↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
18/45

3-7、火を抑える水と、弱める土。朱雀さまには玄武と麒麟!

 さて。

 料理を膳に載せ、三人で朱雀様のもとへ行く――そのそばには、霊獣の玄武さまと麒麟さまの姿もあった。


「本当に、大丈夫なのだろうな」


 金栄が念押しする。

 瑞希は「はい」と答えたものの、確証はない。

 五行とは、かかわりあって生きている。相生と相剋の関係だ。

 そして、火を抑える水の玄武さまと、火を漏らす(よわめる)土の麒麟さま。

 どういうめぐりあわせか、運よくこの二つの霊獣さまが、いま、気を回復して瑞希のそばにいる。

 朱雀の間に来て、しかし、中から聞こえたのは、朱雀の取り乱す声だった。


『紅! 紅!』


 紅妃が中にいるようだ。

 慌てて三人と霊獣は、朱雀の間に足を踏み入れる。

 ぶわっと熱気が三人を押しだす。

 しかし、瑞希は玄武と麒麟を抱き上げると、迷わず朱雀のもとに走った。


『来るな! 早く紅を連れて外へ!』

「大丈夫です! 朱雀さま! こちらに!」


 瑞希は玄武と麒麟を、朱雀の大きな足の上に座らせる。

 玄武の水、麒麟の土が、朱雀の暑気を抑え込む。

 朱雀の間の熱気が、収まっていく。


「紅妃さま!」

「……神女、さま?」


 意識はあるようだった。

 瑞希は、料理を持つ金栄と夜妃に頼んで、朱雀に供物をささげてもらう。


「朱雀さま、お召し上がりください」

『しかし、わたしが回復したら。また紅が暑さで』

「それはもう、解決済みです。見てください。玄武さまと麒麟さま。三人で一緒にいると、朱雀さまのお力が中和されるのを感じませんか?」


 ふと、朱雀は足元の玄武と麒麟を見やる。

 ふたつの霊獣のおかげで、部屋のなかが通常の気温に戻ったことを感じ取る。

 朱雀の目から、涙がこぼれる。


『ああ。ああ。わたしは、ようやく、供物を食べてもいいのだな』


 瑞希が持ってきた供物より先に――朱雀は、紅妃の持ってきた供物、火の気を含む、セロリと香辛料の煮込み料理を口に入れる。

 ほろほろと、朱雀の目から涙がこぼれる。それは、炎の形をしていた。


『おいしい、おいしい。紅、見ているか』

「朱雀、さま。召し上がっていらっしゃるのですね」


 よろめき立ち上がり、紅妃が朱雀に歩み寄り、その額に頬を寄せた。

 供物を食べ終えた朱雀は、見る見るうちに体が縮み――


『うみゅう』

「か、かわい……!」


 麒麟よろしく、赤子へと変貌したのだった。


「朱雀さま!?」

「紅妃さま。大丈夫です。供物を召し上がると、どうやら気の回復具合に合わせて、赤子や幼児に姿かたちが変わるようなのです」


 ほら、と指さす先の玄武や麒麟を見て、紅妃は、朱雀を抱き上げた。


『わたしは、紅をまもりゅ』

「まあ、朱雀さま……!」


 おしゃべりができるということは、人間でいう三歳児くらいだろうか。麒麟様よりは年上だ。


「朱雀さまの火の影響もありますので……朱雀さまを、麒麟宮で預かりたいのですが」

「そんな……! 朱雀宮の霊獣さまを、神女さまに預けろと」

「いや……まあ」

『紅、わたし、紅、傷つけたくない。わたし、力使いこなせるようになったら、ここにかえりゅ』

「ああもう、朱雀さまに言われたら断れませんわ。わかりました。ですが」


 ずい、と紅妃が瑞希に詰め寄る。


「こ、こうなりましたら、わたくし、毎日朱やに供物をささげに、麒麟宮に伺いますわよ?」

「あ、ええと。はい、どうぞ」

「陛下は、よろしいですか?」

「む。まあ、麒麟宮は実質、麒麟さまの住まい。わたしの管轄とはいえ後宮に変わりはない。問題はない」


 かくして、暑い暑い夏が始まる。

 残すところは白虎の雲妃と青龍の桃妃(たおひ)。

 どのような妃なのだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。