白と黒
俺は戦闘準備を始めた魔族達が魔法などを使って悪魔を打ち落とそうと動く……と、思っていたのだがどうやらそれは違っていた。
魔法を使うまでは予想通りだったが、それによって生じたのは、真っ白い大型の鳥のような姿をした使い魔。それが一斉に悪魔へと突撃し――どうやら使い魔による、特攻攻撃らしい。
迫る悪魔は使い魔の攻撃をまともに食らう……その威力は速度もあって悪魔の勢いを削ぐものであり、連続で攻撃を食らった個体は使い魔の攻撃によって体をえぐられ、さらに翼をズタズタにされて落下するのもいた。
「……奇妙に見えるか?」
ふいに声が。見れば、オリヴァーの身辺護衛をする魔族が声を掛けてきた。
「魔法でなく、使い魔に攻撃能力を持たせている」
「……単純な攻撃魔法の方がいいのでは、と最初思ったけど、すぐに理由は理解できたよ」
使い魔による攻撃が外れても、方向転換して悪魔を執拗に狙っている光景を見て理解した。魔法は遠隔で制御もできるが難しい。しかし使い魔を使役する構造にすれば、命令を与えることもできるし、制御もできるため悪魔に攻撃を届かせることが可能なわけだ。
けれど、純粋な魔法と比べて攻撃能力は確実に落ちる……実際、集中攻撃によって悪魔が滅んでいるが、その一方で耐えきっている個体も多い。
だが、確実に勢いを削ぐことはできたのは間違いなく……俺は剣を抜き放ち、臨戦態勢に入る。
「ヘレナ、悪魔が飛来すると同時に迎撃だな」
「あの攻撃を受けている様子から、落下地点も大体予想できるね」
ヘレナの言葉に俺は頷きつつ……おそらく落下地点を制御する意味合いもあって使い魔による攻撃を選択したのだろう。最後まで制御できるような攻撃手段を選択したことで、悪魔達の落下地点を制御しようとしているのだ。
そしてヘレナが言った通り、俺達は着地地点を予想してその場に急行。直後、空を飛ぶ悪魔の中で、最初の一体が着地した。
そこに間髪入れず俺が接近し、斬撃を見舞った。結果、攻撃態勢に入っていなかった悪魔が斬撃をまともに食らって、滅んだ。
続けざまに飛来する二体目の悪魔も撃破。三体目はフォローに入ったヘレナの剣戟によって滅し、次の個体は騎士が倒すことに成功した。
そこから相次いで悪魔が飛来してくる。悪魔はわざと固まるように着地して、こちらを警戒する様子を示した。
対する俺は、魔力を高め刀身に相当な魔力を収束させる。途端、近くにいた魔族が感嘆の声を上げ、それと同時に固まっていた悪魔へ向け、一閃した。
光の粒子を伴った俺の剣は、悪魔を複数体まとめで両断することに成功し……その数を減らす。そこで今度はヘレナも同じように剣に魔力を集め、斬撃を放った。
結果、俺のように複数の悪魔を倒すことに成功する。周囲の騎士は……さすがに真似することはできずとも、複数の騎士が連携することで、悪魔を確実に倒していく。
俺は空を見上げる。なおも悪魔が接近しており、倒しきるには時間が掛かりそうであった。その一方で使い魔である鳥も数を増しており、悪魔に対抗する様子を見せる。
激突まで時間は掛からなかった……そして悪魔の黒と使い魔の白が激突した。上空で衝突による轟音が響き、攻撃に耐えきれなかった悪魔と鳥が力をなくし地上へ落下を始め、地面へ激突する前に滅んでいく。
「……あの様子だと」
ふいにヘレナが声を発する。
「味方側の魔法も通用しているみたいだし、思った以上に戦力差はないかもしれないよ?」
「……この戦いだけを見れば、な。けれど悪魔の全貌をまだ理解していないし……何より、間近で戦って一つ気付いたことがある」
「何?」
「前にオリヴァーの領地やファルビアの領地で戦った悪魔と比べ、弱い」
それは気配を探ることでわかった……といってもその差は少しだ。けれど、悪魔の内に眠る魔王の力が、明らかに少ない。
これはどういうことを意味するのか……悪魔を量産することで魔王の力を弱める必要があったのか、それとも――
「……この戦いが楽勝であったとしても、油断はできない。ヘレナ、気は抜かないでくれよ」
「そこは心配しないで……と、また地上に降りてくる」
「戦いはもう少し続きそうだな……ヘレナ、薬は必要ないな?」
「うん、大丈夫」
「なら長期戦を想定して、切り札はとっておいてくれ。ま、味方は強いし悪魔の能力も以前と比べれば低いため、注意を怠らなければ問題ないはずだ」
――そうして俺達は戦い続ける。そうした中で、俺は魔王の側近が今何を考えているのかを考察する。
悪魔が持つ魔王の力が少ない……これは、魔王の力そのものに量的な限界があり、付与できる量が少なくなったのだろうか? あるいは、量産するために魔王の力を少なくしてどのくらい違いがあるのか、実験をしているなどという可能性はないだろうか?
どちらにせよ、まだ側近達の内情を窺い知ることはできそうにない……か。俺はそこで思考を切り上げ、悪魔の討伐に専念することにした――




