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叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼(旧版  作者: tempp
第5章 カルト教団集団自殺事件

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伽耶ちゃんのつぶやき

 チュンチュンという音を聞いて窓を見ると、数話の雀がベランダに止まっていた。かわいいな。

 この家に引っ越してきてから4ヶ月くらいたったかな。前に暮らしていたアパートも悪くはなかったけど、広い家と庭って開放感を感じる。たまにみんなでバーベキューしたりして、でもご近所迷惑だからうるさくし過ぎちゃ駄目だよって先生が言って。でも近所の人も楽しそうですねってお肉とかお野菜とかもってきて一緒に混じったりして。なんだか毎日がとても楽しい。

 そうやってふと空を見上げると真っ青で、屋根裏から放った鳩がぐるぐると空を舞っている。ああ、それが奇麗。世界はとっても奇麗で。

 なんだか神様が近くなった気分。さすが『幸せなマイホーム』。


 請園先生は最近哲学の本にはまっているらしい。

 その本の内容をたまに伺う。自分の中に神様の一部があるという考え方はなんだか素敵。最近の私のお気に入りの本は神様のことを書いた小説。パウロ・コエーリョとか遠藤周作とか。みんな神様の捉え方が違っていて面白い。

 この世界を作られた神様が様々な形で魂を人に分け与えられた。神様の一部と一緒に人として生きる。それならその人によって神様の形が少し違うというのはというのはなんだか納得できる話。分け与えられた魂でそれぞれに世界を見てるんだものね。


 神目教会はとても不思議なところだ。ここに入る前、私は何だか色々なことがうまくいかなくなっていて、とても苦しくて、何か頼れるものが欲しくて新興宗教に色々入ってみたけど、結局お金も無くなって悪循環が増すばかりで。

 そんなどん底の時に知り合いから紹介されて神目教会に入信した。初めて入った時はちょっと意味が分からなくて混乱したけど、何をしてもいいんだよって言われて、それでもいいんだってホッとした。

 それで好きなものに祈りなさいって言われて、よくわからなかったからとりあえず直前に入ってた宗教で買った経典を読んだ。他の宗教の経典でもいいのかなって思ったけど、別に何も言われなかった。

 それで神の目に祈る。神が見ているからいい行いをしましょう。


 でもこれって入信したっていうのかな。信じる神様というのはそれぞれが信じているものでいい。それから神様に祈らなくてもいい。前の経典はよくわからないなと思って先生と話してたら、これ面白かったよって言って渡されたのが去年はやったドラマのノベライズ。恋愛モノだったと思うけど。

 ええっこれでいいの!? って驚いてたら、神様に繋がってるって思えればいいんだよ、心が平和になるからって言われた。

 平和。なんだか不思議な気持ちだ。私はこのままでよくて、なんだかよくわからないけど神様が見守ってくれるんだと思えばなんだか自信が湧いてきた。ここにいるといろんな人と自然な感じで繋がることができた。悪いことばかりだと思っていた人生が、そんなに悪くないのかもと思えた。


 またチュンチュンと鳴く声がした。ベランダの雀にも餌をあげちゃだめかな? かわいい。鳥は世界を巡っている。ひょっとしたら神様の目なのかもしれないな。そろそろ鳩の世話をしに行こう。今日の鳩の当番は私。掃除は大変だけど、鳥は可愛い。

 この家に引っ越してから、屋根裏に窓を作って伝書鳩を飼うようになった。10羽ほどだけど、朝に放つと昼過ぎとか夕方には帰ってくる。そういえば鳩は松果体というのが発達していてそれで地磁気とかを感知できて、それと網膜の作用で家に帰ってくるらしい。地磁気ってなんだろ。でも帰巣本能っていうのかな。不思議だね。私はすぐに道に迷っちゃうよ。

 そういえば松果体っていうのは私の頭の中にもあって、目の形をしているそうだ。やっぱり鳥は神様の目なのかな。


◇◇◇


 結局さっきの夢で請園伽耶の手がかりは得られなかった。

 んん。請園伽耶か。内倉さんは働いていない50代女子と言っていたな。暇そうだよな。SNSとかやってないかな……。あったこれか。


 Personal Book 通称PB。実名系SNS。

 最終更新は柚に招かれた日だろう。友達の家に呼ばれたっていう書き込みが最終だ。過去ログを漁る。だいたいは日々の不満と彼氏自慢が多いな。顔は隠されてるけどこれは多分内倉さんだろう。

 過去のログを見ていく。わけのわからない字で本当にどうでもいい悪態を延々とつく人だな。これは付き合うのが大変そうだ。改めて内倉さんに尊敬の念を抱いた。


 あった。10年遡った。


請園 伽耶 5月28日

みωナょτ゛病院τ゛検査とヵヽまぢT=゛るレヽ


請園 伽耶 5月28日

ぉ金もらぇるヵヽらレヽレヽωT=゛けど

ゃっぱみωナょ気持ち悪レヽ

ナょωτ゛ばらばら(=祈っτるσ?

意味ゎヵヽωナょレヽ


請園 伽耶 5月28日

今曰もゎけゎヵヽωナょィバィ├σ曰

テテヵヽナょレヽとT=゛めヵヽナょぁ

そぅレヽぇば新∪レヽ家っτレヽっτた∪


請園 伽耶 5月27日

ご飯ぉレヽ∪レヽ

ナょωτ゛検査前っτ食∧”ちゃ夕”乂ナょσヵヽナょ

ぉナょヵヽす<σ(=


 集団自殺の約6か月ほど前だ。登記と照らし合わせると請園恭生があの家を購入して半月ほど経った後。あの家に引っ越した直後くらいだろう。

 詳細はわからないが病院で検査をしてあの家に行くと集団で変な呪文を唱えている。請園伽耶はそれをただ見ている。

 更に過去を遡る。


  請園 伽耶 11月2日

  ナょωナょωT=゛З⊇σ囚たち

  ‡リス├と仏様と曰夲昔話τ゛祈っτる

  ゎけゎヵヽωナょレヽナょ


  請園 伽耶 11月2日

  年(=2回たT=゛τ゛イ廴聿康診断するナょらレヽレヽσヵヽナょ

  禾ムナょωτ゛⊇⊇(=レヽるωT=゛З

  まぁ呼ばれたヵヽらT=゛けど

  意味ぁるσヵヽナょ


 その後も似たような記述が続いた。恐ろしく読みづらかった。

 まとめると、請園伽耶は半年に1度、何かの儀式の際に教会に招かれる。儀式の前後に病院で検査を受ける。これは通常の健康診断に加えてCTやMRI等の詳細な検査、精神障害の有無まで検査されているようだ。通常の人間ドッグを超える気はする。当時はMRIなんか現在より格段に費用も高かっただろう。その検査を儀式の前日と儀式の後に計2回行う。

 儀式の内容はそれぞれの参加者が読みたい本を読んで祈る。聖書、仏経典、何かのルポ、一般小説や童話、哲学書等多岐にわたる。何かを読んでいればいいのだろうか。本を変えてもよいようだ。何が何だかよくわからないが本を読みながら神の目に祈る。それだけだ。


 請園伽耶はその儀式に加わるでもなく、ただそれを横で見ている。これは意味がわからないし気持ち悪くもあるだろうな。それで1回あたり200~300万の金を受け取って帰るようだ。請園伽耶自身は釈然としないがバイトとして割り切っている。


 俺はそもそもの大きな勘違いに気づいた。

 この枠組みには心当たりがあった。思わず口元に手を当てる。


 これは宗教じゃない。実験だ。

 目的が何かはわからないが内部の教会員に対して継続的に何らかの実験が行われ、その推移を観測する。だから半年に1度という定期的なスパンで健康診断という名の身体及び精神への影響の調査を行っている。

 請園伽耶は対照実験だ。教会員に対する実験の効果として何らかの結果が発生しているかどうか、つまり有意差の有無をはかるために、実験に無関係の請園伽耶を参加させて比較している。


 請園共生はこの実験を十年単位で行っている。その都度詳細な検査がおこなわれているとしたら、かなりの資本が投下されているだろう。請園恭正が個人で行っているならともかく、何らかの外部組織が絡んでいるなら思っているより大規模な話なのかもしれない。その場合、呪いの基礎は請園恭正ではなく別である可能性もある。カルト教団、か。神目教会の外になんらかのカルト的組織が存在する可能性。

 何を調べているのかな。よくわからないな。読んでいる本の内容で差が出て来たりするのだろうか。


 ともあれ請園恭正は何らかの目的をもって何らかの実験または研究に携わっていた。雑誌では長年穏やかな教団とみなされていたようだ。あの家に引っ越す前から続いているのだから、主催者にはそれでも有意義な何かがあるのだろう。長年継続されていたことからも、実験の内容自体は集団自殺や家の呪いとは基本的には無関係と思われる。

 あの家ではおそらく事情が変わった。あの家の呪いの効果で何か劇的な変化が生じて死に至ることになったのか、家の呪いによって直接死が訪れたのか。その原因と呪いの関係がわからなければバイアスを消滅させるための手がかりがえられない。

 だが現時点ではこれ以上はわからない。保留。

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