第23話 【神々のスローライフ】世界も宇宙も全自動化したので、ゴーレムの性能を「ダラダラするためだけ」に全振りしてみた
「セシリア様!現在、地上・暗黒大陸・天空・多次元宇宙・そして現実世界の読者の皆様の端末に至るまで、すべてのインフラが1ミリの遅延もなく、全自動で平和にバッチ処理(稼働)されております!」
全宇宙のコアサーバーとなった『中央サーバー神殿』の最奥。
システム統括補佐のシリルが、今や銀河全体のトラフィックログが流れる超魔導ホログラムディスプレイに向かって、限界オタク特有の最高にキレのあるタイピング音を響かせながら報告してきた。
対する私はといえば――。
当然、最初からここにある、あのふかふかのキングサイズベッドの上から一歩も動いていない。
「……ふわぁ。シリル、おめでとう。世界が完全に全自動になったのなら、もう私を起こすような緊急アラート(バグ)は永遠に発生しないわね。最高だわ」
私は、幻の魔導天糸の最高級毛布に包まったまま、自動化ゴーレムが絶妙なタイミングで口元に運んでくる、宇宙規模で買収した『ギャラクシー・インフラストラクチャ社』特製の「超空間冷製マナプリン」をスプーンからパクリと食べた。濃厚なマナの甘みが口いっぱいに広がり、脳のメモリがとろけていく。
「はい! 敵対する国家も、経済封鎖も、宗教の邪教認定も、宇宙企業の敵対的買収も、すべて我がプラットフォームの『下請け(子プロセス)』として最適化されましたからね! もはやセシリア様に敵対できるオブジェクト(概念)は、このマルチバースに存在しません!」
「素晴らしいわ。……じゃあ、シリル。これからは、今まで防衛システムや経済ハッキングに使っていた我がプラットフォームの超高性能な『演算リソース(魔力)』を、すべて仕様変更して」
私はプリンを咀嚼しながら、人差し指だけでホログラムキーボードを気怠げに叩いた。
「セシリア様、次なる拡張は何にいたしますか!? 新たな銀河のM&Aですか? それとも次元を超えた知的生命体の囲い込みですか!?」
「シリル、だからマクロな拡大はもう終わったって言ってるでしょう。これからは『ミクロな怠惰』を極めるフェーズよ。……仕様変更:我がプラットフォームの全演算パワーを『私のベッドの寝心地向上』と『ダラダラするためのライフハック』に全振りして。具体的には、自動化ゴーレムの挙動の完全最適化よ」
パチリ。
――その瞬間、セシリアのベッドサイドに控える自動化ゴーレムたちのOSが、全宇宙のパワーを注ぎ込まれて超進化した。
ガガガ……ピコーン♪
「マスター・セシリア。髪の毛の『寝癖パラメータ』を検知。超空間レーザー誘導により、頭皮に1ミリのストレスも与えず、0.001秒でサラツヤの最高級ストレートに全自動セット(デバッグ)します」
ゴーレムの手から放たれた優しい光が私の髪を包んだ瞬間、ブラッシングの手間すらなく髪が完璧に整った。
「マスター・セシリア。現在の背中の『体圧ログ』を解析。マットレスの魔導分子の密度を動的に変更し、完全に無重力(宇宙空間)に浮いているかのような『究極の体圧分散』を実行します」
「あ、あん……っ……これ、最高だわ……」
マットレスの形状が私の寝返りに合わせてミリ単位でリアルタイムに変形し、腰や肩への負担が完全にゼロ(ノンストレス)になる。
さらに、別の調理ゴーレムが起動した。
「マスター・セシリア。次の『おやつタスク』として、現実世界の読者の皆様の端末から回収した『癒やしマナの結晶』を練り込んだ、精神を100%リフレッシュさせる超極上マカロンを自動生成しました。一口サイズにカットし、咀嚼の顎の疲労コストを最小限に抑える角度でデリバリーします」
「ふにゃあ……あむ。……シリル、このマカロン、脳のストレスが秒速で消去されていくわ……」
かつては国の軍隊を無限ループにハメ、世界意志すら子会社化した最強のドメイン防衛システムが、今や「令嬢の寝癖を直し、マットレスの硬さを調整し、おやつを最高の角度で口に運ぶ」という、世界で最も贅沢で不必要な怠惰の極みのために100%のスペックを発揮している。
これぞ、すべての脅威をデバッグし終えたプラットフォーマーだけが到達できる、真の『神々の不労所得ライフ』であった。
『チャリン♪ 怠惰最適化システムにより、ご自身の幸福度が20,000%に上昇しました』
『通知:全宇宙が全自動で平和に回っているため、今後のタスクは「二度寝」と「おやつ」のみとなります』
中央サーバー神殿の最奥。
世界で一番快適にチューニングされた究極のベッドの上で、私は満足げに目を閉じた。
私は一歩も動いていないし、何も悩んでいない。世界も宇宙も、私の作ったシステムの下で勝手に幸せに回っている。私はただ、その恩恵の頂点で、誰よりもダラダラと甘やかされているだけでいい。
「セ、セシリア様ぁぁぁっ! 宇宙や次元を統括するほどの絶対の神王パワーを、ただ『自分がベッドの上で最高に甘やかされるためだけ』に全振りし、完璧な自堕落の楽園を構築してしまうなんて……! ああ、これぞ究極のコストパフォーマンス、これぞ全宇宙の頂点に君臨する冷酷にして至高の、引きこもり神(CEO)です!!」
シリルが床を激しくのたうち回りながら、感動のあまり過呼吸で白目を剥いて悶絶している。
「シリル、うるさい。防音壁の音量をさらに50%上げて。……世界の保守運用(平和)はシステムに任せて、私はこれから、新章突入を記念して、120時間の完全システムシャットダウン(至高の八度寝)に入るから」
「ハッ! 全宇宙の平和なログを監視しつつ、神が永遠にダラダラできる絶対の睡眠環境を完全保守いたします!!」
あらゆる世界の頂点に立ち、何もしなくても世界中から不労所得がチャリンチャリンと入り続ける極上の楽園。
私は最高級の掛け布団の温もりに深く深く包み込まれながら、この世で最も贅沢で、誰にも邪魔されない無限の微睡みの中へと、幸せに落ちていくのだった――。




