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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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212/215

武威を示す

 決戦の戦端は、静かに切り開かれた。徐々に距離を詰めていった味方の魔物と悪魔が、列を成してぶつかったことから始まった。

 横の広がる悪魔と魔物が真正面から相対し、最初の激突は果たしてどちらが勝利するか……ここで勢いが勝ったのは味方側。魔族ジーガの対策が機能したか、魔物の攻撃によって最前線の悪魔が倒れ伏していく。


 無論、味方の魔物も数を減らしていくのだが……どうやら悪魔の方が消耗が多い。ここで俺は悪魔の気配を探ってみる。少し距離がある上、大量の魔物や悪魔がいるため、わかりづらい点はあったが、


「……悪魔が持つ魔王の力は、最初に遭遇した時と同じくらいだな」

「はい、それは私も同感です」


 横にいるメルが声を上げた。


「魔族ジーガの領地における交戦……それを踏まえ、魔王の力を少なくすればこちらに対抗できないと判断したのでしょう」

「……もしかすると、悪魔を今以上に量産しようとしたのかもしれないな。質より量、ということで大量の悪魔によって数で押し潰す策を用いようとしていたか」

「しかし、あっさりと迎撃されてしまったため、方針を転換したと」


 メルが俺に続けて意見を述べた時、俺はファルビアへ目を向けた。


「ここについては、どう評価する?」

「……勇者トキヤに尋ねるが、質より量と量より質、どちらの方がやりにくい?」

「それは状況によると思うが……」

「この戦場で、という話に限ればどうだ?」


 ファルビアの問いに俺は眼前の状況を見回した後、


「……数が多い方が面倒だろうな」

「私も同意見だ」

「空を飛ぶことを対空攻撃を見せ牽制したのと同様、数を増やさないようにしたと?」

「そんなところだ」


 頷くファルビア。こう聞くとジーガの領地における戦いは非常に大事だったようだが――


「どうして数が多い方が厄介なの?」


 そんな質問がファルビアへもたされる……声の主は、フィリスだった。


「数が多くても、簡単に倒せるならそれほど変わらないように思えるけど……」

「戦略上の話だ。例えば、悪魔の能力が現在の半分だと仮定し、力が減った分悪魔の数を増やした……今より倍多いと考えてみよう。その場合、相手はどういう戦略をとってくると思う?」

「……真正面から戦っても勝てないよね。あ、でも数で押し込めばいけるのかな?」

「勇者トキヤならばどうする?」


 話が飛んできた。そこで俺は、


「倍の戦力を活用し、包囲する……だな」

「正解だ」

「包囲? でも、仮に倍の戦力があっても囲むことはできないんじゃない?」


 フィリスの疑問。それにファルビアは「確かに」と同意しつつ、説明を加える。


「完全な包囲というのは難しい……が、正面、さらに左右から押し寄せられるだけで、こちらは色々な方向に対応せざるを得なくなる……今は魔物を真正面に集中しているため対抗できているが、戦力が分散すれば半分の力の悪魔でも苦戦する可能性がある……加え」


 ファルビアがこちらを見る。続きを語れと。


「……他には、単純に戦力が多いことから心理的な負担や、包囲されているということから身動きが取りにくくなるなど、戦略的にもまずいことになる」

「最初の時点に不利になっちゃうということか」

「そうだ……で、こちらにはそれを打開できる手段が乏しかった……包囲は敵としても各方向で戦力の厚みが薄くなるため、例えば後詰めの部隊などで戦力を削っていけば勝てるが……問題は、後詰めとなる部隊がいないことだ」

「だからこそ、数を増やさないよう処置をする必要があった」


 俺の言葉に続き、ファルビアが言った。


「最悪の展開は、大量の悪魔が上空を制圧し、上からも四方からも攻撃される状況だ。こちらは魔族同士で連携し、どうにかまとめている状態だからな。乱戦になれば各個撃破される恐れがあるし、さらに個々が作戦に従い機動的に動く……なんて高度なことはできない。私達は、真正面から相手と激突する……そういった構図に持って行きたかった」

「それを魔族ジーガの領地における戦いで、誘導したと……たった一度の戦いでそうなるかどうかは、賭けだったな」

「それでも、分の悪い勝負ではなかった。勇者トキヤが共にいた討伐隊の面々は、連携もできる上に戦闘能力も高い言わば主力部隊だったが、彼らがしっかりと武威を示した。ここにジーガの強化が加わったという事実を踏まえれば、悪魔が弱ければ魔族に蹂躙される可能性がある……と、考えるに違いないと私は思った」

「……その思考誘導は見事成功し、状況は拮抗している。ここまではファルビアの手のひらの上といったところか?」

「手のひらで転がしてようやく、互角というのが悲しいところだが、な……ともあれ、正面から激突し組み合った時点で向こうも後には引けなくなった。後は、戦力次第だが――」


 そこまで言った時、戦場に動きがあり――俺はそちらへ目を移した。


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