て解説しよう! おいで、僕の可愛い助手、モナーク!」
「ここからはボク、モナークも一緒に説明するココ!」
魔術学研究所とは!?
「魔術学研究所は、魔法と知識の探求を専門とするギルドココ。古今東西、あらゆる魔術に関する研究とその実践を行っているココ!」
「つまり、魔法をただ使うだけじゃなく、魔法の仕組みや応用方法を徹底的に研究する場所ってことか?」
「その通りココ! さらに、このギルドは魔法の理論を深く理解し、その知識をもって世界に貢献することを目的としているココ!」
「なるほどな……。で、この研究所はいつからあるんだ?」
「魔術学研究所は、エンチャントレルム魔法学校の設立と同時に創設されたギルドココ!」
「当時、魔法の力はまだ謎に包まれていて、多くの魔法使いたちは個々に知識を探求していたココ。しかし、ある偉大な魔導師が、知識を共有する場の必要性を説き、こうして研究所が設立されたココ!」
「それ以来、魔術学研究所は魔法の知識を追求する者たちの集う場所となり、今に至るココ!」
「なるほど、歴史があるわけだな……。で、具体的にはどんな研究をしてるんだ?」
魔術学研究所の活動内容
「よくぞ聞いてくれた! ここからは僕が説明しよう!」
「魔術学研究所の主な目的は、魔法の知識を収集・保存し、さらに発展させること! そのために以下のような研究を行っているよ!」
魔法の理論研究
→ 魔法の基本原理やその応用に関する理論的な研究を行い、新しい魔法技術の開発を目指す!
魔法生物の研究
→ 魔法生物の生態や特性を調査し、魔法と自然の関係を解明! 例えば、ドラゴンの魔力の源や、幻獣の生態研究なんかもここでやってるんだ!
魔法具の開発
→ 新たな魔法具の開発や、既存の魔法具の改良を行い、実生活や冒険に役立つアイテムを生み出す!
「なるほどなぁ、魔法ってのは実戦だけじゃなく、こういう研究や技術開発にも使われてるんだな!」
「その通り! だから、ここでは単に魔法を学ぶだけじゃなく、未来の魔法の可能性を切り拓く研究をしているんだ!」
「おお、ちょっとカッコイイじゃねぇか!」
「でしょでしょ!? さて、ユウマくん! 魔術学研究所について理解できたかな?」
「はい! 完璧に理解しました、ジョン先生!」
次回! [第六話、イケメンっていつもそうですね]
第五話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧




