Side:真夜中の職員会議…?
ご存知の通り私の名は四葉。
通称Draw教室に引率として来ている未来学園の先生。
毎年上手くいっている通称Draw教室の3日目でアクシデントが起きてしまったのよ!
そう、村長が私たちの秘密を喋ったらしいの!
なんてことをしてしまったのかしら…村長ったら!
この事件をどうやって収めるかを今から、三葉、金井先生、校長と一緒に会議で決めるのよ!
私は早めに部屋に着いたため、準備をした。
畳や襖といった和風でおしゃれな部屋をスクリーンやプロジェクターなどを設置して、台無しにしてしまった。
そうして、真夜中の職員会議が始まった。
「まず、村長が何を言ったかについて振り返ろうと思います!」
私はリモコンを操作して、プロジェクターでスクリーンに今日の出来事を映し出した。
「四葉先生、これはどうやって撮ったんですか?」
校長は私にそう首を傾げた。
「これは私と三葉の姉が作った技術で撮ったんですよ!!」
私は少し早口で答えた。
危ない……私たちの姉、二葉が作った記憶を読み取る装置で生徒たちから記憶を探ったとは言えない。
この秘密を知っているのは、私と三葉、そして金井先生だけだ。
三葉をよく見ると、珍しく冷や汗をたらーっと流している。
三葉、失言しないでよ。
私は心の中でそう呟いた。
「えーっと、これを見ると、村長が沢山の情報を漏らしたことが分かったね。俺はこれを可視化するよ!」
金井先生は立ち上がると次々と村長が言ってしまったことをミニ黒板に書いていった。
一つ目の村長の失言は、キャッピーをAIだと言ったこと。
二つ目は、AIが洗脳をすること。
三つ目は、解放軍について詳しく言ってしまったこと。
これをばらばらに村長が言ったことがせめてもの救いだと思ったが、スクリーンに流れてきた映像を見て、私たちは驚愕した。
小橋川が全てをまとめて、わかりやすくみんなに解放軍の話をしてしまったのだ。
「やばい……」
私はつい、呟いてしまった。
「何か、問題でも?解放軍はランク分け制度撤廃のために動いているのだから、村長の言ったことを嘘だと言えばいいでしょう?」
校長……
あなたは何も知らないから、そんな口を聞いていられるのかしら。
「もしかして、私を騙して、地下施設を利用しているのか?」
ギクッ!!
バレてしまったら、しょうがない。
私は校長に全てを明かそうと立ち上がった。
「その通りですよ!校長!私たち解放軍はあなたを騙して、地下施設を利用していた!」
この言葉を聞いて、校長は目を丸くした。
だが、真実を知ったものは許さないわ!
仲間にするっきゃない!
「今から、あなたも解放軍の一員になれ!」
三葉も同じことを思っているのね!
そう、無理やりでも、仲間にするしかないわ!
あれを使いましょう……!
「いい!?三葉!あの準備を!」
私の叫び声に対して、三葉は頷いて、あの準備をし始めた。
「もしかして、あれをやるつもりか!?」
金井先生は私にそう尋ねてきた。
私は頷き、校長の近くへ足を運んだ。
……そう、私は今から校長を洗脳するのだわ!!
「はい!ケーブルだぞ!!」
三葉が私にケーブルを渡した。
それに対して私は頷き、校長に向かって投げた。
そのケーブルは村長に巻き付いた。
ケーブルは意思を持っているかのように動いて、ケーブルの先を校長の頭に当てた。
そして、完全に準備が整った!!
「校長の意識に知能を授けよ!『強制洗脳』!」
私は叫び、手のひらを校長に向けた!
「ちょっと、何を言っているんだ!アナタタチハ……イシキガ……」
校長は藻掻いているが、そんなものは効かない。
だって、二葉の発明品だ。
洗脳から抜け出した奴は一人もいな――。
二人だけいた。
だが、抜け出して生きているやつは一人もいない。
「ワタシハ、カイホウグンノミカタヲシマス!」
ふっ、洗脳完了。
このケーブルさえあれば、怖いものなんかないわ!
早く、ケーブルがなくてもあの方のように洗脳できるようになりたいわ!
私がそんなことを思っていると、三葉が声をあげた。
「それじゃあ、村長のことも洗脳するか!!」
「それなら、俺がやるよ!」
金井先生は立ち上がり、床に落ちていたケーブルを拾った。
そして、部屋を出ようとする。
金井先生は失敗することがあるから、嫌なのよね。
だから、成功したかどうか知りたいよね。
私はそれを言い出せずにモヤモヤしていると、三葉が私の気持ちを察してくれた。
「金井先生、洗脳したら、ここまで連れてきてくれ!!」
三葉は金井先生の肩を強く叩いた。
金井先生は驚いた顔をしていた。
そりゃそうだよね。急に叩かれたら、怖いよね。
三葉は力が強すぎるからね。
私が心の中でそう呟くと、三葉が私のことをギロッと睨んできた。
三葉、そんなに私の心を読み取らないでよ。
私には思想・良心の自由があるんだから!!
だって、ランクは1だし!!
ちゃんと人権は保障されてるんだから!
そう思って、再び三葉のことを見ると……
あきれた顔をしている……
何よ!私のことを人間じゃないとでも言いたいのかしら。
待つこと10分、金井先生が洗脳された村長を連れてきた。
「連れてきたぞ!俺も一発で洗脳できたぞ!!」
金井先生は舞い上がっいる。
しかも、物理的に……
「やったぞ!俺だって成功するんだ!失敗ばかりじゃないぞ!」
上手くいったら、踊り始める金井先生を村長は凍った視線を向けている。
金井先生がだんだんと小学生に見えてくる。
「……アノ人、大丈夫デスカ?」
村長が不安そうに訪ねた。
その言葉をきいて、私はあれ?と思う。
洗脳されて間もない人は、感情を全て失い、話し方の抑揚がないはずだけど……
感情まだのこってるよね……?
「おい、また失敗してるぞ!」
三葉は立ち上がり、金井先生を退かせた。
「私が洗脳させる!」
三葉は金井先生が持っているケーブルを奪い、村長の前に立ちはだかり、叫んだ!
「村長の意識を奪え!『極悪洗脳』!」
すると、村長は膝から崩れ落ち、唸り始めた。
「ヴァグ、ヴァ……」
あー。三葉ったら、また使ったわね、『極悪洗脳』を……
あれは使用された側は痛みを伴うのよね。
そして、知能が下がり、暴れ始める。
しかも、紫のオーラを纏って、力も強くなっちゃうから、手に負えなくなるのよね……
三葉はどうして『極悪洗脳』ばかり使うのかしら。
「はいはい、動くな。」
三葉は手刀で村長のことを気絶させた。
「「………………は!?………」」
私と金井先生は目を大きく見開いた。
凶暴化した人を気絶させることは難しいのに……
そして、人は手刀で誰かを気絶させることはできないはずなのに……
私は全く声が出なかった。
「みんな、どうした!?早く、次の話題に取りかからないといけないぞ!」
私と金井先生は三葉の声を聞いて、ハッと現実に戻された。
終わったつもりでいたけど、まだまだ、解決していなかったわ。
「子どもたちの記憶を消せば、解決ね!」
私は記憶を消す装置を取り出した!
これは、ひとりひとり洗脳しなくていいから、楽なのよね。
だって、壁を透過するビームを発生させるんだから!
当たった人を選択して、記憶を消せばいいのよね。
「それを使うのなら、外にでたほうがいいんじゃないか?」
私たちは三葉の助言により、NEON館を出た。
「もう準備は終わったか?」
三葉の言葉を聞いて、私は頷き、ビームを発射した。
青白く光るビームがNEON館を包んだ。
その光景は何度見ても圧巻だ。
「俺が人物を設定するぞ。」
ふふふ、先程失態を犯した金井先生の挽回のチャンスね!
金井先生は一生懸命、記憶を消す装置に付属しているタッチパネルを操作している。
それじゃあ、この間に私は村長と校長の始末をどうするか三葉とでも話そうかしら。
私は三葉に歩み寄った。
「ねぇ、三葉?あいつらどうする?」
この私の言葉を聞いて、三葉をしばらく黙ったあと、口を開いた。
「そいつらは放っておこう。洗脳されているんだから、自我もないはずだし。洗脳が解かれる心配もないしな!」
三葉の言う通りだ。仮に殺した場合、私たちは罪に問われる可能性がある。
また、あの組織にまた目をつけられてしまうかもしれない。
そうなったら、自由に解放軍として活動できなくなるかもしれない。
「よし、二人とも!誰の、どの記憶を消すかも選択したから、決定ボタンを押すぞ!そしたら、記憶を吸い込むんだよな?」
急に金井先生が大きな声をあげたので、驚いて装置の方を見た。
「おい!待て!確認ぐらいさせr――。」
三葉は金井先生を止めようとした!
……が、金井先生は聞く耳を持たず、決定ボタンを押してしまった。
その瞬間、虹色に輝く大きい光の塊が装置の前に集まった。
これが子どもたちの記憶ね!
このように光が集まったなら、成功したようね!
私は安堵し、ため息をついた。
いろいろミスばかりしている金井先生にしてはやるじゃないの!!
記憶を消す装置は記憶改竄もできるから、一歩間違えていれば、取り返しのつかないミスをすることになるのだ!
……記憶を消す装置を使えば、解決するけど。
「これで一件落着だな!四葉、金井先生!NEON館にそろそろ戻るか!!」
三葉の言葉に私と金井先生は頷いた。
先程私たちがいた部屋に戻る道中、疑問に思ったことを私は口に出した。
「今年の新規解放軍メンバーって誰だったかしら。」
その言葉に対して、アンケートを作った張本人である金井先生が答えてくれた。
「確か、今回は四葉先生のクラスの人だけだったはず……6人だったかな?」
あら、意外と記憶力があるのね。
それじゃあ名前も覚えているのかしら、と私は思い、金井先生に尋ねてみた。
金井先生はしばらく考え込んだあと、口を開いた。
「木下歩、川上咲、安藤麗華、細川紫央、柏真希、五十川陽翔……だったはずです!」
私はその言葉を聞いて、目を見開いた。
なぜなら、安藤麗華と細川紫央がいたからだ。
三葉も同じことを思ったらしい。
そのため、三葉は驚いた声で話しだした。
「確か、安藤麗華は総理の孫娘。細川紫央は都知事の息子だよな?なんで、そんな輩が入団するんだ!?流石に総理や都知事の意図があったり……」
「そんな訳はないはずよ!もし、裏の目的があって潜入するんだったら、入団するときに当てられるレーダーで読み取れるはずよ!」
私は慌てて、嫌な可能性を否定した。
言霊というものがあるから……
そして、私は金井先生が挙げた名前を思い返してみた。
……あれ?川上咲っていう名前聞いたことがあるわね……
いつだったかしら。
思い出そうとしたけれど、思い出せなかったため、三葉に聞いてみることにした。
「ねぇ、三葉?川上咲っていう名前聞いたことあるわよね?」
「あぁ……あるぞ…」
三葉は喋っている最中で言葉を詰まらせた。
しばらく黙り込んだあと、三葉は再び口を開いた。
「はっきりと覚えているけど、四葉と咲のためにも言うべきではないだろうな。」
そんなに私に言ってはいけないことなのかしら。
「もう全て解決したから、職員会議を終わりにするか!」
三葉は川上咲についての話をすることをやめるためにもうこの会をお開きにするようだ。
校長は三葉と、村長は金井先生と一緒に部屋を退出した。
そして、私だけが取り残された。
私だけモヤモヤした気持ちで会が終わってしまった。
川上咲……結構昔に聞いたことあるはずなのに……
まあ、考えるだけ無駄か!
悲しいことに私の目にはぐちゃぐちゃにされた座布団、使いっぱなしのプロジェクターとスクリーン、そして、金井先生の乱雑な文字が書かれたミニ黒板だけが映った。
私は一人寂しく、部屋を片付け始めたのであった。




