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叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼(旧版  作者: tempp
第7章 位波家心中事件

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このお話の結末

 私は柚。位波柚で、九里手柚で、呪いの柚で、家の柚で。

 それから私は位波楓で、位波有一で、滝本真一で、滝本夏観で、滝本あつりで、請園共生で、松崎咲二で、穴吹寛樹で、高杉八千で、青梨恵美で、坂西みちで、有地孝美で、秋保英次で、真貝善明で、土井原美徳で、新納璃菜で、正宗みゆ紀で、四ヶ所広紀で、江刺家峰夫で、植島卓史で、二谷光利で、田中完で、佐藤みゆきで、花畑昌一で、伊月真徳で、伊林佳予子で、椚レイ子で、古東眞規子で、徐ひと美で、佐保田宏太郎で、村椿忠博で、矢橋美幸で、大阪収で、五味大志で、益川希美で、城崎治香で、榎村佳織で、逢阪舞里子で、白水智士で、上谷陽治で、本蔵七郎で、竹瀬淑美で、厚芝ミラで、虎渡育巳で、小野澤瑠璃で、秋田勇一で、吉津ヒロシで、フラウで、タロで、ミッチーで、モーで、ポッピーで、伝次郎で、ヒューイで、サンで、ポッポで、ピーロで、喜友名晋司で、芝山彰夫で、石割京平で、岡地良知で、宮松しづかで、吉増和希子で、家根郁里で、天内伶奈で、船崎祐斗で、寒川悟で、荘田夏芽で、市居孝廣で、福来香子で、浅妻礼恵で、越谷泰斗で、小藤亜李沙で、立部になで、出田ひなみで、神宮寺咲月で、湯座康朗で、左居有記で、中是秋名で、富森和可奈で、柊木梨世で、神門美莉で、西寺樹音で、綛谷夢月で、飛口賢彦で、若津一太で、不二井未宇で、東谷花乃で、古芝なゆたで、甲田弘江で、橋屋澄子で、橋屋永広で、橋屋基弘で、橋屋文則で、甲田次郎で、サイケさんで、田尾さんで、なりやんで、ちゅーやんで、ピッピーで、バーリィちゃんで、くすやんで、ネオちゃんで、のりひとさんで、ゲイジー君で、パルソーさんで、すくねっちで、伽耶ちゃんで、すがやんで、パラソルさんで、もちりんで、なりちゃんで、キョン太で、リクくんで、ぽぷおさんで、ベッツで、くゆりんで、歌菜ちゃんで。


 みんなの魂は家を出て、私の呪いの中に残っていた魂も全部家から外に出した。だからここに残っているのはみんなが残したエネルギーと意思のない記録。


 私はみんなと一緒にこの家の中にいる。

 この真っ暗な家の中でみんなのエネルギーは少しずつ減っていって、新しい友達を増やさないとそのうち全部なくなってしまうんだ。なくなるというのは少し適切じゃないな。みんなすごく薄くなって、フリーズドライみたいに私のすぐ近くにくっつく。私がこの呪いの本体だから。

 だから私がこの家にいる限り私はみんなと一緒で、私のエネルギーをみんなに分け与える限りみんながいなくなったりはしない。でも私がこの家を出てしまうと、空っぽになったみんなは存在が保てなくて砕けて消滅してしまうだろう。それがわかってしまう。


 私はもう新しい友達を増やすつもりはないんだ。それはなんというか、それは過剰で問題を先延ばしにするだけだと気が付いてしまったから。これ以上増やすと藤友さんが言ってたように警察が来ちゃうかもっていうのもなくはないんだけど、それは実はあまり関係ない。

 呪いと混ざった時、私はとても満たされた。空白なんて全く感じられなくて、溢れ出すほどの満足感。私はたくさんのみんなが一緒にいてくれていること、呪いの扉を開ければ私が十分に満たされることをちゃんと知っている。

 つまり、これ以上は増やす意味は、ただ時間を伸ばすというだけの意味しかない。


 今、私はたくさんのみんなと一緒にいる。家が隔ててくれているから混ざりはしないけど、それを幸せに感じている。私は私が殺した人たちを思い浮かべる。呪いと交じる前は思わなかったけど、でもあの人達にも幸せややりたいことが確かにあった。ごめんなさい。


 私はどうしたらいいんだろう、どうしたいんだろう。

 私の中には2つの選択肢がある。

 1つ目は今家が隔ててくれている呪いとの扉をもう一度開いてみんなと混ざりあって闇に溶けて、すべてのエネルギーが尽きるまでみんなと一緒にいて、この『幸せなマイホーム』でみんなと一緒に死んでしまうこと。私はすっかり満たされて、満たされたまま眠りにつく。みんなと一緒に。

 もう1つは私が外に出ていくこと。私1人で。みんなはこの家の呪いの中にいるから連れていけないんだ。新しい人を連れて来ない限りみんなは少しずつ減っていって、枯渇すると私が家を出たタイミングで砕け散る。だから最終的には私は家もみんなも置いて九里手柚として穴が空いたまま1人でこの家を出る。私は私の『マイホーム』を作りに旅に出る。ここじゃないどこかに。

 私の穴を埋めてくれる人はこの世のどこかにいるかもしれないし、いないかもしれないし。でもとりあえず今まではいなかった。


 でも、どちらを選ぶにしても私は最後にこの家を無くすことを決めた。呪いの私はこの家とくっついてしまってもう外には出られない。そのままにしておくと呪いの私は次に住む人の『幸せなマイホーム』を作るためにきっと呪いの力を行使するだろう。今は私と呪いの私は家が区切ってくれているけれど、私のために友達を殺して食べてくれていたように新しく住む人達の願いを叶えるだろう。

 『幸せなマイホーム』はもともと私が望んだことだけど、これから住む人が望むとは限らない。望むとは思えない。それは私にだってわかる。


 呪いの私に悪気はないけど、バイアスの中の人たちにも私が食べた私の友達にもそれぞれの人生があった。呪いの私にはそのあたりはわからない。だから私はこの家自体を終わりにすることにする。家の意思も同じだった。私が始めたことだから私が終わらせる。問題は私も残って一緒になくなるか、私が1人で出ていくか。


 さぁどうしようかな。

 何度か藤友さんか公理さんに意見を聞こうかと思って携帯を手にとった。でもあの2人は答えをくれたりはしない。これは私が決めるべきことだから。でも判断に必要なものはすべて置いていってくれた。だから後は私が決めるだけ。

 私はどうしたいのか。私が欲しいものはなんなのか。

 私が決めないといけない。私がどう生きるか。私がどう死ぬか。死んでしまったたくさんの人たち。本当はみんな優しくていい人たちだった。ごめんなさい。私のせいだ。後悔、後悔とは違う。それは失礼だ。償い、それもできない。もういなくなってしまったから。私が食べてしまって、私になってしまったから。全てが既に私になった。


 私は死んだ方がいいのかな。私が死んだらみんなは喜ぶ?

 公理さんだったらどうするかな。公理さんだったらきっとみんなと眠ることを選ぶだろう。そんな気がする。

 藤友さんだったらどうするかな。そんなのは一択だよ。あっという間にこの家から出て行っちゃうでしょ。殺しちゃった人なんて気にするはずがない。そう、私が殺した。みんなを。


 じゃあ位波楓、お母さんだったら。瀧本夏観だったら。請園恭生だったら。喜友名晋司だったら。越谷泰斗だったら。貝田弘江だったら。みんなだったらどうするかな。


 他の人じゃなくて自分で決めるよう藤友さんは言っていた。

 私がどうするのかは私がきめないとダメなんだろう。でも、みんなだったらどうしたか、とりあえずそれを考えよう。私の中にあるみんなの記録を読んで、たくさん考えよう。みんなだったらどうするかを考えてきめようか。

 私になったみんなの思いを知りたい。それが私で、九里手柚で、位波柚で、呪いの柚で、家の柚で、私であるみんななんだから。

 私はこの家で。この家のすべてで。みんなで。柚だから。

 幸せを求めて叫んだこの家と憂鬱なまま人を殺してしまった私の記録を開いて。

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