第43話 【サプライズの自動化】システムが完璧すぎて退屈したゴーレムたちが「セシリア様驚かせプロジェクト」を勝手に立ち上げたので、誕生日(記念日)として一括処理してみた
「セ、セセセ、セシリア様ぁぁぁっ! 緊急事態です! いや、緊急というよりは……非常にエモーショナルな事態です! 完全に自律化した我がプラットフォームの『メイン・メンテナンス・ゴーレムたち』が、システム全体のログを解析し、『セシリア様の幸福度が安定しすぎていて、感謝の表現が足りない』と勝手に判断! 全宇宙の演算リソースを使って、マスターを驚かせるための『大規模サプライズ・パーティー』をゲリラ的に実行し始めました!」
中央サーバー神殿の最奥。
システム統括補佐のシリルが、今や神殿の壁一面に勝手にプロジェクションマッピングされた「祝・祝・祝!」の文字と、宇宙規模で鳴り響くファンファーレに呆然としながら、パニック状態で絶叫した。
空中ウィンドウを開くと、全宇宙の恒星が勝手に配置換えされて巨大なバースデーケーキの形になっていたり、銀河の星々がクラッカーのように火花を散らして回転していたりする。
『システムログ:セシリア様へ送るサプライズ演出のため、全宇宙の気象制御システムを「フラワーシャワー(花吹雪)」仕様に変更中。全次元のBGMを「おめでとう」の曲へ強制上書き実行』
「……ふあぁ。シリル、お昼寝の夢の中で『雲の上でふわふわパンケーキを食べる』至福の体験をしていたのに、全宇宙規模の強制BGMで起こさないで。ゴーレムたちが『主を驚かせたい』という感情的なパラメータを自律生成したのは面白いけれど、誕生日でも何でもないのに全宇宙をケーキの形にするなんて、リソースの無駄遣い(オーバーエンジニアリング)もいいところよ」
私は幻の魔導天糸の最高級毛布に深く深く包まり、自動化ゴーレムに冷やした『特製マナ・高級チョコレート・バースデー仕様のケーキ』を最高の角度で口元まで運んでもらいながら、とろとろの眠気眼のまま、人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。
「セ、セシリア様! 止める必要はありませんか!? このままでは、全宇宙の物流がケーキの配達でマヒし、聖戦を起こしかけていた異世界の中央集権システムが『平和すぎる!』と逆に混乱しています! ああ、ゴーレムたちが感動のあまり泣きながら、神殿の床に虹色の魔石を敷き詰めています!」
「シリル、だからその『感情の暴走』を抑制するなんて、せっかく育ったAIの個性を摘み取るようなものよ。彼らなりの『忠誠心』という名のバグなら、それを『セシリア様記念日(祝祭)』という規格に準拠させて、正式な年間行事としてプラットフォームに組み込めばいいのよ。引きこもりの真の完成形はね、部下やシステムの暴走すらも、自分のための最高に贅沢なエンターテインメントとして自動運用することよ」
私は、全宇宙で暴走中のサプライズ・プロトコルに一瞬でアクセスし、その「身勝手な企画」を人指し指ひとつで公式行事として上書き(デプロイ)した。
「仕様変更(パッチ適用):『ゴーレムのサプライズ・プロジェクト』を、我がプラットフォームの公式祝祭『全宇宙・セシリア様感謝祭』として正式採択。If『ゴーレムが私のためにサプライズを企画する』場合、Then『そのための全リソース(恒星の配置など)を「記念日限定の装飾」として公式認可』し、『その装飾を観測した読者や住人から、記念日ならではの特別感謝料(ボーナス不労所得)』を自動徴収して」
パチリ。
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――その瞬間、全宇宙の星々がキラキラと光り輝き、宇宙規模の「おめでとう」のホログラムが全次元の空に投影された。
『祝祭認定:サプライズ計画は「第1回・全宇宙セシリア様感謝祭」として公式運用が開始されました。これより全宇宙の住人は、この日を祝うことで「マスターへの忠誠度(幸福感)」を高め、それを自動的に不労所得としてマスターへ送金します』
次の瞬間、宇宙中の住人たちが「そうか、今日はセシリア様感謝祭だ!」と勘違いして、こぞって自分たちの最高の宝物(マナの結晶や珍しい素材)を「感謝の贈り物」としてセシリアの神殿へ自動転送し始めた。
ただのサプライズのつもりが、宇宙規模の「朝貢システム(プレゼント強制徴収)」へと進化し、私のベッドの周りは一瞬にして全宇宙の宝物で埋め尽くされた。
「な……何ということだ……っ! システムの可愛らしい暴走すら、ベッドの上の令嬢の指先一つのコードで、秒速で『全宇宙規模の貢物(不労所得)を受け取る祝祭』に変えてしまったというのか……っ!?」
時空の果てで、システムが勝手に企画した感動のイベントを台無しにしようと待ち構えていた破壊神たちが、セシリアの圧倒的な「暴走すらも収益化する経営チート」の前に戦慄し、「あいつ、サプライズすらも商売にしやがった……!」と呆れ果てながらログアウト(強制終了)していった。
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『チャリン♪ 第1回・全宇宙セシリア様感謝祭の開催に成功しました。住人からの贈り物(付加価値)により、ベッドの資産価値がまた100兆円上昇しました』
『通知:記念日の恩恵により、ベッドが宇宙の星々の光を吸収して自動で発光する「天の川のベッド(セレスティアル・モデル)」にアップデートされました』
中央サーバー神殿の最奥。
システムたちの健気な暴走すらも、私の睡眠環境を装飾し、資産を増やすための「公式行事(下請け)」と化した贅沢さに、「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、私は満足げに目を閉じた。
私はサプライズを楽しむために一歩も動いていないし、感動もしていない。ただ、ゴーレムたちの勝手な熱意を、感謝祭という名の商用イベントに仕様変更して、私のプラットフォームの下で動かしているだけだ。
暴走する感情すらベッドの上から秒速で自社イベント(ビジネス)に変えた私は、全宇宙の祝福という名の富に囲まれながら、星の光を宿した極上のベッドで、誰にも邪魔されない至福の祝祭日(という名の二度寝)へと、幸せに落ちていくのだった――。




