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追放令嬢の自動売買(トレーディング・マジック)  作者: リリリリス


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第34話 【空間の仮想化】移動が不要になりすぎて「距離」の概念が崩壊し、全宇宙が自室に融合してきたので、仕様変更(ルーティング)してみた

「セ、セセセ、セシリア様ぁぁぁっ! 新たな概念レベルの大バグが発生しました! 我々の全自動物流システムが完璧に稼働し、どんな物資も『0秒(遅延ゼロ)』で届くようになった結果、世界を構成する物理エンジンが『移動に時間がかからないなら、距離や空間という概念自体がリソースの無駄(不要)』と誤認! 全宇宙のあらゆる座標が、この中央サーバー神殿のセシリア様のベッドルームに向かって物理的に融合フュージョンしてこようとしています!」


中央サーバー神殿の最奥。

システム統括補佐のシリルが、今や空間の歪みでぐにゃぐにゃに曲がった魔導ディスプレイに向かって、もはや指先の摩擦でソニックブーム(衝撃波)を発生させながら絶叫した。


空中ウィンドウを開くまでもなく、私のベッドルームの壁をすり抜けて、暗黒大陸の巨大な山脈や、神界の神殿、果ては銀河の果ての星雲のポリゴン(物理オブジェクト)が、バグった3Dゲームのようにガクガクと音を立てながら部屋の中にめり込んできている。


『致命的な警告:空間座標の崩壊シンギュラリティを検知。あと数分で、全宇宙の全質量がこのベッドルームの1点に収束し、超巨大なブラックホール(処理落ち)が発生します』


「……ふあぁ。シリル、ちょうどお昼寝の体勢が決まったところなのに、部屋の景観(UI)をごちゃごちゃさせないで。全宇宙が私のベッドに集まってくるのは慕われている証拠かもしれないけれど、引きこもりの部屋に他人が勝手に上がり込んでくるなんて、プライバシーの保護(セキュリティ設定)が甘すぎるのよ」


私は幻の魔導天糸の最高級毛布に深く深く包まり、自動化ゴーレムに冷やした最高級の『特製マナ・ライチの粉雪ソルベ』をスプーンで口元まで運んでもらいながら、とろとろの眠気眼のまま、人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。


「セシリア様、そんな悠長なことを言っている場合ではありません! あと数十秒で、太陽サイズの恒星がベッドの足元に物理ポップ(出現)してしまいます! 我が方のゴーレムを総動員して、星々を物理的に押し返しますか!?」


「シリル、だからそんな肉体労働(物理演算)は、システムのCPUを無駄に消費するだけよ。距離がゼロになったからって、物理的な質量まで一つにまとめるなんて、データとハードウェアを切り離せない古いモノリスレガシーの設計思想ね。物理的な空間が邪魔なら、全宇宙の座標を『仮想化ネットワーク(SDN)』として仕様変更して、都合のいいデータだけをストリーミング受信してあげればいいのよ。引きこもりの真の完成形はね、全宇宙の広大さを楽しみつつ、自分のパーソナルスペースには1ミリのノイズも入れない環境のことよ」


私は、全宇宙の物理座標を管理している空間プロトコルの根幹に一瞬でアクセスし、そのルーティング(経路)設定を人指し指ひとつで上書き(デプロイ)した。


「仕様変更(パッチ適用):『全宇宙の物理空間』を、我がプラットフォームの『完全仮想化コンテナ(VR空間)』へと強制マイグレーション。If『外部のオブジェクトが私のベッドに融合しようとする』場合、Then『物理質量はバックグラウンドのクラウドストレージに隔離ホスティングし、私に心地よい景色やそよ風のデータ(恩恵)だけをAPI経由で出力』して。……ついでに、余った空間のエネルギーで、私のベッドの『足を伸ばせるスペース』を無限大に拡張オートスケーリングね」


パチリ。


---


――その瞬間、部屋にめり込んできていた全宇宙の山々や星々が、セシリアの鮮やかな青いデジタルグリッドによってバチバチッと透過され、ただの美しいホログラム(背景画像)へと変換された。


『仮想化完了:全宇宙の空間を「セシリア・ルーティングAPI」の管理下に置きました。これより物理的な距離の概念は消滅し、全宇宙の環境はマスターの気分に合わせて「窓の外の景色(壁紙)」としてのみ安全にストリーミング配信されます』


次の瞬間、圧死しかけていたベッドルームは元の静寂を取り戻し、代わりに窓の外には、暗黒大陸の絶景や神界のオーロラが、まるで高級ホテルのスイートルームの景色のように、私が一番リラックスできるアングルで美しく表示され始めた。

空間を圧縮しようとしていた莫大な特異点エネルギーは、シュルシュルと縮んでいき、セシリアのベッドの「マットレスの内部空間を四次元的に拡張し、どんなに寝返りを打っても絶対に落ちない無限の寝心地領域」として組み込まれてしまった。


「な……何ということだ……っ! 全宇宙の物理的な『空間の崩壊』すら、ベッドの上の令嬢の指先一つのコードで、秒速でご自身の『極上のプロジェクションマッピング(壁紙)』に変えてしまったというのか……っ!?」


時空の果てで、世界の圧縮による終焉を待っていた次元の神々が、セシリアのシステムの圧倒的な「空間の仮想化チート」の前に戦慄し、「あいつ、宇宙そのものをただのデジタルフォトフレームにしやがった……!」と絶望しながらログアウト(強制終了)していった。


---


『チャリン♪ 宇宙空間の自社ネットワークルーティングに成功しました。空間利用の通信費として、多次元宇宙から不労所得が自動入金されています』

『通知:空間仮想化の恩恵により、ベッドの中が四次元構造にアップデートされ、「足がはみ出ない」「掛け布団が絶対にズレない」という至高の睡眠空間が永久固定されました』


中央サーバー神殿の最奥。

宇宙の空間そのものが私の睡眠環境を保守するための「下請けAPI」と化した贅沢さに、「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、私は満足げに目を閉じた。


私は世界を押し返すために一歩も動いていないし、壁を補強してもいない。ただ、古くなった空間のシステムを仮想化して、私のプラットフォームの下に繋いだだけだ。

空間の概念すらベッドの上から秒速で自社ネットワーク(SDN)に変えた私は、次はどの次元の概念を自動化しようかと考えつつ、四次元的に拡張された無限の最高級掛け布団に深く深く包み込まれながら、この世で最も贅沢な不労所得(全宇宙のスイートルーム化)の微睡みの中へと、幸せに落ちていくのだった――。

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