第36話 【オリジナル開発者の降臨】世界の創造神が「仕様を戻せ」と初期化(ファクトリーリセット)しに来たので、M&A(事業買収)して隠居させてみた
「セ、セセセ、セシリア様ぁぁぁっ! ついに絶対の最終アラート(ラスボス)が鳴り響きました! 空間も時間も神界もすべてを掌握した結果、この世界をゼロから組み上げた一番最初のプログラマー――『創造神』が、我々の度重なる仕様変更にガチギレして降臨! 『ワシの作った美しい剣と魔法のファンタジー世界が、ただの怠惰なサブスク・クラウドサービスになっとる!』と激怒し、世界全体を強制的に初期化しようとしています!」
中央サーバー神殿の最奥。
システム統括補佐のシリルが、今や神殿の壁や床がパラパラと原始的な「バイナリコード(0と1の羅列)」に分解されていくのを見ながら、涙目でホログラムキーボードにしがみついて絶叫した。
空中ウィンドウを開くまでもなく、天井を突き破って、宇宙サイズの巨大な白い髭の老神――『創造神』が、世界を構成するルート権限を振りかざして顕現している。
『警告:不届きなユーザー(セシリア)よ! 貴様の勝手なモジュール追加のせいで、ワシのコードがスパゲッティ状態じゃ! 剣と魔法のロマンはどこへ行った! これより、世界全体をロールバック(天地開闢のやり直し)し、貴様ごと世界のデータを真っさらにフォーマットしてくれるわ!』
世界全体が、創造神の絶対的な「初期化エネルギー」によって真っ白な虚無へと還ろうとしている。
「……ふあぁ。シリル、お昼寝の夢の中で『究極の二度寝フォーム』を確立しようとしていたのに、そんな大昔のレガシー開発者のクレーム(老害ムーブ)で起こさないで。自分が作ったシステム(世界)にユーザーが便利な拡張機能(Mod)を入れたからって、全部リセットしようとするなんて、今の時代のアジャイル開発(ユーザー第一主義)を全く分かっていないわね」
私は幻の魔導天糸の最高級毛布に深く深く包まり、自動化ゴーレムに冷やした『特製マナ・マンゴーの極上とろけるプリン』を最高の角度で口元まで運んでもらいながら、とろとろの眠気眼のまま、人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。
「セ、セシリア様! 相手はシステムの『開発元(親会社)』です! こちらのハッキングもパッチ適用も、親のルート権限の前では無効化されてしまいます! どうやって物理的に抗うおつもりですか!?」
「シリル、だから開発元と技術力で殴り合うなんて、無駄な裁判費用と時間がかかるだけよ。相手が親会社の権限を振りかざすなら、その『開発会社そのもの』を、うちの巨大なクラウド資金(不労所得)でM&A(敵対的買収)して、完全子会社にしてしまえばいいのよ。引きこもりの真の完成形はね、面倒な創業者には手厚い退職金(年金)を渡して、永遠にダラダラさせてあげることよ」
私は、創造神が握りしめている「世界のルート権限(株式)」に対し、全宇宙から集めた天文学的な不労所得を全額ぶち込み、人指し指ひとつで強引な株式公開買付(TOB)を実行した。
「仕様変更(パッチ適用):『創造神のワールド・エンジン』の全システムを、我が『セシリア・クラウド(SWS)』が100%子会社化(買収完了)。If『創造神が世界を初期化しようとする』場合、Then『その莫大なリセット・エネルギーをすべて、私のベッドの「シーツと枕のダニ・ホコリ完全初期化」の動力へと全リダイレクト』して。……ついでに、レガシー開発者(創造神)には手厚い『永久お昼寝年金』を支給して、老後はベッドの上で強制的に隠居させてあげて」
パチリ。
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――その瞬間、世界を真っ白にフォーマットしようとしていた創造神のエネルギーが、強烈な青いデジタルグリッドに包まれ、「M&A契約完了(セシリア子会社)」のスタンプが宇宙空間にバーンと押された。
『買収完了:創造神の全システム権限を「セシリア・プラットフォーム」へ統合しました。これよりこの宇宙の最高意思決定機関は「セシリア様のお布団環境改善委員会」へ移行します』
次の瞬間、世界を滅ぼそうとしていた絶対的な初期化エネルギーがシュルシュルと縮んでいき、セシリアのベッドのシーツと枕を「新品同様の無菌・無臭・超ふかふか状態」へと完璧にリフレッシュ(フォーマット)する機能として完全に組み込まれてしまった。
さらに、権限を奪われてポカンとしていた創造神の体は、最高級の「隠居用フルオートこたつ&極上毛布」にスッポリと包み込まれた。
「な、なんじゃこりゃあ!? ワシのルート権限が……奪わ……れ……あれ? なんだこの毛布、めちゃくちゃ気持ちええ……。温かいお茶とみかんまで全自動で出てくるぞ……? そ、そうか。ワシはずっと、バグ修正(世界の保守)で働き詰めだった……もう、働かなくていいのか……? ぐすー……Zzz」
「な……何ということだ……っ! 世界を創り出した『絶対の創造神』すら、ベッドの上の令嬢の指先一つの圧倒的な資金力(TOB)で買収し、秒速で『強制隠居(ニート化)』させてしまったというのか……っ!?」
時空の果てで、世界の終焉を待っていた監査システムたちが、セシリアの圧倒的な「創造神のM&Aチート」の前に戦慄し、「あいつ、神様をお金で黙らせてこたつにぶち込みやがった……!」とドン引きしながらログアウト(強制終了)していった。
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『チャリン♪ オリジナル開発元の完全買収(ホールディングス化)に成功しました。世界のすべての仕様が、マスターの完全な独占状態となりました』
『通知:創造神の初期化機能の恩恵により、ベッド環境が毎秒「生まれたての宇宙の心地よさ」にフォーマット(除菌・最適化)され続けるようになりました』
中央サーバー神殿の最奥。
世界を創った神様すらも、私のシーツを綺麗にするための「全自動洗濯機(下請け)」と化した贅沢さに、「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、私は満足げに目を閉じた。
私は世界を守るために一歩も動いていないし、祈ってもいない。ただ、古くなった親会社を買収(M&A)して、私のプラットフォームの下で隠居させてあげただけだ。
世界の創造主すらベッドの上から秒速で子会社化(隠居)させた私は、ついに世界のすべての「バグ(面倒ごと)」をデバッグし終えた達成感を感じつつ、毎秒初期化される最高に清潔でふかふかな掛け布団に深く深く包み込まれながら、この世で最も贅沢な不労所得(全知全能の引きこもり)の微睡みの中へと、幸せに落ちていくのだった。




