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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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203/215

苦難に満ちたもの

 話をしていた俺とファルビアは同時に首を向ける。視線の先にオリヴァーがこちらに近づいてきたのが見えた。


「魔族ジーガに関する続報だ」


 端的に告げた内容に俺達は身構える。


「彼は引き続き屋敷に引きこもっているが、どうやら備えなどを含め、何もしていないらしい」

「魔王の側近達に攻撃されるかもしれないのに、対策をしていないってことか?」


 俺が問い返すとオリヴァーは頷いた。


「ああ、そういう見解で間違いない」

「それは、側近達に狙われないことがわかっているという話か?」

「――あるいは」


 ふいにファルビアが口を開き、俺とオリヴァーは注目する。


「防備を整えることができない、という話かもしれん」

「……それは、何らかの事情で力が使えないと?」


 俺の疑問にオリヴァーとファルビアは押し黙る。

 もしそうであれば……そうした処置を施したのは、間違いなく魔王の側近達だろう。彼らが魔族ジーガを狙わないのも、力を封じたことにより放置しても問題ないと確信しているから。


 俺は内心そう推測し、オリヴァーも同様の考えに至ったのか、口を開く。


「……仮に、側近達が力を封じる何かをジーガに施したとしよう。それで放置をするのは理解できるが、ジーガが動かないのは何か理由があるのか?」

「そこは割と簡単に推測できるぞ」


 と、オリヴァーの疑問に対しファルビアは応じた。


「こちら側には、能力が封じられていることを悟られたくないのだ。それは自分の弱みを見せることになるし、失望されるだろうからな」

「……なるほど、そういう理由であれば筋は通るか。では、交渉の方向性を変えるとしよう」

「力を封じられていることを切り出すか?」


 ファルビアはそう問い掛けつつ、口元に手を当て考える。


「それでジーガは話に応じてくれるか?」

「正直、そこについては不明瞭だ。しかし現状では交渉の余地すらない状況である以上は、少しでも可能性にかけて動くべきだろう」


 ……魔王の側近達は現在進行形で悪魔を生成している。戦力差は広がっていくのは間違いなく、できることなら早急に説得して味方を引き入れたいという話だろう。

 しかし、もし力を封じられているのであれば――


「魔族ジーガが力を封じられているとしたら」


 俺は一つ疑問を呈す。


「オリヴァー達なら、それを解除することができるのか?」

「正直、どういう状況なのかを見てみなければわからないな」


 オリヴァーはそう答えると、小さく息をついた。


「だが今、話し合いすらできないことを踏まえるとどんな形であれ引っ張り出さなければならない」

「なるほど……もし何か手助けできるのであれば協力するけど」


 とはいえ、魔王の側近が何かをした……そんな策略に対抗できるかはわからない。

 オリヴァー達も「感謝する」と言いつつ、こちらの手助けについては特に言及せず、


「説得は任せてくれ……それでファルビア、確認だが情勢としてはまだ敵は動いていないな?」

「ああ、ジーガと話をするくらいの時間はあるだろう」

「わかった。引き続き情報収集は頼む……できれば一日でも早く、態勢を整えたいところだが」

「本格的な戦いになるのはいつくらいだと予想する?」


 俺はオリヴァーとファルビアへ問い掛けた。


「時間は俺達にも、敵にも味方をする……もしジーガを味方に引き入れても、能力を活用できないとなったら、時間を掛けただけ不利になるぞ」

「他にも戦力を増強する手段を用意する必要はあるが……今は戦力を結集させることを優先する。ファルビア、そちらは情報収集によってどう動けばいいか、おおよそでいいから絵図を描いてほしい」

「それは構わんが……癖のある同胞も味方にする気か?」

「ああ、敵に回すよりはよっぽどいいだろう」

「御せるのであれば構わないが、な……まあいいさ、この戦いのリーダーはオリヴァーだ。そういう方針であればそれに従う。だが、厄介者まで引き入れたら後が面倒なことになる。それは理解しておけ」

「わかっている……次の交渉で必ずジーガを引き入れる。だが、それがかなわなかった場合――」

「私にその可能性も考慮しておけと」


 ファルビアの言葉にオリヴァーは重い表情で頷いた。


「ああ……もしさらに味方を増やして……その状況下で戦えばどうなる?」

「悪魔との戦いは苦戦するだろう。正直どうなるかは未知数だが、犠牲がジーガの協力がある時と比べ大きくなる、ということは断言しておこう」


 オリヴァーは彼女の言葉を受け大きく息を吐いた。何が何でも成功させなければ……そういう意識が垣間見られた。


「……あまり時間もない。次の交渉で動きがなければ最悪打ち切ることも視野に入れる」

「そうだな。こちらとしてはもしもの事態になる可能性の方が高い、ということを考慮に入れておこう」

「……すまない」


 重い表情のままのオリヴァー。その顔つきは、これからの戦いが苦難に満ちたものであると、確信しているようだった。


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