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体操服から始めるニート生活  作者: 兎虎彩夜華
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神楽としい(2-2)

作者の更新スピードが遅いせいで急にぜうす先生視点からしいちゃん視点になってますごめんなさい。

 


 ぐちはまとの話が終わった後、雛子ちゃんの計らいでそのまま応接室でカレーを食べることになった。


「んんー!おいしい!やっぱり五人囃子雛子(ごにんばやしひなこ)特製カレーは美味しい!」


 やっぱりカレーはみんなで食べるものだと思う。


「おーい、しいちゃん?」


 そう。ぜうす先生の膝に座りながら!


「んまんまんん?なにか?じぇうすしぇんしぇい」


「一応浜口先生もいるんだし、俺の膝の上に座るのはちょっと……ね?」


 別にそんなのどうでも良くない?このカレー、美味しすぎて手が止まらないんだけど。


「あ、そっか!これじゃあ食べにくいよね」


 すかさずぜうす先生からスプーンと皿を奪い取り、ぴったり横に座り直す。


「はい、あーん!」


「そういうことじゃないんだけどなー」


 そんな光景を笑いながら、ぐちはまもやはりカレーを絶え間なく口に運んでいる。


「依鶴さん、神楽先生連れてきて正解やったやろ?」


「たまには気が利くんだね、ぐちはま」


「ははは、さすがにお金持ちの家に駅で買ったお土産だけってのはどうかなと思ってな。なんでも手に入るやろ?」


 まあそうだけど。逆にぜうす先生連れてくるならお土産なんてよかったのに。

「まあそうだけど。逆にぜうす先生連れてくるならお土産なんてよかったのに」


 やば、声に出てた。ごめんぐちはま。


「それで、さっき2人はどんな話をしてたんですか?」


「ああ、依鶴さんは特殊だから年間投登校計画に沿って登校してもらってたんやけど、それが崩れたからどうするかって話をね」


 ぐちはまが勝手に喋り出したから思わず早口で会話を乗っ取った。


「しいは6月全然学校行けてなかったから、7月と8月に登校日数20日くらいぶっ込んでハードスケジュールこなす気満々だったのに!」


「無理しすぎたんやな」


 もう黙っといてよ!


「7月の中盤から1ヶ月半も寝てたし、その後も入院してたからちょっとやばくて。だから、内部受験と外部受験とどっちも考慮しても、もうちょっと登校しないとねって感じの話だったの」


「なるほどね」


 ああ、やっぱりぜうす先生は聞き上手なんだよなあ。もう、ぐちはまとかどっか行ってくれてもいいのに。よし!うん!追い出そう!


「じゃあぐちはま。私ぜうす先生と大事な話があるから先に帰ってていいよ」


 食べ終わった食器を机に置き、ぜうす先生の裾をぎゅっと掴んだ。


「でも……ほら、神楽(かぐら)先生はわしの車で来たから帰る手段無いで」


「送ってくから大丈夫。最近やっと自動運転に限って中学生以上が1人で乗って良くなったから、ちゃんと私でも送っていけるの」


「そこまで言うなら?神楽先生、すみませんが先に帰りますわ」


 空気が読めるいい子には特別に見送りをしてあげよう。ちょいっとソファに掛けてあったブランケットを羽織ってぐちはまを玄関まで誘導する。


「じゃあ依鶴さん、また学校で」


「次はもうちょっと面白い授業を頼むのだよ?」


「なかなか手厳しい」


 そんな感じでぐちはまは会話を切り上げて帰っていった。応接室に戻るとぜうす先生の姿は無く、代わりに食器の片付けをしている雛子ちゃんがいた。


「もう!しいちゃん、まだお土産のお返しも渡してないのに羽間愚地(はまぐち)先生のこと追い出しちゃったの?頑張ってケーキ焼いてたのに……」


 しまった。たしかに張り切ってまだ何か作ってるなとは思ったけど、お土産のお返しだとは思わなかった。


「片付けの手伝いするよ」


「あら、しいちゃんから言ってくれるなんて珍しい。でも今は先生でしょ?神楽先生。しいちゃんの部屋に行くって言ってたわよ」


「ん。ありがと」


「どういたしまして」


『雛子ちゃんはお見通しだぞー』と言い残して、雛子ちゃんは器用に足でドアを開けて出ていった。




 *




 分からないように部屋に入り、後ろからぜうす先生の目を覆い隠す。


「だーれだっ」


「しいちゃん」


 わかるの早すぎ。もうちょっと焦らしてもいいのに。


「しいちゃんの手、すごい冷たい」


「ん。外思ったより寒かったし」


 手汗気になるしこんなことしなきゃ良かった。

 クローゼットから2人が座れるくらいフワフワで草原のような色のカーペットとマカロンのクッションを取り出して適当に広げる。


「座って?」


「うん。それより話って何?」


「いや、さ。分からない?」


「しいちゃんみたいに心読んだりできないし分からないよ」


「そっか。そうだよね」


 でもさ、やっぱり好きだよとか好きだよとか好きだよとか言うの恥ずかしいじゃん。


「話しにくいなら今じゃなくてもいいんだよ?」


「だめ。今日話さないと」


「じゃあ、どうぞ」


 顔見るの恥ずかしいし。

 やっぱりさりげなく膝の上に座るのが1番だな。


「よっこいしょ。あのね、ぜうす先生。私が18歳になったら結婚しよう?」


 あー。言っちゃった。て、ん?今なんて言ったっけ?いや、好きだよとかいう感じで言ったはず。


「本当に色々、色々置いといても、結婚はちょっと考えるの早すぎない?」


 言う順番間違えた!

 もう顔見れない。振り返れない。しょうがなく……ないよなあ。ほんっと失敗した!もういいや全部言っちゃえ!


「ぜうす先生……いや、神楽剣志(かぐらけんじ)のこと大好きだよ!やっぱりこの気持ちは尊敬じゃないし。気付いたらぜうす先生はどうしてるかなって考えちゃうし、あわよくば手繋いだり抱きついたりしたいなって思うし、もっとはやく生まれてたらなって……うちの家は結構大きいから政略結婚とかそんなのでもいいの。生徒と教師っていうのがだめなら成人するまで……ううん、高校卒業まで待つ!法律が変わって16歳で結婚できなくなっちゃうけど、私18歳になっても絶対ぜうす先生のこと好きだよ?だから」


「ちょっと待って。落ち着いてしいちゃん」


 やっぱり駄目だ。ダメダメだ。何がだめって、恥ずかしいからって顔見て言わないのが駄目だ!顔を見なきゃ、なんにも伝わらない。だから、立って、向き直って、顔を見て。言うんだ。この気持ち!


「落ち着いてるよ。だから。いや、だからじゃないけど、えっと、だから!愛してます!」


「うん」


「好きです!」


「うん」


「私の旦那さんになってください!」


「ありがとう。なんとなく分かってたけど、しいちゃんがそこまで言うとは思ってなかった」


「やっぱり何言おうとしてるか分かってたんじゃん」


「てっきり……他のことを相談されるのかなあと。いつか……あ、やっぱりやめた。とりあえずほら、座って?」


 そのままその場に正座してぜうす先生の顔を見つめる。

 ああ、確かに見下ろしたままだった。落ち着かなくちゃだね。やばい。ぜうす先生いつもよりカッコよく見える。


「まずはしいちゃんの気持ちに答えなきゃだよね。うん。俺は、しいちゃんとは結婚できないよ。ごめん」


 え?なんで?


「俺はさ、生徒と先生って関係を抜きにしても、しいちゃんと結婚してしいちゃんを幸せにする財力も地位も覚悟も持ってないんだよ。確かに、俺たちは生徒と先生の関係を超えてるかもしれない。だから、何か希望を持たせてたならごめん。しいちゃんのことはもちろん……勿論大切な生徒だと思ってるから、何か相談したいことがあればなんでも聞くし、力になれることがあったら力になりたいと思ってるよ」


 違うよ。そういうことじゃないよ。


「ねえ、想いは?」


「え?」


「財力も地位も覚悟も無いのは知ってるよ?でもね、私は気持ちを知りたかったの。私のこと、どう思ってるの?」


「だから、大切な生徒だって」


「違うってば!愛してるか、愛してないか聞いてるの!好き?それとも嫌い?」


「言わなくても、わかるだろ」


「またそれ!こないだ病室でもそれ言った!それにさっき自分で言ったじゃん!心読んだりできないから分からないって!私だって好きな時に好きなだけ人の心読めたら苦労してないよ!」


 私は真っ直ぐ見つめてるのに、ぜうす先生はどんどん俯いていく。


「私のことどう思ってるの?」


「ごめん」


 ごめんじゃ、ないよ。ごめんじゃないよ。なんで、そこでごめんなの。なんでごめんなの?


「もういい。帰って」


 涙は視界を霞ませ、そして足下に広がる草原にこぼれ落ちた。


「またね」


 そう言われたけど、もう返事ができるほど可愛い顔をしていなかった。おかげで、家を出て行くぜうす先生の見送りもできなかった。






 あの後いつのまにかマカロンを抱いて寝ていた。

 涙や汗を洗い流し、珍しく入浴剤が入れられた湯船に浸る。


IZUMO(イズモ)、さっきの会話消しといて」


『了解しました。一部データを消去します』


「ねえIZUMO(イズモ)。私が幸せになるにはどうしたらいいと思う?」


『神楽剣志様と結婚すればいいかと』


「さっきの会話聞いてなかったの?」


『データを消去してしまったので解析できませんでした』


「そんな馬鹿な子に育てた覚えはないよ?」


『申し訳ありません』


 同じ謝罪でも、こんなに違うんだね。

 ぜうす先生。私はずっと好きだよ。出会った時から、ずっとずっと。だから頑張って伝えたのに、あれは無いよ。


「しいちゃん。たまには一緒にお風呂入ろっか」


 ふいにそんな声が聞こえた。


「え、雛子ちゃん?なになにどうしたの?」


 湯気の向こうには肉付きのいい裸体が。


「雛子ちゃんはお見通しだぞー?ふられたんでしょ、神楽先生に」


「うるさい」


 とりあえずぶくぶく泡を立てて自分の表情を誤魔化してみる。


「もう、一回でオーケー貰えるならそれこそロリコンか女たらしよ。そんなのじゃなくて安心したわ」


 もう私ロリって年齢でも無いと思うんだけどなあ。


「とりあえず、学校では普通を装うこと。何もなかったことにしないこと。それから、湯船に浸かったら100数えることを依鶴隊員に命じます!」


「拝命致しましたっ」


 このやり取り、長らくやってなかったな。


「ふふふっ」「あははは」


 浴室に2人の笑い声が飽和する。


 もう一度、ううん。何度でもアタックしよう。攻略難度……は分からないけど、この想いが通じるまで!


「いーちっ、にーいっ、さーんっ、しーいっ、ごーっ、ろーくっ、しーちっ、はーちっ、きゅーうっ、じゅう!かけるじゅう!じゃあお先に!」


 ざばあっ

 湯船から飛び出し、脱衣所の方へ向かう。


「おお。しいちゃん、おっきくなったじゃん」


「もうっ!ふざけたこと言ってないで早く体洗いなよ!」



 こんな日常が、いつまでも続けばいいのに、ね。





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