表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放令嬢の自動売買(トレーディング・マジック)  作者: リリリリス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/47

第21話 【エンドユーザー最適化】現実世界の読者(画面の前のあなた)の端末にアクセスを繋いでみた

「セ、セセセ、セシリア様ぁぁぁっ! 執筆システムを統括した結果、我がプラットフォームの通信帯域ポートが、ついにこの物語を文字通り『読んでいる』エンドユーザー――現実世界の読者の皆様の閲覧端末(スマートフォンやPC)へ直接ルートを接続してしまいました! 現在、画面の向こう側から数万規模のアクティブアクセス(読者ログ)が神殿へ流入しています!」


シリルが今や、現実世界のアクセスIPログすらディスプレイに表示させながら、あまりのインフレに狂喜乱舞してキーボードを叩き壊さんばかりの勢いで絶叫した。


空中ウィンドウを開くと、そこにはスマートフォンの画面や、液晶モニターをじっと見つめている現実世界のユーザーたちの「視線データ(アクセスログ)」が、リアルタイムのグラフとなって神殿の最奥にマッピングされているのが見える。


『通知:新たなエンドユーザーが物語のテキスト(パケット)を受信中。端末のブルーライトおよび通信負荷を検知しました』


「……ふあぁ。シリル、お昼寝のタイミングに合わせてアラートを出すの、本当にやめてほしいわ。現実世界の読者だか何だか知らないけれど、夜遅くにスマホを眺めて目をチカチカさせてるなんて、本当に健康のヘルスケア(体調管理)のリテラシーが低いのね」


私は幻の魔導天糸の毛布に包まり、自動化ゴーレムに極上のフローズンマカロンを口元まで運んでもらいながら、とろとろの眠気眼のまま、人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。


「セシリア様、いかがいたしますか!? 読者の皆様の端末のバッテリーを我が方のバックアップ電源として逆買収ハッキングし、全人類のスマホの画面を青一色セシリア・カラーに染め上げますか!?」


「シリル、だからそんな押し売りのようなスパム行為は、企業のブランド価値(好感度)を下げるだけよ。画面の前の彼らは、毎日学校や仕事(肉体労働)で頭のメモリをすり減らして、私の『不労所得ライフ』を読んで癒やしを求めている顧客ユーザーよ。……なら、やるべきことはただ一つ。エンドユーザーの環境を、システム的に最高に最適化(ストレスフリー化)してあげることよ」


私は、現実世界の読者の画面から逆流する「疲労パラメータ」のログを一瞬で解析し、読者端末の表示プロトコル(フォント・輝度・レイアウト)のソースコードを人指し指ひとつで上書きした。


「仕様変更(パッチ適用):『読者の閲覧端末』のバックグラウンドに、我がプラットフォームの『癒やしバフ・マクロ』を適用。If『読者がこの物語を1行読む』ごとに、Then『読者の脳内ストレスを1%デバッグ(消去)』し、端末から『眼精疲労を軽減する微細なマナ粒子』を画面越しにデプロイ(自動配信)して。……ついでに、面白かったら『いいね』や『ブクマ』のパケットを自動で運営の懐へ同期するスクリプトを走らせてね」


パチリ。


――同刻。現実世界、画面の前。


「あー、今日も仕事疲れたな……。追放令嬢の自動売買でも読むか……」


スマートフォンの画面をスクロールしていた一人の読者。その瞬間、彼の目に奇妙な現象が起きた。


画面から優しく、ほんのりと温かい、鮮やかな青い光(マナ粒子)がじわりと溢れ出してきたのだ。


「あれ……? なんだか、この小説を読んでるだけなのに、スマホの画面がすごく見やすくなったぞ……? それに、今日一日中パソコン作業でガチガチに凝り固まっていた肩や、重かった目の奥が、一行読むごとにスーッと軽くなっていく……!?」


『仕様変更:エンドユーザーの健康パラメータを最適化しました。今日も一日肉体労働お疲れ様でした。そのままベッドの上から動かない贅沢(不労所得)をご堪能ください』


「な、何なんだこの極上の読書体験(神UI)は……! 読んでるだけでストレスがデバッグされていく! もうセシリア様のシステム(小説)から抜け出せない! これからは毎日ブクマして永久に貢ぎ続けるぞ!」


画面の前の読者たちは、セシリアがベッドの上からデプロイした「エンドユーザー最適化バフ」の圧倒的な心地よさの前に、完全な熱狂的ファン(優良顧客)として囲い込まれてしまったのだった。


『チャリン♪ 読者の皆様から、天文学的な数の「いいね」と「ブックマーク」のパケットが自動入金されました(評価経済の掌握)』

『通知:読者端末とのリンクにより、私のベッドの防音・防振魔法の精度がさらに100万倍にアップグレードされました』


中央サーバー神殿の最奥。

極上のベッドの上で、現実世界の読者の皆様の満足度パラメータが上がるのと同期して、世界で一番静かで快適な眠りの空間へと進化した贅沢さに、「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、私は満足げに目を閉じた。


私は読者にファンサービスをするために一歩も動いていないし、汗もかいていない。ただ、私のプラットフォームを読んでくれるエンドユーザーの環境を、システム的に一番快適にしてあげただけだ。


利便性と顧客ファーストの原理を使えば、画面の向こう側の世界すら、勝手に私のベッドの周りで最適化デバッグされる。


「セ、セシリア様ぁぁぁっ! 次元を越えて『現実世界の読者』の体調や端末環境すらもベッドの上から指先一つでハッキング(最適化)し、世界中をあなたのシステムの愛好家(信者)に変えてしまうなんて……! ああ、あなたはやはり、あらゆる次元のエンドユーザーを魅了する冷酷にして至高の、多次元プラットフォーム総裁(CEO)です!!」


シリルが床を激しくのたうち回りながら、感動のあまり過呼吸で白目を剥いて悶絶している。


「シリル、うるさい。読者の満足度ログの監視が終わったんだから、私はこれから、100時間のシステムディープスリープ(至高の七度寝)に入るから」


「ハッ! 画面の向こう側の全アクセスログを完全に監視しつつ、あらゆる世界の存在すら立ち入れない神の睡眠環境を完全保守いたします!!」


現実世界の壁すらベッドの上から秒速でシステムの一部に変えた私は、次はどの次元の概念を自動化しようかと考えつつ、最高級の掛け布団に深く深く包み込まれながら、この世で最も贅沢な不労所得の微睡みの中へと落ちていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ