14話 レベル18 女三人俺を巡る殺し愛 そして小旅行
王城で行われていたパーティーの最中、俺は王になりすましていた魔物を倒した。
「皆はこれからどうしたい?」
俺は玉座に腰かけて、大広間に集まった人々に問いかける。まず銀の髪を揺らしてシェフィが答えた。
「新しい王様を決めないといけないと思います!」
「俺も同感だよ。では誰かーー」
「ユート様が王だ!」「騎士ユート様を王に!」「私たちを導いて下さい!」
大広間に集まった貴族の男女たちが次々に声を上げる。クラムはなぜだか不満げな顔をしている。 いい気分だ。テローン。
へ? 間抜けな音が脳内に響いた。様々な所にかけた魔法が解ける感覚。レベルが上がってしまった。またチートが失われたようだ。
そんな間にも貴族たちの歓声は止まない。なんでレベルが上がったんだ? 俺は小声でステータスを開く。
うわ、すごい。現在進行形で経験値のゲージがぐんぐん伸びてるぞ。おそらく俺が今得ている名声や人気が経験値として認識されているのだろう。
静かになるまで待った。俺のレベルは18まで上がった。王様に推薦されるほどの名声で上がるレベルは3。なんだかケチ臭い。おっと、皆が俺の返答を待っているようだ。
「皆の気持ちはよく分かった。だが実際問題、騎士から一気に王になれるものなのか?」
「心配無用ですぞ、ユート殿。私は長年王家の側近として仕えてきた者ですじゃ」
人々の間からいかにもといった感じの白髪の老人が前に出てきて語り始める。
「王座が空き、王子が継承権を放棄した場合、次の王は貴族の合議で決めることになっておるのです。400年ほど前にも同じことがあったと記録されておりますじゃ」
「なら王子を探す必要があるな」
「その必要はございませんじゃ。あちらが王子です」
老人が指差す先には熱狂的に手を振る王子がいた。
「ユート様! 王様になってー!」
「という訳ですじゃ。誰かユート殿が王になることに反対するものはいるか?」
「私は嫌よ! ユートは私の旦那様になるんだから!」
クラムは金髪を振り乱して反対する。やはり俺を当主にすることを諦められないみたいだな。老人は無情にも話を進める。
「反対1、賛成多数。よってユート=ゴナン=リリックを我らが国の王とする!」
え? もしかして俺に拒否権ないの? まあいいけど。
「我らが王ユート様、まず最初の仕事ですじゃ。王妃を決めてくだされ」
その瞬間、どろりと重い殺気が大広間を窒息させた。シェフィの目が強く紅く輝く。クラムの金の長髪が宙を舞う。トトの微笑が凍りつく。
貴族の何人かは失神した。そうでない者は皆しめやかに失禁した。おぞましい三人が俺の前へゆっくりと歩いてくる。こわい。
俺の目の前で、三人の女の歩みが同時に止まった。
「リリは私と永遠に結ばれたいよね? これまでも一緒だし、これからもずっと一緒だよね?」
シェフィは乙女っぽいセリフを吐くが、その手にはハンマーが握られている。こわい。
「人の上に立つことを知る私の方が王妃に相応しいと思わない? ユートをサポートしてあげられるし、私の一族もきっと1つに纏まるわよ」
クラムは理性的な提案をしてくる。しかし彼女の周りには魔力の嵐が吹き荒れている。こわい。
「私ならユート様が死ぬまで、いや死んだ後まで日も夜もご奉仕して差し上げられるワ。快楽に身を任せて過ごしましょう?」
トトは堕落しきった、魅力的な誘いをかけてくる。だが先程から表情が微動だにしない。喋っているのに唇すら動かない。こわい。
「もうリリはチート使えないもんね? 多分レベルは17か18」
シェフィがニッコリと笑う。俺はぎこちなく笑い返す。頬がひきつっているのが自分でも分かる。全部バレてるじゃねーか。
「今のリリはただの駆け出し冒険者。私が力づくでお婿さんにしてあげるね」
「アマルガムさん、あんまり強引なのは感心しないわね」
「そうよ、ユート様が困ってらっしゃるじゃない」
「やるか?」
「受けて立つわよ」
「やらせて頂きますワ」
「ストーップ! やっぱなし! 王様辞めた! だからお前らも止めろ!」
三人の動きが止まった。チートなしの俺に彼女たちをコントロールするのは無理だ。このまま続けたら周りの人が皆死んでしまう。
「王は死なない限り辞められませんぞ」
クソジジイ余計なことを言うな! 三人の怪物がまた動き出したじゃないか! 死にたいのか?!
「じゃあ保留だ! 俺は世界を救う旅に出る!」
おお、と貴族たちがどよめく。シェフィ、クラム、トトは怪訝な顔をする。
「救世ですかな。それならばしばしの保留は可能ですじゃ」
「旅の間に嫁も決める! だからしばらく王子が代理で統治しといてくれ! 頼んだぞ!」
俺は必死に走りだし、全てを置き去りにして城から逃げた。3つの雄叫びが背後から聞こえた気がしたが、聞こえなかったことにしよう。
あ、大量の金貨を受け取るの忘れてた。まあいいか、どうせ全部俺のモノになるんだ。
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「ホントに行くの?」
ここは自宅。シェフィがたずねてくる。俺はソファに座ったまま答える。
「ああ、王になるにしてもこの国のことを全然知らないってのはマズイだろうし。国内だけでも食べ歩きしながら見て回るよ」
この旅にはもう1つ目的がある。俺のレベルを20にしてチートを再び得ることだ。レベルを2上げる。これは難しいことではないが、そう簡単でもない。王になった後だと厳しいだろう。だから今の内に上げてしまおう、という訳だ。
そしてチートと共に王になった暁には酒池肉林の生活を送り、圧政を敷き、まともなハーレムを作るのだ! フハハハハ!
「よだれが垂れておりますよ」
我が家のちびっ子メイド、トトが口をフキフキしてくれた。
「で、最初はどこに行くのよ。まさか逃げるつもりじゃないでしょうね」
クラムの青い目が半信半疑だと告げている。
「まずは港街を目指そうと思う。港には情報が集まるというからな」
「本当は?」
「港には異国の珍味が集まるからな」
「だろうと思った。ユートらしいわ。いつ出発する?」
「今だ」
俺はすっくと立ち上がった。
「どうせお前らもついてくるんだろ? もう馬車は外に用意してる。一時間で用意してこい」
「私はメイド服があれば十分だワ」
「えーと、えーと。着替えと武器と...... ご飯?」
「誰もお金は持っていかないのね! あーもう、色々あるから少し遅れても待っててよ!」
クラムだけ慌てているな。いや、後の2人が気楽すぎるだけか。これからもクラムは苦労することになるだろうな......
シェフィとクラムは用意の為に走っていってしまった。トトは俺の側に控えている。窓から差し込んでくる日光が暖かい。
「皆ついて来てくれるんだな」
ボソと呟く。柔らかなソファに身を埋め、目を閉じる。優しい小さな手が頭を撫でるのが分かる。
「きっかけがあればそれで十分、でしょう? それともその先まで言わせるつもり? 貴方はもう選ぶ決心がついた?」
「いや、今はここまでにしとこう......」
睡魔に体を任せる。トトの不思議な子守唄が快い。優しい夢を見た、気がする。
「ほら、起きて起きて」
体が揺すられる。シェフィが俺の顔を覗きこむ。ああ、よく寝た。一時間経ったのだろうか?
「準備は万端よ。色々と話もつけてきたわ、一時間以内にね。ああ疲れた」
クラムは銀色の鎧を身につけている。例のごとく胸の部分は鎧ではなく、別の胸部装甲に覆われている。柔らかそうだ。
シェフィを見ると彫刻が施された銀に輝く胸当て? をつけている。なんだこれ。
「あっ、これ? クラムちゃんがくれたんだ。いいでしょ?」
うんうん。仲良きは美しきかな、だ。というか仲良くしてくれないと困る。俺が死ぬ。
「よしそれじゃあ行くか!」
「実は伝えないといけないことがあるのです」
トトがあらたまった口調で話す。
「どうした?」
「言ったでしょう? ここは私の家で、この家が私なの。私はこの館から離れられない......」
「そうか...... 残念だ」
「だから館も一緒に持っていくワ」
「は?」
トトが大きく息を吸うとなんと家全体が発光し始めた。目の前が真っ白になり、次の瞬間に俺は庭の真ん中に立っていた。
「吸いこんじゃった。家を出して欲しければ申し付けてください。いつでもどこでも出してあげますワ」
「お、おう。浅い呪縛だな。それではれっつごー」
気合いが入らない...... まあこのようにして俺の小旅行は始まる。保留の回答。俺はこの中から1人を選ぶことができるのだろうか?
「ほら、もう馬車を出すわよ。乗った乗った」
クラムが呼んでいる。とにかく今は皆で食って、飲んで、騒ごう。まだ俺たちには時間があるはずだ。
「まあ楽しみ、かな?」
俺は馬車に乗り込んで、バタンと扉を閉じた。
この話は小さな区切りとなります
これからは旅立った4人の姿を描いてゆきます
この後3つの街や村を訪れた所で第一章が終了
この時点で10万字を少し越えるくらいになる予定です
お楽しみに!




