第4話 【地域貢献】引きこもり環境を快適にしたら、村人から神と崇められた件
「セシリア様、ご指示通り『最高級魔法羊毛のキングサイズベッド』の配送管理、および設置プロセスの自動化が完了しました。現在、エラーログはゼロ、稼働率は100%を維持しております!」
「ありがとシリル。やっぱり優秀なフロントエンド(実務担当)がいると、引きこもり効率が跳ね上がるわね」
シリルが我が家にやってきてから数日。
私のあばら屋は、さらに快適な「全自動ひきこもりシェルター」へと進化を遂げていた。
新調した極上のベッドに寝そべりながら、私は空中ウィンドウで村のマップを開く。
「……それにしても、最近ちょっと家の周りが騒がしいのよね。パケット詰まり(渋滞)でも起きてるのかしら」
窓の外を見ると、そこにはソラリス領の貧しい村人たちが、おそるおそるこちらの様子を窺っている姿があった。
彼らの視線の先にあるのは、我が家の庭で黙々と薪を割り、畑を耕し、せっせと井戸から水を汲み上げている『自動化ゴーレム』たちだ。
「ヒィッ……! ま、魔王の軍勢か……?」
「いや、見ろよ。あの泥人形、俺たちが何日もかけてやる作業を、一瞬で終わらせちまってるぞ……?」
村人たちは、感情を持たず、しかし完璧な効率で労働をこなすゴーレムたちに恐れおののいている。
どうやら、私のシステムが効率的に動きすぎて、近隣住民の認知バグ(恐怖)を引き起こしているらしい。
「セシリア様、どうされますか? 外部からの不要なアクセス(村人の視線)を遮断するため、物理ファイアウォール(防壁魔法)を構築しますか?」
シリルの提案は魅力的だったが、私は首を振った。
「いいえ、それは根本的な解決にならないわ。彼らがここに押し寄せてくる原因は、この土地の『物流とインフラのインフラ不足』というバグのせいよ。……めんどくさいから、村全体のシステムごと、一括アップデート(最適化)しちゃいましょう」
私はベッドから一歩も動くことなく、指先で新しいコードを組み上げた。
「クエリ指定:『ソラリスの村全体』。If『住民の労働効率=低下』の場合、Then『共有リソース(自動化ゴーレム)の割り当て』および『簡易導管決済アカウント』の自動発行」
パチリ、と指を鳴らす。
「シリル、これを村の共有ネットワーク(広場)にデプロイ(展開)してきて」
「御意のままに! この美しいリソース分配アルゴリズム、鳥肌が止まりません!」
シリルが狂喜乱舞しながら外へ飛び出していった。
数分後。村の広場に、私の魔力によって生成された『全自動インフラ・ステーション』が出現した。
そこからは、村人たちの代わりに農作業を行うゴーレムたちがポコポコと生み出され、さらには王都から自動転送されてくる新鮮な食料や衣類が、格安の『導管決済』で瞬時に購入できる仕組みが稼働し始めた。
「な、なんだこれは……!? 畑の雑草が勝手に消えていく!」
「王都でしか買えないはずの白いパンが、目の前の箱から出てきたぞ!?」
泥臭い肉体労働から完全に解放され、一瞬にして文化的な生活を手に入れた村人たち。
彼らは最初こそ困惑していたが、それがすべて「丘の上のあばら屋に住む追放令嬢」の仕業だと知ると――。
「セシリア様は……魔王なんかじゃない! 貧しい俺たちを救ってくれた、豊穣の女神さまだ!!」
「セシリア様、万歳!!」
あばら屋に向かって、村人たちが一斉に五体投地を始めた。
『通知:ソラリス村の好感度パラメータがカンストしました』
『通知:村人から「聖水(ただの綺麗な湧き水)」が30樽、貢ぎ物として自動納品されました』
ベッドの上でゴロゴロしていた私は、ポップアップした通知を見て小さくため息をついた。
「別に救うつもりなんてなくて、ただ私の周りを静かにしたかっただけなんだけど……。まあいいわ、水汲みのタスクも自動化できたし、結果オーライね」
私は貢ぎ物の水をゴーレムに紅茶へと変換させ、シリルの完璧な保守作業に満足しながら、ふかふかの枕に深く頭を沈めるのだった。




