第7話 【セキュリティ対策】利権ギルドがサイバー攻撃(物理)を仕掛けてきたので、規約違反で凍結してみた
「セシリア様、緊急アラートです! 我がソラリスのドローン配送網(空中コンテナ)に対し、王都の既存物流ギルドが差し向けたと思われる魔導騎士団が、物理的なクラッキング(撃墜工作)を開始しました! 現在、3機のコンテナが不当に拿捕されています!」
シリルが血相を変えて……いや、むしろ「新しいバグの発生」にどこかワクワクしたような歪んだ笑顔で、私のベッドサイドに駆け込んできた。
空中ウィンドウには、王都の街道裏で、網や妨害魔法を使って私たちの空飛ぶコンテナを強引に引きずり下ろしている、お偉方お抱えの魔導騎士たちの姿が映し出されている。
「あー……。既得権益にしがみつく老害ギルドが、市場競争に勝てないからって力技で通信妨害(物理)を仕掛けてきたわけね。本当にリテラシーが低いわ」
私はふかふかの枕に顎を乗せたまま、面倒くさそうに人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。
「セシリア様、いかがいたしますか!? 我が方の自動化ゴーレムに『戦闘アルゴリズム』をパッチ適用し、物理的に奴らを駆逐させますか!?」
「シリル、あなたもまだまだ脳筋ね。そんな泥臭い戦闘、リソースの無駄よ。私のシステムを利用する以上、全員が『利用規約』に従ってもらうわ」
私は、この世界に張り巡らされている魔力のインフラ、そして私が組み上げた導管決済ネットワークの「利用規約」のソースコードを開いた。
彼らが使っている王宮製の魔導具も、ギルドの決済端末も、すべてバックエンド(根底)では私のシステムを迂回して繋がっているに過ぎない。
「妨害行為を行った個別ID(騎士団および物流ギルド幹部)を特定。規約第4条『プラットフォームの運営妨害』に基づき、該当アカウントの『世界インフラ利用権』を即時・永久凍結(アカウントBAN)ね」
そして、トドメに「契約の鎖」の自動執行マクロを組み込む。
「はい、デプロイ(適用)」
パチリ。
――王都近郊の街道裏。
「ハハハ! ざまぁ見ろ! こんな泥人形の箱など、我ら王宮魔導騎士団の敵ではないわ!」
「この生意気な辺境の物資を押収し、我が物流ギルドの利権を取り戻すのだ!」
コンテナを撃墜し、勝ち誇っていた騎士やギルドの幹部たち。
その瞬間、彼らの胸元や手元にある魔導具、そして商人ギルドの決済カードが、一斉にドス黒い光を放った。
『エラー:利用規約違反を検知しました。お前の命を凍結します』
「な……なんだこの不気味な声は!? ぎゃああああっ!?」
空間から無数の『契約の鎖』が飛び出し、騎士や幹部たちを文字通り芋虫のようにキリキリと縛り上げた。
さらに、彼らが持っていた魔導武器や防具の魔力供給が「強制シャットダウン」され、ただの重い鉄クズと化す。
「魔、魔力が練れん……!? 装備が動かないぞ!」
「ギルドの全資産口座が凍結されただと!? 金が、金が一ゴールドも引き出せない!!」
彼らはセシリアの張った「物理セキュリティ(利用規約)」の前に、指一本動かすことも、1ゴールドを動かすこともできず、街道のド真ん中で完全に詰んでしまった。
『通知:不正アクセスを遮断しました。凍結した資産 12,000,000 G を没収(運営の懐に格納)しました』
「よし、不労所得(セキュリティ罰金)ゲットね。これで新しいパジャマが買えるわ」
ベッドの上でゴロゴロしながら通知を確認した私は、大きく伸びをした。
敵がどれだけ剣を振るおうが、魔法を唱えようが、プラットフォームの管理者(神)たる私には届かない。戦う前に、規約で存在を消せばいいだけの話だ。
「セシリア様……! 物理的な軍事力を『利用規約違反』の一言で無力化し、おまけに資産まで合法的にルート(略奪)するなんて……! ああ、あなたの書くコードはなんて合理的で邪悪……いえ、美しいんだ!!」
シリルが壁に頭を打ち付けんばかりの勢いで悶絶している。
「シリル、うるさい。ダークモードのまま静かにしてて。……あ、没収したお金で、来週のスイーツの定期購読の枠を広げておいてね」
「ハッ! 喜んでサーバー保守(注文処理)に奔走いたします!!」
王都の利権ギルドを完全に機能停止(アカウントBAN)に追い込んだ私は、手に入れた莫大な罰金(あぶく銭)の使い道を考えながら、ふかふかの掛け布団に包まれて、再び幸せな微睡みの中へと沈んでいくのだった。




