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追放令嬢の自動売買(トレーディング・マジック)  作者: リリリリス


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第27話 【エントロピー制御】時間の経過で寿命が減るのがメンドくさいので、世界の経年劣化を自動修復(リフレッシュ)してみた

「セ、セセセ、セシリア様ぁぁぁっ! システムの稼働時間が限界(ログの長期蓄積)に達した結果、ついにこの世界を構成する物理法則の根底――『時間エントロピー(宇宙の寿命)』の減少が検知されました! このまま時間が経過すると、全宇宙の物質が経年劣化(老化・風化)のバグを起こし、セシリア様のベッドのシーツすらも数万年後にはボロボロに磨り減ってしまいます!」


中央サーバー神殿の最奥。

シリルが今や、宇宙の寿命カウントダウン(残りの秒数)がリアルタイムで減っていく魔導ディスプレイに向かって、もはや光速に近いタイピングでキーボードを爆叩きしながら絶叫した。


空中ウィンドウを開くと、神殿の周囲にある山々や、星々の輝きが、時間の経過とともにほんの僅かずつ「風化(劣化)」のノイズを起こしているログが見える。


『通知:時間の経過によるマナのエントロピー増大を検知。オブジェクトの「老衰」および「風化」のバグが毎秒進行しています』


「……ふあぁ。シリル、お昼寝の夢の途中で、またそんなスケールの大きなアラートを出さないで。時間の経過で物がいちいち古くなったり、人間の細胞が劣化(老化)して寿命を迎えるなんて、本当に生命のソースコード(DNA)の耐久設計の仕様が甘すぎるのよ」


私は幻の魔導天糸の最高級毛布に包まり、自動化ゴーレムに冷やした最高級の特製マナ桃ジュースをストローで口元まで運んでもらいながら、とろとろの眠気眼のまま、人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。


「セシリア様、どうされますか!? 時間の流れを物理的に止める(タイムストップ)魔法を実行しますか!? しかし、それではセシリア様のおやつを食べる時間プロセスまでフリーズしてしまいます!」


「シリル、だから時間を止めるなんて、サーバーのクロック周波数(演算リソース)の無駄よ。時間が流れるのが仕様なら、流れた後に発生する『劣化バグ』の方を、バックグラウンドで全自動で修復ガーベジコレクションしてあげればいいのよ。引きこもりの究極の完成形はね、何もしなくても、自分も世界も永遠に一番快適な状態(不老不死)でループし続ける環境のことよ」


私は、全宇宙の物質に刻まれている時間のベクトル(エントロピーの因果律コード)に一瞬でアクセスし、その修復プロトコルを人指し指ひとつで上書き(デプロイ)した。


「仕様変更(パッチ適用):『全宇宙の時間軸』に、我がプラットフォームの『全自動リフレッシュ・マクロ』を適用。If『物質や細胞が1秒経過して劣化(エントロピー増大)』した場合、Then『自動的にそのオブジェクトのステータスを、最も健康で新品だった状態(初期キャッシュ)へ全自動でロールバック(巻き戻し)』して。……ついでに、私のベッドの毛布のふかふか度も、毎秒新品(0日目)の状態にリセットね」


パチリ。


――その瞬間、全宇宙の目に見えない「時間の歯車」に、セシリアの鮮やかな青いデジタルグリッドがカチリと噛み合わされた。


『リフレッシュ完了:世界の全エントロピーを「自動修復ガーベジコレクション」の管理下に置きました。これより全宇宙の生命、物質、および環境は、経年劣化のバグ(老衰・風化)を完全に克服し、永久に最適な状態(不老不死)に固定されました』


次の瞬間、ほんの僅かに風化しかけていた神殿の壁や、地上の木々、そして全人類の肉体細胞が、一瞬にして最も若々しく健康的だった頃の輝きを取り戻していく。


世界を滅ぼそうとしていた「寿命(時間の経過)」という絶対的な物理負荷エネルギーが、シュルシュルと縮んでいき、セシリアのベッドの「掛け布団の繊維を毎秒100%新品の肌触りにリフレッシュする自動洗濯魔法」の余剰エネルギーとして、ただの無料のバックグラウンド処理に組み込まれてしまった。


「な……何ということだ……っ! 生物の絶対の限界である『寿命(老化)』すら、ベッドの上の令嬢の指先一つのコードで、秒速で自動ロールバック(不老不死化)されたというのか……っ!?」


時空の果てで、生物の寿命が尽きるのを待っていた死の神々(監査システム)が、セシリアのシステムの圧倒的な「仕様変更チート」の前にパニックを起こし、次々と回線を切断ログアウトしていった。


『チャリン♪ 世界の不老不死化(サステナブル化)に成功しました。全人類から「永久延命サブスク」の利用料が自動入金されました』


『通知:エントロピー制御の恩恵により、ベッドのシーツの肌触りが、毎秒「工場出荷時の最高クオリティ」に自動更新され続けるようになりました』


中央サーバー神殿の最奥。


「時間」そのものが私の睡眠環境を保守するための「下請け」と化した贅沢さに、「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、私は満足げに目を閉じた。


私は自分の寿命を延ばすために一歩も動いていないし、老いの恐怖に怯えてもいない。ただ、世界の経年劣化というシステムの隙間を修正して、私のプラットフォームの下に繋いだだけだ。


時間のルールすらベッドの上から秒速で自社サービス(SaaS)に変えた私は、次はどの次元の概念を自動化しようかと考えつつ、最高級の掛け布団(毎秒新品)に深く深く包み込まれながら、この世で最も贅沢な不労所得(不老不死ライフ)の微睡みの中へと、幸せに落ちていくのだった――。

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