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5-1、雲妃は白虎さまに呪われている?いいえ、食養生で治ります

五、白虎宮の雲妃


 肉アレルギーの件が解決して、金栄はほっと一息つく間もなく、青龍宮へと足を向けていた。


「姉上」

「その呼び方はよしてちょうだい」

「姉上。では、また来ます」


 青龍宮の妃、雲妃は、どうやら金栄とただならぬえにしがあるようだった。



 麒麟宮での子育ての中で、夜妃、紅妃と仲良くなり、瑞希は金を司る白虎宮の雲妃(うんひ)のことをふたりから聞いた。


「雲妃さまは、いつも面紗をしていらして……肌がただれておいでだそうです」

「肌が?」

「さようです。後宮に来てから発症したらしく……白虎さまの供物をささげるにも、『醜い妃が霊獣さまに近づくわけにはいきませぬ』と拒まれて」


 なるほど。

 後宮妃がそろいもそろってこんな状態だから、呪いだのなんだのと言われてもおかしくはない。

 しかし、この時代には呪いととられる肌荒れでも、食事の改善と少しの手入れでよくなる可能性は、残されている。


「私、白虎宮に行ってまいります!」


 思い立ったらじっとしていられないのが瑞希である。

 相手に拒まれる可能性に気づかぬままに、白虎宮へと走り抜けるのだった。



 しかし、案の定、門前払いである。


「雲妃さまは、臥せっておられます。いくら神女さまとて、入ることは許されませぬ」

「しかし、では、お食事の内容をお教え願えませんか?」

「妃さまのお食事を知って、毒でも盛るおつもりで?」

「そんなことは……!」


 がやがやと騒がしさを聞きつけた白虎宮の妃、雲妃が、きい、と扉を開けて姿を現す。

 顔に面紗をしているが、あらわになった額に赤いただれが見える。


「わたくしをあざ笑いに来ましたか?」

「そのようなことは」

「どの医官もそう。こうすれば治る、ああすれば治る。でも、治らない。これは呪いなのです。白虎さまは、私がお嫌いなのです。ならばわたくしも、白虎さまには近づきません。心中します」

「心中って……雲妃さま! お聞きください! そのただれは、食生活とスキンケアで治ります!」

「すきん……? 神女さま、そのような怪しげな呪術で私を治すと?」

「ああもう! では! 私が化粧水を作ってきますので。お食事も。一週間でいい、試していただけませんか!?」


 必死の形相の瑞希に気圧されて、雲妃が一瞬戸惑う。しかし、そば付きの女官が瑞希を追い払う。


「雲妃さま! なりませぬ! そうやってみな、金を巻き上げるだけ巻き上げて!」

「おかえりください、神女さま」


 もう一押しだったのに、女官に邪魔立てされて、瑞希の気持ちが届かなかった。

 しかし瑞希は、閉まりゆく扉に向かって、


「明日から、毎日朝昼晩と、お食事をおつくりして持ってまいりますので!」


 雲妃は、振り返りもしなかった。



 さて。

 現状、肌荒れというのは食事で改善されることも多い。特に、脂っこい食事や糖質過多、ビタミンとミネラル不足によるものは大きい。

 さらに、この時代にあるもので化粧水を作る。


「エタノールはないから……新鮮なはちみつと、火を通してアルコールを飛ばした酒粕を混ぜて、布にしみこませてパックにしたら」


 はちみつと酒粕の保湿効果を利用したパックだ。


「あとは、お食事ね」


 金栄の食事を見ていればわかる。後宮は偏った料理が出されるのが常だ。

 特に、この国では、後宮では揚げ物を多用する。市民には手に入らないぜいたく品である油を使った料理は、なによりの贅沢とされるからだ。


「権力を見せつけるための料理、なんて、くだらないわね」


 料理はおいしさもそうだが、健康を守るものでもある。

 食材を前に、瑞希は献立を考えるのだった。


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