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爺の屋敷

不定期を極めてます。



「アッシュよ!修練場に行くぞ!」

「まだ太陽出てないよおじいちゃん…」



ステータス開示の儀式を行った翌日、夜と朝の間のまだまだ眠い時間に起こされた俺は、子供用の木剣を持たされて修練場にいた。



「眠い……」

「アッシュはどの武器が適正あるのかワシが見てやるからの。まずはその木剣を振ってみい」


聞いてないし。ぶっちゃけ修練場の寒さでもう眠くはないので、前世の剣道を思い出しながら上段から振り下ろす。


「せいっ」

掛け声なんだったっけ。まあいいや。


5歳児の筋力しかない素振りでもじいちゃんには何かが判るらしい。


「ふむ…じゃあ次はこれじゃ。これを突き出したり振り回したりしてみよ」


次に差し出されたのは1mほどの木の槍だ。

自分とほぼ同じ長さの棒は持つだけでしんどいので、足を縺れさせながらも渾身の力を込めて突き出す。


「やぁっ」


完全に振り回されている俺を見て一つ頷いて納得したじいちゃんは、次に弓を差し出した。弓と言っても子供用に作られた、力が弱くても矢を放てるやつだ。


「あの的を狙ってとりあえず打ってみよ。構えはこうじゃ」


基本的な持ち方と撃ち方を教えてもらい、忘れないうちに10mは離れたところにある的に矢を向ける。


「スゥ…」


呼吸を落ち着かせて矢を引く。子供用だからか思ったより簡単に顔の横まで引けた矢から手を離す。


「当たった!当たったよおじいちゃん!」

「初めてでまさか当てるとは思わなかったぞ!すごいなアッシュ!」



じいちゃんにグリグリと頭を撫でられながら俺は問いかけた。


「ってことは適正があるのは弓矢ってこと?」

「弓矢は才能がある方だと思うが1番適している訳ではないぞ。ワシが見た限りだと遠距離攻撃なら何でもいけるんじゃが、弓かと言われるとそうでもない気がするんじゃ」


まあ剣も真面目に修行すればワシくらいには伸びそうじゃがの…と呟いたじいちゃんを見上げながらふと思う。



これって神様が言ってた銃のエイムが得意ってやつかな?弓よりも銃の方がうまく扱えるんじゃないかな?


「ねぇおじいちゃん」

「なんじゃ?」

「銃っていう武器知ってる?」

「銃とな?あぁ、どこかで聞いたことが……」


右手を顎に当てて記憶を探るじいちゃんは、しばらくして思い出したようで手をポンと叩いて口を開いた。


「そうじゃ、勇者が打ち倒した魔王の幹部の1人が魔法銃というのを使っていたそうじゃ。魔力を込めるとアロー系魔法に似たものが放たれるんじゃが、威力と貫通力は比べ物にならなかったらしいぞ」


銃あったのか。

その魔王の幹部はこの世界でたまたま見つけた魔法銃を使っていたのか、それとも自分で発明したか、スキルで産み出したかで転生者かが変わるな。

じいちゃんは今魔法銃がどこにあるのかや、その幹部はどこで手に入れたとかまでは分からないそうでこれ以上は情報を仕入れることができなかった。

今後見つけられたら儲け物程度に憶えておこう。



「でもなんで銃なんて武器を知っておったのじゃ?」


おっと、迂闊だったか。


「あっそれはいつか本で読んだんだよ。なんか強そうな武器だなーって」

「確かに遠距離攻撃の武器だからアッシュも使いこなせそうじゃの」


うまく誤魔化せた。前世の記憶持ちなんてしょうもないことがバレても仕方ないしな。




「とりあえずワシが教えられるのは剣だけじゃからアッシュにも剣を教えることになるんじゃがの」

「おじいちゃんが教えてくれるの!?」

「これでもワシはこの国の騎士団長をしていたからの。そこそこできるんじゃぞ」


と言いながら服が張り裂けそうなほどパンパンの胸筋に力を込め、腕を曲げて山のような力こぶを作り出す。


すげぇ、ボディビルダーも真っ青の筋肉力だ。

口をぽかんと開けて筋肉を見上げているとじいちゃんが話していたようだ。


「とりあえず剣を持っても振り回されるだけだから当分は体力作りじゃな。よし、アッシュ!おじいちゃんと一緒に走るぞ!」


体力作りは賛成なので一緒に走り出す。とは言え、じいちゃんの半分くらいの身長しかないのでシャカシャカ足を動かしてすぐに疲れてしまうのだが。


「頑張ったのうアッシュ!それじゃあ続きは朝ごはんを食べてからにするかの!」

「朝ごはんを食べたら魔法の勉強ですよ、おじいさん」

「ぅわぁっ!」


隣から急に声が聞こえて飛び上がって驚いてしまった。どうやらばあちゃんが転移してきたようで、朝ごはんが出来たことを伝えにここまできたようだ。こんな驚かせる方法じゃなくてもいいじゃないか、とばあちゃんにジト目をしていると全然気にした様子もなくこちらに振り向いた。



「おじいさんはわたしが来ることを察知していましたよ。ねぇおじいさん」


じいちゃんはうむ、と頷く。


「魔力の歪みで空気が揺れたからな。判るのも当然じゃ」

「空気の揺らぎなんて判るわけないよ!」

「アッシュもそのうち判るようになるぞ。なんてったってワシが修練の相手をするのじゃからな」


人間技じゃないことを教えてもらえることに末恐ろしさを感じつつもありがたく思う。察知する能力が高くなればその分死ににくくなるからな。


たった5年10年で神様の元へ逆戻りは恥ずかしい。少なくとも100年くらいは顔を見せない目標で頑張ろうか、目標は高くだ。



ばあちゃんの転移で食卓に向かい、食事をする。じいちゃん家に滞在するのは今日と明日だけだそうで、2日間で出来る限りの基礎を俺に詰め込むのだそう。



「母さま達は何するの?」

「私は学院時代に仲が良かった友達の所へ顔を出しに行くけど…アッシュちゃんも一緒に行く?」


ここで行くと言ったら連れて行ってくれるのだろうかと思いつつもママンに首を振る。


「この後はおばあちゃんに魔法を教わるから行けないよ」

「そっかあー残念ね」

「父さまは?」

「俺はおじいちゃんと王城にちょっと用事があってな。ご飯を食べたらすぐに行かなくちゃならないんだ」


王城とな?あーそうか、《光魔法》の件か。ご迷惑おかけします。


「王城に行くの!頑張ってね!」

「おう!ありがとなアッシュ」




朝ごはんを食べ終わり、パパンとママンがそれぞれ出かけた後に、お待ちかね魔法の練習となる。

これまでは独学で魔法を使ってきたが、ここでしっかりと学べばさらに力を高められるはずだ。


あ、でも最初から魔力の操作が出来るってのはおかしいかもしれないから、セーブしつつ成長速度が早いキャラでいこう。適当なタイミングで実力に合わせていけば十分だろう。



食後の運動と称して修練場までばあちゃんと歩く。転移が使えると運動しなくなるのが難点とはばあちゃんの弁。





「…このように基本属性は4つありますが、派生や進化によって魔法の属性は多岐にわたって存在しています。現在確認されているだけでも80種類の属性がありますね」


修練場の端にある、文字のかける黒板のようなボードの前に座り込んで、ばあちゃんの説明を聞いている。


国の全人口のうち、魔法系スキルを持つのはおよそ5割で、基本属性である、火、水、風、土の属性を持つのがそのうちの9割だそう。


簡単に言うと、100人の国民のうち、50人は魔法使いとなり、その50人のうち45人が基本の4属性持ちとなるのだ。


残った5人である1割の人は、基本属性を極めて派生属性に変化させたり、進化させたりする場合と、もともと特殊な属性を持っているのだ。


ばあちゃんももともと転移魔法を使えるレアなケースで、すぐに王城に仕えるようになったそう。



「おばあちゃん、基本属性以外の魔法ってどんなのがあるの?」

「例えばアッシュちゃんの光だったり、魔王が使ったとされる闇や、面白いものだと強力な魔道具を創り出せるようになる創造魔法ね」


派生属性だと火属性が火炎魔法になり、水属性が氷魔法に、風が暴風に、土は大地になどだ。それぞれの派生ももっとあるらしいが有名どころだとこの辺らしい。


古代に人間を大量虐殺した過去最悪の魔王は、闇魔法を進化させた深淵魔法を使って暴虐の限りを尽くしたそうだ。

どういうわけか深淵魔法に呑まれて我を失ったその魔王はついに魔族をも殺し始め、大陸を誰も住めない過酷な地に変えていってしまっていることで、歴史上初めて人間と魔族が手を組んで魔王を倒したという史実があるらしい。



魔法の種類を教わったので次は魔法の使い方を教わる。

ばあちゃんと手を繋いで魔力を感じる練習や、魔力操作の練習をしたのだが、この時のセーブが難しかった。


「初めてでここまで出来るなんてまさしく神童ね」


と言われてしまったが何とかセーフだろう。


魔力も尽きないので練習がいっぱいできる。そのせいかばあちゃんの想定を大きく超えて今は教えてくれているらしい。




「ただいまアッシュよ」

「おかえりおじいちゃん」


パパンと一緒に王城へ行っていたじいちゃんが帰ってきた。聞くと、パパンはまだ用事が残っているようで帰ってくるのは晩ご飯に間に合うかどうからしい。


ばあちゃんから俺の魔法に関しての進捗を聞いたじいちゃんは大いに驚き、褒めてくれた。


「これだけ魔力を扱えるなら身体強化を教えてもよかろう?」

「そうですね、おじいさんだけだと不安なのでわたしも協力しますがね」

「ばあさんは厳しいのう」

「身体強化ってなに?」


じいちゃんばあちゃんの話の終わるいいところで口を挟む。新しい技を教えてくれるようだ。

身体強化と聞けばなんとなく魔力を全身に巡らせて素手で岩を砕けるほどのブーストをかけるイメージなのだが、果たして。


「身体強化は魔力を全身に流して各部位を強化する、一種の魔法じゃな。魔力があれば理論的には誰でも使えるんじゃ。とりあえず、まずはアッシュ、両足に強化したいと念じながら魔力を込めてみよ」


考えていたものとほぼ同じなのであっさりと成功させる。魔力操作は得意なんだ。


両足が軽くなり、もし前にジャンプしたら5mくらいは飛べそうだ。


「おぉ、まさかこんなすぐに成功させるとはの」

「この子は魔力操作がすでに一流なのよ。素晴らしいわ」

「じゃあアッシュ、1歩踏み出してみるとよい」


どういうこと?と思いながら右足を踏み出す。


「いてっ」


想像以上に速く動いた足に上半身が追いつかなくて尻餅をついてしまった。

それだけではなく、ちゃんと同比率の量の魔力を込めたはずなのに、腿とふくらはぎの動きがバラついて壊れたロボットのように変な動きになってしまっていた。


「これが実は万人受けしない身体強化の難しいところなんじゃ。ただ魔力を込めればいいのではなく、どこにどれくらいの量をどれくらいの出力で、というのが分かるまでなんども練習しないと自分のものにできないんじゃ」


「身体強化の魔道具は確立されて販売はされてはいるのよ、でも…」

「でも自力でやる時と比べて強化割合がだいぶ弱くなっているんじゃ」


指輪型や腕輪型で、身体強化の魔道具が売られているらしいのだが、じいちゃん曰く、自力でやる方を10の強化割合とすると、7割くらいまで落ちてしまうそうだ。

最近は手軽だからと言って魔道具頼りの人が多いらしい。


自分でできるならそれに越したことはないってことか。これは慣れるまで練習だな。



なんども転びながら1時間ほど練習しているとコツが掴めてきて、あっという間に身体強化が出来るようになってしまった。今では助走をつければ10mは跳べるほどに成長した。

これで体も大人になればどこまで出来るんだろうか。





魔法や剣を教えてもらっていると晩ご飯の時間になったようで、汗を流してから食堂へ向かう。そばにいたメイドさんに聞くと、もうパパンもママンも帰ってきているらしい。



ご飯を食べて明日も頑張ろう。




テストが始まるのでまたしばらくは更新しないと思います。

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