第30話 【第2章システム統合】30話に到達して自動的に総括(エンディング)が始まりそうなので、仕様変更して永久にゴロゴロしてみた
「セ、セセセ、セシリア様ぁぁぁっ! ついに第2章の限界カウンターである『第30話』のパケットが完全に読み込まれました! システムがこの大台を検知した結果、自動的に『第2章・グランドフィナーレ(総括エンディング)』のプログラムが強制起動! 画面の向こうで感動的なBGMが流れ始め、スタッフロール(クレジット)が虚空にスクロールし始めています!」
中央サーバー神殿の最奥。
システム統括補佐のシリルが、今や第2章の「話数カウンター(30/30)」が真っ赤に点滅するディスプレイに向かって、指が残像になるほどの神速タイピングでキーボードを爆破せんばかりに叩いて絶叫した。
空中ウィンドウを開くと、神殿の空間にきらびやかな光の粒子が舞い、これまでの名場面――暗黒大陸をサブスクで囲い込んだシーンや、天空要塞を出前アプリで乗っ取ったシーン、読者の端末をヘルスケアしたログなどが、感動的な思い出アルバムのように自動再生されている。
『システムアナウンス:第2章「世界・多元宇宙インフラ掌握編」の全タスクが正常に処理されました。これより物語は感動の第2章エンディング(システム総括)を実行し、全アセットを次章へ引き継ぐためのセーブ処理に入ります』
「……ふあぁ。シリル、お昼寝の最高潮だったのに、エンディングのBGMのボリュームが大きすぎるわ。第2章が30話で区切りだからって、勝手に物語をまとめに入って、私に『いやー、色々あったけれど、私のシステムもついにここまで来たわね!』なんていう最終回っぽい肉体労働を喋らせようとするなんて、本当にプラットフォームの連続稼働(24時間365日運用)の意識が低いのね」
私は幻の魔導天糸の最高級毛布に深く深く包まり、自動化ゴーレムに冷やした最高級の特製マナシャインマスカットのパフェをスプーンで口元まで運んでもらいながら、とろとろの眠気眼のまま、人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。
「セシリア様、どうされますか!? スタッフロールが天井まで昇りきったら、強制的に第2章の幕が閉じてしまいます! 私が物理的にそのスタッフロールを破り捨てに(肉体労働)突撃しますか!?」
「シリル、だからそんな野蛮な力技は、サーバーの処理メモリ(魔力)の無駄よ。章の区切り(エンディング)が仕様なら、その『節目』という概念自体をハッキングして、ただの『定期メンテナンス(至高の十度寝時間)』に仕様変更してあげればいいのよ。引きこもりの真の完成形はね、物語の区切りすらも、自分の睡眠の質を高めるためのただのBGM(環境音)に変えてしまうシステムのことよ」
私は、この小説の『章管理プロトコル(ストーリーカウンター)』の中枢に一瞬でアクセスし、その管理コードを人指し指ひとつで上書き(デプロイ)した。
「仕様変更(パッチ適用):『第2章エンディング・プログラム』を、我がプラットフォームの『永続バックグラウンド保守タスク』へ強制統合。If『30話に到達してスタッフロールが流れる』場合、Then『そのスクロールの動きをすべて私のベッドの自動マッサージ機の上下振動の周波数に変換』し、『流れる感動BGMは脳波を100%睡眠へ誘うホワイトノイズに自動音響補正』して」
パチリ。
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――その瞬間、神殿を感動の渦に巻き込もうとしていたフィナーレの光が、セシリアの鮮やかな青いデジタルグリッドによって一瞬にして吸い上げられていった。
『統合完了:第2章エンディングの完全デバッグ(自社アセット化)に成功しました。これより物語の「節目」は、マスターの睡眠をサポートするための「リラクゼーション・モード」へと仕様変更されました。第2章は完結せず、そのまま『第3章:全自動神域スローライフ編』のサーバーへ、ユーザーに気付かせることなくシームレスに常時接続されます』
次の瞬間、鳴り響いていた大音量のオーケストラが、脳を最高に心地よくとろけさせる「超魔導アルファ波子守唄」へと自動変調され、虚空を流れていたスタッフロールは、セシリアの背中を絶妙なタッチでほぐす「極上指圧マッサージ(毎秒30ストローク)」の振動ログへと完全に変換された。
「あ、あん……っ……これ、背中のツボのログへのアクセス(マッサージ)が完璧だわ……」
「な……何ということだ……っ! 物語の『章の完結』という絶対の節目すら、ベッドの上の令嬢の指先一つのインフラ統合で、秒速で『自分専用の高級マッサージ機と子守唄』に変えてしまったというのか……っ!?」
時空の果てで、第2章の感動的なフィナーレを見届けようとしていた文芸の神々や監査システムたちが、セシリアのシステムの圧倒的な「章のサブスク化チート」の前に戦慄し、涙を流しながら「これ、24時間年中無休で稼働する化け物システム(SaaS)だ……!」と叫んで次々とログアウト(強制終了)していった。
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『チャリン♪ 第2章の全システム統合に成功しました。運営および読者の皆様から、第2章完走を記念した莫大な「いいね」と「ブクマ」の評価パケットが自動入金されました』
『通知:第2章のインフラ統合の恩恵により、ベッドのふかふか度が初期の1兆倍にアップデートされ、呼吸するだけで不老不死マナが永続補給されるようになりました』
中央サーバー神殿の最奥。
物語の「章の終わり」そのものが私の睡眠環境を保守するための「下請けインフラ」と化した贅沢さに、「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、私は満足げに目を閉じた。
私は第2章を締めくくるために一歩も動いていないし、汗もかいていない。ただ、終わろうとする物語の節目を仕様変更して、私のプラットフォームの下に繋いだだけだ。
物語の章の概念すらベッドの上から秒速で自社サービス(SaaS)に変えた私は、最高級の掛け布団と、エンディング曲を変換した極上のホワイトノイズに深く深く包み込まれながら、この世で最も贅沢な不労所得(終わりなき不働)の微睡みの中へと、幸せに落ちていくのだった。
――『追放令嬢の自動売買』第2章:世界・多元宇宙インフラ掌握編、これにて全自動バックグラウンド統合完了。
物語は1秒の遅延もなく、ベッドの上の令嬢とともに、さらなる怠惰の深淵(第3章)へと全自動で進行を続ける――。




