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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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214/215

計算外

 俺達は前線の部隊と合流した後、指揮官のいる場所を確認し、そちらへと進み始めた。悪魔達は――というか、悪魔を指揮する指揮官達はこちらの動きに気付いた様子だったが、魔物の攻撃によって動きを縫い止められており、逃げるなどの対処はできていない様子だった。

 魔物が攻勢を仕掛け、悪魔がその進撃を阻むような戦局へと変化する……これは明らかに俺達の動きに合わせてのことだ。指揮官を仕留めるために、攻勢に出る……リスクの高い勝負ではある。強引な動きであるのは間違いなく、作戦が失敗した場合は不利な状況に陥る危険性が高い。


 つまり、失敗は許されない――


「……いた」


 ヘレナが言う。目標となる指揮官のことであり、彼女が先んじて声を発したのは理由がある。

 その相手は――神族であるためだ。距離はあるが、肉眼でその姿を捉えることができた。金髪かつ黒衣に身を包む男性であり、その手には長剣が握られていた。


 悪魔が大量にいる戦場で、魔力があれ不狂っているような状況ではあるが、この距離まで近づけば、神族の気配は俺にも理解できた。

 そして相手は俺達に気付いた様子――こちらを警戒する素振りを見せた後、剣の切っ先を俺達へ向けた。


 途端、悪魔が殺到する。数で押し込もうとする動きであり、一挙に突き進んでくる悪魔に対し、正面から激突すればかなり面倒なことになる……かもしれないが、


「ヘレナ、いけるか?」

「大丈夫」


 彼女は頷き――同時、俺とヘレナは魔力を高め悪魔と激突する。先んじて仕掛けたのは俺達であり、渾身の斬撃が――悪魔に入ると横に並んでいた悪魔を全て瞬殺する。

 だが後続から押し寄せる悪魔……そこへヘレナの剣が入る。俺と同等の威力を発揮した彼女の一撃は、悪魔を一閃しなおかつ後方にいた個体さえ、斬撃に伴った衝撃波によって動きを鈍らせた。


 さらに、フィリスの魔法が放たれ迫る悪魔達が瞬く間に滅んでいく。そこから追い打ちのように魔族達の構成が入ったことで、突撃してきた悪魔を迎撃する。

 結果、神族を守る悪魔の個体が減少する……相手は目を見開いた。俺のことは間違いなく知っているはずだが、それでも多数の悪魔によって対抗できると考えていたのだろう。


 おそらく、俺がたった孤軍奮闘で戦っているような形なら、通用していたかもしれない。いかに魔王を倒せた勇者であろうとも、一度に迎撃できる数には限界があるし、先ほどの攻撃も抑えきれず攻撃を受けたかもしれない……魔王の力を多少なりとも持っているならば、こちらの防御を貫通する可能性もある。そうであると考え、神族は俺に悪魔を差し向けたはずだった。


 計算外のことがあるとするならば、ヘレナやフィリスの存在だろう。斬撃の威力だけなら俺と互角の勢いがある彼女によって、俺が攻撃によって生じた隙をカバーしてくれるし、さらにフィリスの援護もある。盤石、という表現は難しいかもしれないが……目前の状況であるならば、相手の目論見を打破するだけの突破力を出すことができた。

 そして、神族の周辺は手薄になった……ただそれはこれまでの状況と比べて、という意味合いであり、神族を打倒するにはまだ足らないようにも感じられる。


 しかし――俺は決断する。


「このまま、仕掛ける!」


 俺が号令を行った直後、ヘレナとフィリス、そして魔族達が鬨の声を放った。直後、俺は突撃を開始する。目標である神族を真っ直ぐ見据え、駆ける。

 指揮官の神族は即座に悪魔に指示を出して、自身を守らせようと動く――が、それにより今度は魔物の動きに勢いが増し、神族へ肉薄しそうになる。


 これに対し神族は即座に元の状態に戻そうとしたが、そこへ俺が斬撃を放ち悪魔を倒した。防御を固めようが、問答無用で突破する……俺はそうした気概を持ち、指揮官へと迫る。

 距離を一気に詰められたことで、神族はどうすべきか悩み、硬直した――それは明確な隙。どう命令しようかと逡巡し、そのわずかな時間で……まるで示し合わせたかのように、俺達と魔物が一気に攻勢へと転じた。


 火を噴くような勢いで、俺達は指揮官へと接近する――最初に相手へ仕掛けたのは魔物。だが神族は即座に所持する剣で攻撃をいなし、一刀両断する。

 能力は高く、高位魔族級ではあるようだが……即座に相手の能力を推し量りながら、なおも近づく。そして剣の間合いに入れようとした瞬間、指揮官がこちらへ体を向けた。


「舐めるなよ……!」


 憎悪のこもった声と共に、神族は俺へ剣を差し向ける――俺はそれでもなお間合いを詰め、剣を合わせた。

 金属音が戦場に鳴り響く。一時は拮抗したが、こちらが剣を弾いたことで少しだけ距離を置く。神族は即座に反撃しようとしたが、すぐに愕然となった。


「な――」


 原因は、先ほど打ち合った剣。たった一度ぶつかっただけで、剣が半ばから折れ、刃が地面に落ちた。

 そして生まれた明確な隙を俺が見逃すはずもなく……冷徹な一撃で、俺は神族の体へと、斬撃を叩き込んだ。


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