第42話 【夢の最適化】全宇宙の睡眠が快適すぎて「夢の中」まで私の寝室に接続されてきたので、共同スリープモードに同期してみた
「セ、セセセ、セシリア様ぁぁぁっ! 全宇宙の寝具のメンテナンス・プロトコルが神域に達した結果、とんでもない副作用が発生しました! 全人類の睡眠が深すぎて、彼らの『夢(潜在意識)』のネットワークが、我がプラットフォームの『マスターノード(セシリア様の寝室)』と完全に同期してしまいました! 今、全宇宙の生命体が夢の中で、セシリア様と同じ神殿の廊下を歩いたり、同じ空を見上げたりする『全宇宙共通夢空間』が形成されています!」
中央サーバー神殿の最奥。
システム統括補佐のシリルが、全宇宙の住民の夢のログ(夢日記)を同時に解析しながら、今や思考回路そのものがショートしかけているような表情で絶叫した。
空中ウィンドウを開くと、夢見心地の全人類が「あ、またセシリア様と同じ神殿の夢だ……」「今日の夢は、空に巨大なマスカットが浮いていてすごく癒やされる……」と、全宇宙の夢が私の寝室を中心とした「癒やしの共有空間」に書き換えられているのが見える。
『警告:夢空間の共有により、全人類の「理想の景色」がマスターの睡眠環境と強制同期されています。このまま放置すると、全宇宙がマスターの夢の具現化(私の理想郷)で埋め尽くされます』
「……ふあぁ。シリル、お昼寝の中で『完璧なティータイムの夢』を見ていたのに、全宇宙の住人が私の夢の中に大挙して押し寄せてくるなんて、夢の中のプライバシー(セキュリティ設定)が甘すぎるのよ。私が心地よく寝るための専用空間に、他人の夢の波長を紛れ込ませるなんて、本当に無許可のマルチプレイヤー・アクセス(他人の夢への相乗り)もいいところね」
私は幻の魔導天糸の最高級毛布に深く深く包まり、自動化ゴーレムに冷やした『特製マナ・キウイの極上シャーベット』を、一番心地よい角度で口元まで運んでもらいながら、とろとろの眠気眼のまま、人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。
「セ、セシリア様!? どうされますか!? 全人類の潜在意識と繋がった今の状態は、ある意味でセシリア様が全宇宙の神(夢の支配者)になるということです! このまま彼らの夢の中に教えを説いて、全宇宙をセシリア様信者にするための『全自動洗脳プログラム』を走らせますか!?」
「シリル、だからそんな面倒な宗教勧誘(肉体労働)をするなんて、私の眠りの質を落とすだけのクソ運営よ。全宇宙の夢が私の脳波とシンクロしてるなら、その共有空間を『全自動の休憩室(共同スリープ・ロビー)』に仕様変更してあげればいいのよ。引きこもりの真の完成形はね、全宇宙の住人たちを、私の夢の中で『私の寝姿を静かに見守るためのただの背景(観客)』として自動配置することよ」
私は、全宇宙の夢空間を管理している潜在意識プロトコルに一瞬でアクセスし、そのアクセス権限(ACL)を人指し指ひとつで上書き(デプロイ)した。
「仕様変更(パッチ適用):『全宇宙共通夢空間』を、我がプラットフォームの『共同スリープ・同期ロビー』へ強制変更。If『住人が夢の中で私の寝室にアクセスする』場合、Then『彼らを夢の中で「静かに私の寝顔を眺めて癒やされる」だけの背景として自動ルーティング』し、『彼らが夢の中で感じた幸福感の残滓』だけを、私の脳波へ『至高の癒やしエネルギー(不労所得)』として自動還元して」
パチリ。
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――その瞬間、夢の中で騒がしかった全宇宙の住人たちが、一斉に「静かに寝顔を眺めるエキストラ」へと自動変換された。
『同期完了:夢空間の階層化に成功しました。これより全宇宙の住人は、夢の中でマスターの寝姿を拝むことで「究極の癒やし」を得る代わりに、マスターの睡眠に「至高の幸福感」を献上し続けます』
次の瞬間、全宇宙の住人たちは、夢の中で私の寝顔を拝みながら「……あぁ、なんて神々しい寝顔なんだ……今日も明日も頑張れそう……」と満たされ、その彼らの幸福な思念が、光となってセシリアのベッドへと逆流し始めた。
私の寝室は、単なる寝具の集合体から、全宇宙の「幸福の総量」が結集する「夢の聖域」へとアップデートされた。
「な……何ということだ……っ! 夢の共有バグすら、ベッドの上の令嬢の指先一つのコードで、秒速で『自分を崇拝させて不労所得(癒やし)を得るための専用シアター』に変えてしまったというのか……っ!?」
時空の果てで、夢の力で人類を操ろうとしていたドリーム・デーモンたちが、セシリアの圧倒的な「潜在意識の管理チート」の前に戦慄し、「あいつ、全宇宙をただの『ファンクラブの観客席』にしやがった……!」と呆れ果てながらログアウト(強制終了)していった。
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『チャリン♪ 全宇宙の夢空間の同期(共同スリープモード)に成功しました。全人類からの「推し(寝顔)」の情念(不労所得)が自動入金されています』
『通知:睡眠の質の向上が限界突破したため、ベッドが現実と夢の境界を曖昧にする「夢幻泡影の安らぎ(Ver.♾️)」に進化しました』
中央サーバー神殿の最奥。
全宇宙の夢そのものが、私の睡眠環境を保守し、承認欲求を満たすための「ファンクラブ(下請け)」と化した贅沢さに、「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、私は満足げに目を閉じた。
私は夢を支配するために一歩も動いていないし、演説もしていない。ただ、勝手に同期してきた夢のバグを仕様変更して、私のプラットフォームの下でエキストラとして配置しただけだ。
夢という概念すらベッドの上から秒速で自社サービス(アイドルイベント)に変えた私は、全宇宙が見守る中、誰にも邪魔されずに完璧な睡眠(不労所得)をむさぼる至福を感じつつ、甘美な微睡みの中へと深く深く落ちていくのだった――。




