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追放令嬢の自動売買(トレーディング・マジック)  作者: リリリリス


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第12話 【買収】泣きついた隣国の巨大商会が、一瞬で我がプラットフォームに寝返った件

「セシリア様、ルミナス王宮のアルヴィン王太子が、ついに自力でのサーバー復旧(経済立て直し)を諦め、隣国の巨大商業国家『バルドル帝国』に救援要請アウトソーシングを出した模様です! 帝国最高峰の『大バルドル商会』が、我がソラリス領を経済的に圧殺するため、王都へ進出してきました!」


シリルがいつものように、世界大戦レベルの危機のはずなのに、興奮でキーボードを叩き壊さんばかりの勢いで報告してきた。


空中ウィンドウを開くと、金銀財宝と大量の物資を積んだ、馬車数百台からなる大商隊がルミナス王都の門をくぐる映像がリアルタイムでログ(監視カメラ)に記録されている。


『ふははは! 見ろ、セシリア! 我が国の通貨がダメなら、大陸最強の帝国通貨バルドル・コインと、圧倒的な物資の力で貴様の電子マネーごと握り潰してやるわ!』


王宮のベランダから、アルヴィン王太子が久しぶりに勝ち誇ったような歪んだ笑みを浮かべている。


「はぁ……。自国のインフラが死んだからって、外資(隣国の商会)を呼び込んでホワイトナイトにしようだなんて、経営センスの欠片もないわね。そんなことをしたら、自分たちの主権ごと乗っ取られるに決まってるじゃない」


私はふかふかのキングサイズベッドの上で、自動化ゴーレムに極上の絹の耳かきをさせながら、とろけそうな声のまま指先だけでホログラムキーボードを叩いた。


「セシリア様、いかがいたしますか!? 帝国の物資が王都に流通すると、我が方の『サブスク市場』のシェアが一時的に脅かされる可能性がありますが……」


「シリル、商人が一番求めているのは何かしら? 『利益』と『効率』よ。彼らにとって、馬車を何日も走らせて、関税を払って、手作業で帳簿をつけるアナログな商売(肉体労働)がどれだけコスト高か、教えてあげるだけでいいわ」


私は、バルドル帝国の商会ネットワークに向けて、我がプラットフォームへの『ビジネスアカウント招待リンク(B2Bプロトコル)』一斉送信した。


「仕様変更(パッチ適用):大バルドル商会に対し、我が『自動売買システム』と『導管決済』の全機能を無料開放。If『ソラリス経済圏に加盟』の場合、Then『物流コスト一律99%削減』『決済処理スピード0.001秒』のプラットフォーム利用権を付与して」


パチリ。


――同刻。王都の『大バルドル商会』本陣。


「フン、ルミナス王国を乗っ取るなど造作もない。あの追放令嬢とやらの怪しい電子マネーなど、我が商会の資金力で――」


帝国の誇る豪商、バルドル会長が鼻で笑ったその瞬間。

彼の前に浮かぶ魔導通信機に、セシリアからの『招待コード』がポップアップした。


「な、何だこれは……? 我が商会の在庫データが、一瞬で辺境のシステムに同期インポートされた……!? な、何だこの快適なUI(操作画面)は!?」


会長が震える指で画面をタップすると、その瞬間に奇跡が起きた。


今まで馬車で何日もかけて運んでいた商品が、セシリアの『空中ドローン配送ネットワーク』に自動登録され、一瞬で大陸中の顧客へ自動売買マッチングされ始めたのだ。


さらに、複雑な帳簿付けや、各国の硬貨の不便な両替計算(為替)が、すべて『導管決済ソラリス・マナ』によって一瞬で全自動処理され、会社の口座に天文学的な利益となってチャリンチャリンと振り込まれていく。


「馬車がいらない……!? 検問所の関税も、泥棒の対策コストも、文官の人件費も、すべてゼロ……!! 利益率が従来の……は、800%だと……っ!?」


バルドル会長は、あまりの「圧倒的な業務効率化チート」に、衝撃で椅子から転げ落ちた。


「お、おい! ルミナス王国の救援など今すぐ中止だ! アルヴィンとかいう無能な王子との契約は即座に破棄しろ! 我々はこれより、セシリア様の『終身プラットフォーム・パートナー』となる!!」


帝国の大商会が、王宮に到着してわずか3分で、ベッドの上のセシリアに無条件降伏(完全買収)された瞬間だった。


――翌日。王宮・謁見の間。


「バルドル会長! さあ、早くあの生意気なセシリアを経済的に叩き潰す実務に――」


「うるさいぞ、無能王子」


「……え?」


アルヴィン王太子が期待に満ちた目で声をかけると、バルドル会長は冷酷な目で彼を見下ろした。


「我が大バルドル商会は、本日をもってセシリア様の『ソラリス・グループ』の傘下に入った。ルミナス王国のような経営破綻国家に投資するリソース(資金)など一銭もない。……おい、ここのゴミ屋敷(王宮)の敷地を差し押さえて、セシリア様の『大型ドローン発着場サーバーセンター』に改造するぞ」


「な、ななな……何だとおおおっ!? お前たち、我が国を助けに来たのではないのか!?」


「セシリア様のシステム(楽園)を知った後で、貴様のようなアナログな無能に付き合えるわけがないだろう。身の程を知れ」


アルヴィンは、頼みの綱だった帝国商会にまで見捨てられ、それどころか自分の家(王宮)までシステムに買収されていく絶望に、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。


『チャリン♪ 隣国の最大商会が加盟しました。プラットフォームの時価総額が国家予算の100倍を突破しました』


辺境のあばら屋。

高級ベッドの上で、私は自動化ゴーレムに極上の耳かきをされて「ふにゃあ……」と声を漏らしながら、通知をスワイプした。


私は一歩も動いていないし、交渉の席にすらついていない。ただ、商人に「一番便利なシステム」を提示しただけだ。資本主義の原理を使えば、世界は勝手に私のベッドの周りにひざまずく。


「セシリア様ぁぁぁっ! 隣国の経済大国すら、ただの『1つの加盟店ユーザー』として一瞬で囲い込み、王宮を物理的なドローン置き場に変えてしまう経営工学の魔術……! あなたは冷酷にして至高の、世界経済統括神プラットフォーマーです!!」


シリルが床を激しく転がり回りながら、感動のあまり過呼吸で悶絶している。


「シリル、うるさい。耳かきの邪魔。……私はこれから、買収成功を記念して、14時間のシステムスリープ(爆睡)に入るから」


「ハッ! 世界の経済ログを監視しつつ、神の睡眠環境を完全保守いたします!!」


世界規模の経済すらベッドの上から完全掌握した私は、次はどこの国を加盟店にしようかと考えつつ、ふかふかの枕に顔を埋めて、この世で最も贅沢な不労所得の眠りへと落ちていくのだった。

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