表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼(旧版  作者: tempp
第5章 カルト教団集団自殺事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/83

食べられちゃった

 5日を超えると消化されてしまって、俺はずっとこのままらしい。ううん、困ったな。ハルが凄くイライラしている気がする。表情は大して変わらないけど目線がフラフラしてる。えーと。


「5日かぁ」

「あんたなんでそんな冷静なんだ」

「うーん、なんでだろ。どうしようもないし。あんまり考えたくないのかも。そうなったら養ってくれる?」

「……可能な範囲なら」

「嘘嘘冗談だよ。右だけあれば多分美容師はなんとか」

「ならないよ、片手じゃ無理だろ。髪押さえられない」

「はは、そうだよね……」


 俺は腕1本で食ってる。本当は2本だけど。俺にとって体はとても大事。お洒落職だけど肉体労働。


 でも夜を進めないとハルは死ぬと思ったんだ。ハルとマジで友達になりたいなと思ったら、色々見えてきた。ハルは多分色々勝手に考えて、危険度の低いところから高いところまで順番にわけのわからない方法を試す。それはもう淡々と。

 ヤバいと思う方法ほど俺には何も言わない。俺なんかいてもいなくても変わらないみたいに。言わないのは止められたくないからと、こっちを気遣ってるからと。でもそれはなんか……違う。そういうのって友達じゃないよね。そう思ったんだよ。


 それに……喜友名晋司を満足させられるのは俺だけだった。それは間違いないと思う。あれはハルじゃ無理だよ。ハルは強いから喜友名晋司の考えることなんてちっともわからないだろう? だから遅かれ早かれこうするしかなかったと思う。だからその前にハルが勝手に色々試しても全然無駄で、ハルが無駄に削れるだけだった。

 だから後悔は、今のところしてないかな。将来するかもだけど。


 今俺の半分は家にストックされている。放っておけば消化されてなくなってしまうようだ。幽霊はご飯食べるイメージはないんだけど家って生きてるのかな。ご飯を食べないといけないのかな。俺はご飯?

 そういえば最初家を見た時、歌菜を食べていた。俺の半分もあんな風に食われたんだろうか。歌菜はもう消化されてしまったのかな。なんとなくそんなことをぼんやり思い出している。

 あの時の家はとても禍々しかった。呪いと同視できるほどに。呪いって何だろう。家は呪いを剥いでほしいと言っていたんだから、呪いと家は違うものなんだよね?

 わかるような、わからないような。

 そういえば家と柚はどういう関係なのかな。柚は何故人を殺しているんだろう。何故俺を殺そうとしてる? 柚との関係は良好だと思うんだけど。

 ぼんやりといろんなことを考える。


 ハルが死んだら俺も死ぬ。それはわかってる。

 でも俺が死んだらハルが死ぬ可能性が高まる。こっちは今改めて実感した。俺はハルの手段。そうか、既に運命は共同していた。結構ぎりぎりで、俺は結構うかつだったな。やっぱ相談すべきだったのかな。

 喜友名晋司の絵に入った時、死ぬつもりはなかった。でも喜友名晋司が絵を描き切る前に呪いに飲まれたら死ぬかもしれないとは思った。未必の故意、か。柚と一緒だな。反省。


 ハルは死にとても近い可能性にはベットを張るけど死ぬ可能性があるベットはいちばん最後まで張らない。生存が第一目標だから。

 なんとなくハルが怒った理由がわかった。ハルは呪いに抵抗して生き残ることだけを精いっぱい考えてる。なのに俺は簡単に死んでも仕方がないと思ってしまったのかも。そんなつもりじゃなかったけど、考えが足りなかった。普通のハルなら踏まない選択肢だったか。

 でも、他に方法はない。他に選択肢がないなら、ハルならやっぱり踏むかな。呪いに殺されるなら自分で選んで死ぬと言っていたし。なら、いい。やっぱり後悔はしない。ハルが死ぬのは嫌だな。


「ハル、ごめんね。俺うかつだったかも。これからはちゃんと相談する」

「そうしてくれ」

「でもハルも相談して? いいね?」

「……わかった。それで俺は夢に潜る。公理さんにはまた見張ってほしい。念のため控えていたが時間がない。見るべきは教団員が死んだ時の情景。まずは誰があの死体を作ったか確認する。『呪いの依代』の特定、止めるべき事象の確定。糞。家に聞いておけばよかったな」


 さっきは俺のことを聞くのに家の時間を使い切った。ごめんね。


「わかった。俺はその間柚と電話してみるよ」

「柚と電話?」

「そう。俺と柚の今の関係がいまいちよくわからないから直接聞いてみる」

「俺もいたほうがいいんじゃないか?」

「どうかな、ちょっと個人的な話がしたいの。それから夢に潜る前に気づかれているかどうかが確認できるかと思って。変な反応したらわかるかもしれないから」

「夢を見始める前はさすがに気づかない思うけどな」


 ハルの予想では柚は多分夢を認識していないってことだけど、やっぱりわかることは増やしたいよね。

 ハルは心配そうに俺を見て、無理をするなと言って布団に入った。電話は安全でしょ。電話だし。あれ? 俺信用ない……のか。はは。胸が少し痛い。


 寝息を立て始めるハルを見ながらコールする。どことなく子供っぽい寝顔を見るたび罪悪感が募る。


「もしもし柚? まだ起きてた?」

「うん、起きてるよ。どうしたの?」

「ちょっと話したくて」

「なあに?」

「あのさ、ハルは見逃してくんないかな」

「なんで?」

「俺がそうしてほしいから。代わりにできることがあればするからさ。食べられたくはないんだけど」


◇◇◇


 どいつもこいつも馬鹿にしやがって。

 何が、あなたも神様を信じればいいのよ、だ。

 あの男がどんなやつか知ってて言ってんのか?

 家族捨てて好き勝手やってるやつだそ?


 ああもう! イライラする。むしゃくしゃする。

 でもあの儀式のことは外に書かないという約束になってる。そういう約束で金をもらっている。

 とりあえず違うことをSNSに書いて発散しよう。この間買った入浴剤、思ったよりいい匂いじゃなかった。そうだ、酷くない? 酷いよね。もっといい匂いすると思ったのに。

  カタカタカタカタ

 んん、ちょっと落ち着いた。

 悪口じゃないもの。本当だもの。ふう。


 手元にむきだしの200万円。

 うん。お金。これで何か買おう。メルトリンケの新作のバッグとか。


 あいつらみんなおかしい。あの狂った光景。毎回毎回あれは何をしているんだ。アパートに大勢集まってそれぞれ本を取り出して読み始める。みんな感動しているみたいだけど、話してることがバラバラで意味解んない。気持ち悪い。

 これ、何か通じ合ってんの? 童話とか映画の原作の本とかを読んでるやつもいる。意味わからん。気持ち悪い。そんな中であの男も何か幸せそうに本を読んでいる。死ねよ。マジ死ねよ。

 ああもう、鳩もうるさい。それから呪文。いろんな音が混じって気持ち悪い。何唱えてるんだあれ。気持ち悪い。よく耐えられるな。頭おかしい。狂ってる。


 むかつく。あいつは大事な時に家族ほったらかしにした。いい奴みたいな顔すんなよ。母さんより祈ることのほうが大事なんだろ? 葬式にも精霊がどうたらこうたら言って帰ってこなかったくせに。

 みんな家族です? ふざけんな。なんでこんな赤の他人と幸せそうにしてるんだ。頭湧いてるとしか思えない。

 挙句の果てに私も一緒に暮らそうとか。

 私はこいつを絶対許さない。

 でもお金は欲しい。馬鹿にしやがって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ