1-5、流行り病?いいえこれは、食物が原因の……?
皇帝の皇宮に仕える侍女や女官を捕まえて、さて、瑞希は問いただす。
「最近、体調不良のものが出たとお聞きしました」
「あなたさまは……五行神女さま? えーと」
「わたしが直々に捜査を依頼した」
瑞希の後ろから金栄が顔を出して、女官は青ざめてその場に膝をついた。
「わ、わたくしはなにも」
「あの、責めているのではなく。最近、なにか変わったこと。天気や食物、医官、薬草。なにか気になることはありませんでしたか?」
「わ、わたくしは……しかし、わたくしの友が。ブタクサの花粉で咳鼻水があり」
「ブタクサ。確かに今は、夏ですものね」
しかし、夏とはいえ、気温が上がり切れていない印象だった。
「陛下。この国では夏は毎年このような気温なのですか?」
「……いいや。霊獣が健勝な頃は、もっと四季もはっきりしていたが」
「なるほど。でも、それでもブタクサの花粉症」
「かふんしょう……?」
女官が首をかしげる。瑞希は、「ありがとうございました」と頭を下げて、次は厨房に向かった。
厨房では、料理人たちが輸入品の食材を見て、目を輝かせていた。
「こんにちは。料理長」
「げ、あ、あなたさまは……!」
珍妙な料理を作った上に、神女と来たものだから、瑞希は厨房では特に嫌われている。
苦笑いを漏らしつつ、瑞希は輸入食品を見渡した。
「クミンにコリアンダーですね」
「神女さまは、さすが知見がお広い」
「これ、最近の料理に使いました?」
「いいえ、輸入品は異国の料理にこそあうものなので。献立を考えているところでした」
「なるほど。これ、カレーやタンドリーチキンにあいますよ」
「かれ、たんどり?」
「ああ、それはまたあとで。あと、そちらは?」
ウイキョウと五香粉を見て、さて瑞希は、なにかに気づく。
「こっちの香辛料は、トンポーローや煮魚などに使っておりますが」
「なるほど。そういえば、今年はブタクサで咳鼻水を出すものが多いのでは?」
と、瑞希は金栄を振り返った。
金栄は、「確かにそうだな」と答える。
「なるほど、これ、呪いではないですね」
瑞希の中で、確証がわく。
花粉症から、食物アレルギーを発症することがある。特にスパイスは、アレルゲンとなりやすい食物だった。
「陛下。今後、ブタクサやシラカバで咳鼻水が出る方には、香辛料を使った料理は控えてください」
「よもや、香辛料が原因と?」
「はい。厳密には、花粉症から食物へのアレルギーを発症……つまり、ブタクサの花粉により、香辛料への中り(アレルギー)が出てしまうことがあるのです」
「さような仕組みが……そなたのいうことは全部は理解できぬが、香辛料が原因というのならば、言うとおりにしよう」
その後、後宮で謎の呪いに中る人間はいなくなった。
金栄は内心で思う。
ここまでの知識を持つ瑞希は何者なのか。
五行神女はどこから来た、何者なのだろうかと。




