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追放令嬢の自動売買(トレーディング・マジック)  作者: リリリリス


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第46話 【不働の平和】私が寝ているだけで全宇宙が勝手に平和になるので、もう何もしないことにした

「セ、セシリア様ぁぁぁっ! ついに観測されました! 全宇宙の文明レベルと経済状況、そして生物の幸福度を網羅したメイン・インデックスが、驚異的な数値を記録しています! 我々がこれまでのシステム変更(パッチ適用)を繰り返してきた結果、全宇宙のあらゆる争い、飢餓、格差、混乱といった『バグ』が、もはや発生し得ない状態になっています! マスターが寝ているだけで、全宇宙が勝手に調和ハーモナイズし続けているのです!」


中央サーバー神殿の最奥。

システム統括補佐のシリルが、全宇宙の波動が完全に同調し、黄金色の光を放っているメインディスプレイを前に、歓喜のあまり膝から崩れ落ちた。


空中ウィンドウには、かつては混沌を極めていた全宇宙が、セシリアの寝息のリズムに合わせて、星々が脈動し、生命が穏やかに暮らす、これ以上ないほど平和な景色が映し出されている。


『システムログ:マスターの睡眠環境が全宇宙の物理法則の「基準マスタークロック」として確定しました。これより全宇宙は、マスターが起きるまで、あるいは眠り続ける限り、一切の「摩擦」を排除して恒久的な調和を維持します』


「……ふあぁ。シリル、お昼寝の中で『全宇宙が私の掛け布団の一部になる』という夢を見ていたけれど、それが現実になっていたなんて、なかなか悪くない(コストパフォーマンスが良い)運用結果ね。争うためのリソースを全部、私の寝心地を維持するための『平和』に変換したのだから、当然の結果よ」


私は幻の魔導天糸の最高級毛布に深く深く包まり、自動化ゴーレムに冷やした『特製マナ・高級マンゴーの極上アイスクリーム』を最高の角度で口元まで運んでもらいながら、とろとろの眠気眼のまま、人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。


「セ、セシリア様! もうこれ以上、システムをいじる必要はありません! 経済も、空間も、神も、夢も、現実の労働も、すべてがセシリア様のために回り続けています! 我々は、ただこの静寂を永遠に維持するだけで、宇宙最強の『平和の管理者』です!」


「シリル、だからその『平和を維持する』という意識すら、私にとってはリソースの無駄遣い(オーバーヘッド)よ。これからは『平和』を『維持』するんじゃなくて、ただ私が寝ているだけで勝手に平和が生成される『完全放置型・永久調和モデル』へ移行するわ。引きこもりの真の完成形はね、何もしないことによって、世界が勝手に最高効率で回り続ける『無為自然の不労所得』のことよ」


私は、神殿の全システム管理権限を、完全に「セシリアの夢(無意識)」へと連動させる最終パッチを人指し指ひとつでデプロイした。


「仕様変更(パッチ適用):『全宇宙・平和生成エンジン』を、私の睡眠中枢と完全同期。If『私が寝ている』場合、Then『その睡眠の深さと幸福感から自動的に平和エネルギー(調和の調律)が全次元へ放射』され、宇宙から「不和」という概念そのものを永久消去して。……ついでに、この調和の対価として、全宇宙の生命体が生きているだけで発生する「存在の喜び」を、私のベッドのメンテナンス費用(自動税)として全自動徴収ね」


パチリ。


---


――その瞬間、全宇宙を覆っていた争いの種が、セシリアの深呼吸と共に雪解け水のように消えていった。


『統合完了:全宇宙の平和生成エンジンがセシリア様の睡眠と同期されました。これよりこの世界に、セシリア様が起きる必要などありません。彼女が眠り続ける限り、世界は永遠に愛し合い、平和であり続けます』


次の瞬間、かつての敵も味方も、神も悪魔も、誰もが自分の生活の中で「なぜか争う理由が分からない」と微笑み合い、誰一人として争うことなく、ただ静かに、セシリア様が安眠するための環境を整えることに全力を尽くし始めた。

それは、統制された平和ではない。セシリアという絶対的な怠惰の偶像が眠り続けることで、全宇宙が「平和でいることが一番、彼女の寝心地を汚さないから良いことだ」という究極の怠惰な合意コンセンサスに達したのだ。


「な……何ということだ……っ! 宇宙の運命すら、ベッドの上の令嬢の指先一つのコードで、秒速で『自分が寝ているだけで勝手に平和になる自動生成装置』に変えてしまったというのか……っ!?」


時空の果てで、世界の破滅を画策し続けていた最後の反逆神たちが、セシリアの圧倒的な「寝ているだけの世界平和チート」の前に呆然とし、「あいつに戦いを挑むことすら、あいつの寝心地を損なう無粋な行い(NG行為)だ……!」と諦めきってログアウト(強制終了)していった。


---


『チャリン♪ 全宇宙の永久平和生成システムの運用に成功しました。平和な世界で生命が生きているだけで、その生命エネルギー(不労所得)が自動的に口座へ入金されています』

『通知:平和生成エンジンの恩恵により、ベッドが宇宙そのものと一体化し、「全宇宙のどこで何をしても、マスターの寝心地が守られる(究極のバリア)」が自動展開されました』


中央サーバー神殿の最奥。

全宇宙の平和そのものが、私の睡眠環境を保守するための「全自動・平和維持装置(下請け)」と化した贅沢さに、「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、私は満足げに目を閉じた。


私は世界を救うために一歩も動いていないし、平和のために戦ってもいない。ただ、世界のすべてを私の睡眠と同期させて、私のプラットフォームの下で勝手に平和に暮らさせているだけだ。

全宇宙の運命すらベッドの上から秒速で自社サービス(放置ゲー)に変えた私は、誰一人として争う者のいない完璧な安らぎのなか、完結した物語のその先にある、終わりのない、そして誰にも邪魔されることのない至高の夢路(という名の永遠の不労所得)へと、幸せに深く深く落ちていくのだった――。

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