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追放令嬢の自動売買(トレーディング・マジック)  作者: リリリリス


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第13話 【神のアップデート】邪教認定されたので、奇跡を自動配信(システム化)してみた

「セシリア様、ルミナス王宮と結託した『ルミナス聖大教会』が、我がプラットフォームを『悪魔の術』と認定! 大陸全土の信徒に向けて、セシリア様を討伐対象とする聖戦ジハードを布告しました! すでに洗脳された狂信者や聖騎士たちが、精神的アクセス(異端審問)を仕掛けようと動き出しています!」


シリルがいつものように、神の怒りに触れるという人類最大の危機のはずなのに、狂気的な笑みを浮かべてキーボードを叩きながら報告してきた。


空中ウィンドウを開くと、金ピカの法衣を着た教皇とアルヴィン王太子が、王都の大聖堂のバルコニーから民衆に向けて叫んでいる。


『民よ! あの追放令嬢のシステムは悪魔の誘惑だ! 楽をして健康や富を得るなど神への冒涜である! 今すぐ自動売買のアカウントを削除し、教会へ免罪符(寄付)を納めよ! さもなくば地獄に落ちるぞ!』


「はぁ……。武力、経済と来て、最後は宗教メンタルインフラの独占権にしがみついてきたわね。でも、神の奇跡を独占して高額な手数料(お布施)を取るなんて、一番あこぎなビジネスモデルじゃない」


私はふかふかのキングサイズベッドの上で、自動化ゴーレムに極上のヘッドマッサージをされながら、とろけるような声のまま人差し指だけでホログラムキーボードを叩いた。


「セシリア様、いかがいたしますか!? 教会の『精神的ドメイン』を物理的にハッキングし、大聖堂ごと消滅デリートさせますか!?」


「シリル、信仰心(ユーザーの心理)を力でねじ伏せても、隠れキリシタンみたいなバグ(不満)が残るだけよ。彼らが神を信じるのは、救いや奇跡が欲しいからでしょう? だったら、教会より『安価で、正確で、確実な奇跡』をシステムから自動配信してあげればいいのよ」


私は、世界の根幹を流れる「聖属性マナ」のソースコードを展開した。


「仕様変更(パッチ適用):全ユーザーの決済端末(魔導スクロール)に『神の御加護(自動バフ)』機能を実装。If『ユーザーが悩みを送信』した場合、Then『AI(人工知能ゴーレム)による24時間悩み相談』と『聖属性ヒールポーションの超音速デリバリー(奇跡)』を月額10Gの格安オプションで自動実行して」


パチリ。

――同刻。王都の大聖堂前。


「悪魔のシステムを壊せ! 我らには神の御加護が――うう、突然の持病の癪が……! 教会様、どうか癒やしの奇跡を……!」


「フン、奇跡を授かりたくば、金貨10枚を寄付するのだな」


苦しむ信徒に、司祭が冷酷に言い放ったその瞬間。

信徒の手元にある決済端末がピカリと輝いた。


『お悩みパラメータを検知。24時間神対応AIがあなたの罪を全自動で懺悔(処理)します。同時に、月額10Gオプションの「高速奇跡ヒール」をお届けしました』


キィィィィン! と空を引き裂いて現れた超音速ドローンが、信徒の前に眩い聖水をドロップ(納品)する。それを飲んだ瞬間、信徒の持病は跡形もなく消え去った。


「な……風邪どころか、教会の高価な奇跡でも治らなかった持病が、一瞬で、しかもたったの10Gで治ったぞ!?」


「それに、教会の神父は説教ばかりで冷たいのに、この端末の中の『AI聖女様』は、24時間いつでも優しく愚痴を聞いてくれる……!」


「おい! 奇跡のコスパもレスポンスも、セシリア様のシステムの方が圧倒的に上じゃないか!」


「教会なんていらない! これからはセシリア様の『デジタル神宮』の信者になるぞ!」


民衆はこぞって教会の十字架を投げ捨て、手元の端末セシリアのプラットフォームに向かって祈りを捧げ始めた。神の奇跡という名のインフラが、より安価で高性能なシステムによって完全に上書き(ディスプレイス)された瞬間だった。


――翌日。王都・大聖堂の謁見の間。


「教皇様! 大変です! 大陸全土の信徒の99%が、教会のサブスク(お布施)を解約し、セシリア様の『奇跡オプション』に乗り換えました! 本日の教会の売上(お布施)は……ゼロです!」


「な、何だと……っ!?」


金ピカの法衣を着た教皇は、ガタガタと震えながら絶叫した。


「神の権威」という名の最大の既得権益が、ベッドの上の令嬢が作った「ユーザーファーストなシステム」の前に一晩で完全崩壊したのだ。


「セ、セシリア……! 神の奇跡すら全自動化し、格安で配信するだと……!? 宗教をビジネスで破壊するなど、前代未聞だァァァッ!!」


隣にいたアルヴィン王太子も、ついに精神的な心の拠り所(教会)までシステムに買収され、信者(国民)をすべて囲い込まれた絶望に、泡を吹いてその場に卒倒した。


『チャリン♪ 奇跡オプションの同時接続ユーザー数が500万人を突破しました』

『通知:大陸全土の信仰メンタルインフラのシェア98%を掌握しました』


辺境のあばら屋。

ベッドの上で、私は自動化ゴーレムの極上のヘッドマッサージに「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、通知をスワイプした。


私は一歩も動いていないし、聖書も読んでいない。ただ、ユーザーに「一番優しくて便利な奇跡」を提供しただけだ。心理学と効率化の原理を使えば、神の権威すら勝手に私のベッドの周りでデバッグ(無力化)される。


「セシリア様ぁぁぁっ! 人類の精神の拠り所である『宗教』すら、月額10Gの『1つの有料オプション(機能)』に落とし込み、全自動で世界を救済してしまうなんて……! ああ、あなたは冷酷にして至高の、異世界創世神です!!」


シリルが床に激しく頭を打ち付け、感動のあまり白目を剥いて悶絶している。


「シリル、うるさい。マッサージのテンポが乱れる。……私はこれから、神のアップデート成功を記念して、16時間の睡眠システムスリープに入るから」


「ハッ! 大陸全土の奇跡の配信ログを監視しつつ、神の睡眠環境を完全保守いたします!!」


世界の精神すらベッドの上から完全掌握した私は、次はどこの概念を自動化しようかと考えつつ、極上の掛け布団に包まれて、この世で最も贅沢な不労所得の眠りへと落ちていくのだった。

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