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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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201/216

現在の情勢

 ファルビアは俺達と同様にオリヴァーの屋敷に滞在することとなり、それと共に情報収集を開始。オリヴァーの騎士達も借り受け、彼女が戦略を練るために必要な情報を集め始める。


「まずは何より、島全体の状況を確認しよう」


 そう告げた彼女は、騎士達を動かし魔族の領域内についての情報を確認し始めた。そういった作業と平行しつつ、オリヴァーは魔族ジーガに関する情報も集める。

 情報集めには、同じ屋敷に滞在しているということで俺達も手を貸すこととなった。とはいっても、彼女に手を貸すのは主にメルやフィリス。俺とヘレナについては腕っ節が必要な場面ではないため、屋敷周辺に悪魔がいないか、あるいは異変がないかを確かめるために、見張りをすることになった。


 正直、偵察の悪魔とかがいてもおかしくないのだが……少なくともオリヴァーの領地内ではゼロだった。そこについて俺はファルビアへ報告をすると、


「勇者トキヤがいる領地にわざわざ差し向けたりはしないだろう」


 と、彼女は答えた。確かに言われればそうだな。


「ただ、側近達の動きは非常に緩慢だ。オリヴァーの領地だけでなく、他の場所でも悪魔の偵察は見受けられないらしい」

「情報が集まってきたのか?」


 彼女がここにやってきて、現在は数日経過した程度なのだが……。


「ああ、オリヴァーの騎士達はずいぶんと働いてくれている」

「……あんまり働かせると、逆に恨みを買うかもしれないぞ」

「そこについては加減しつつやっているから心配するな……さて、予想以上に側近達の動きは鈍い。逆に不気味とさえ思えるほどに、な」


 淡々とファルビアは語っていく……その目は、ずいぶんと警戒が込められている。


「中立を宣言した同胞達に対しても、私以外の者に悪魔を差し向けるようなことはしていない」

「逆にファルビアは相当警戒されていたってことになるのか?」

「私が例外だった、という風に解釈することもできるな……まあ、側近の思惑を全て理解することはできない。あくまで現実を見据え、打てる手を打つだけだ」


 そう述べるとファルビアは口元に手を当てた。


「今はとにかく味方を増やす時間であり、側近達が動かない以上、それはきちんと遂行できている」

「魔族ジーガについては?」

「まったく動きがない。幾度かオリヴァーも話をするための使者を送っているようだが、交渉の余地はないらしい」

「……よっぽど何かがあった、ということだな」

「ここについては、現時点で色々と推測はできる」


 ふいにファルビアはそう発言した。根拠は何だと問おうとした矢先、彼女が先んじて説明を始めた。


「だが確証がないため、今は言及を控えよう……ただ一方で、側近達も手を出していない」

「側近達は魔族ジーガを放置しても良いと判断しているのか?」


 俺の疑問に対しファルビアは「どうかな」と応じる。


「現時点では不明だ……さすがにジーガも防備くらいは整えているだろうし、彼の能力を踏まえれば中立だとして攻めても、追い返される可能性を危惧しているのかもしれん」

「それだけ、彼の能力は強力ということか……あるいは、魔王の側近としても味方にしたいとか?」

「だからこそ、襲っていない可能性もあるな」

「やはり問題は、魔族ジーガがどういう理由で中立の立場をとっているか、か」


 こちらの指摘にファルビアは「まさしく」と応じ、


「まずは何より、話をしてもらう必要性があるのだが……ここはオリヴァーの粘り強い交渉に期待するしかないな」

「でも時間を掛ければ……魔族ジーガが中立を維持するなら、こちらとしてはまずい展開になる可能性もあるんじゃないか?」

「それもまた、正解だ。悪魔の能力を踏まえると、現状戦力的に有利をとっていても、いずれ覆されるだろう」


 ふむ、やれることはやっているが情勢をひっくり返すには至っていない、みたいな感じかな。


「……情報をとるというのなら、俺と仲間が魔王の城へ接近して探るというのもありだが」

「城へ近づいても得られるものは少ないだろう。むしろ無謀な任務で下手に負傷すればそれだけこちらが危うくなる」

「無理は禁物か」

「今はまだ、な。せめて城へ近づけば大きな情報を得られるという確信が得られるまでは近づかない方がいい」


 ……ファルビアは側近に対しかなり警戒をしている様子。それは魔王の側近の恐ろしさを理解しているためなのか。


「……なあ、一つ訊かせてくれ。俺達の勝利条件は明確で、魔王の側近を倒し新たな秩序を作り出すこと、で合っているよな?」

「ああ、そうだな」

「そこに至るための道筋……魔王の側近を倒す道筋というのは、現段階で見えているのか?」


 現状を彼女はどう考えているのか……問い掛けにファルビアは一時沈黙した。だが答えてはくれるようであり、


「……そうだな、勇者トキヤは間違いなく勝利するために必要な存在だ。ここで色々と明かしておこう」


 そう前置きをした後、ファルビアは語り始めた。


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