必要な魔族
俺達はファルビアを連れてオリヴァーの屋敷へと戻った。すると屋敷の入り口前で彼が待っていたため、ファルビアが発言した。
「出迎えとは、ずいぶんな歓待だな」
「本来なら屋敷の者達が総出で迎えるところだが、私だけで悪いな」
そんなやりとりをした瞬間、オリヴァー達は互いに笑みを浮かべた。
「……中立を選ぶと聞いた時、何かしでかさないかと思ったところだったが、意味があったのだろう?」
「まあな。その辺りについては、屋敷の中でゆっくりと話そうじゃないか」
――というわけで、客室で話し合いをすることに。とはいえ仲間達は参加しない。メルはひとまず、悪魔がいないかなどの確認をしたいと申し出たため、彼女とフィリス、そして護衛としてヘレナは外に出ているため、話し合いをするのは三人だ。
そしてファルビアは俺と話した内容と同じことをオリヴァーへ向け簡潔に説明。するとオリヴァーは、
「事情についてはわかった……が、肝心の手土産はあるのか?」
「無論だ。悪魔に関する情報を結構得られた。まあ側近達も対策はするだろうが、同等の個体であれば対策を立てることで、対処は容易になるだろう」
「……その対処については誰がやる?」
「オリヴァー、そちらもわかっているだろう? 武具や魔法などを強化するために処置を施さなければならない以上、ジーガの力を借りる必要がある」
新たな魔族の名が出てきた。ここに戻ってくる前に話した魔族のことだろう。
「確認だがオリヴァー、ジーガは何をしている?」
「残念だが彼も中立だ」
「ほう? 意外だな。陛下に忠義を尽くしていたジーガが中立とは」
「……実を言うと、私も気になっているところだ。ファルビアもわかっていると思うが、彼の得意分野は同胞達の強化。側近達が生み出した悪魔にも対抗できる手段を構築するためには、彼の協力は必要不可欠……それはファルビアに言われずともわかっていた」
そう語った後、オリヴァーは息をついた。
「そもそも最初の話し合いの際に、私はジーガにも声を掛けた。しかし、反応はなかった。そして反旗を翻したと同時に、私は再度説得しようとしたのだが……」
「失敗したのか?」
「今度は顔を合わすことができたのだが、協力はできないと言われた。十年前の戦争も陛下の指示によるものではない……そう語ったが、首を縦に振らなかった」
「――何か、ありそうだな」
と、ファルビアは声を上げた。
「陛下の指示だからこそ、疑いなく指示に従っていたのだ。側近達の行動は間違いなく、陛下に対する裏切り……それを知りながら、中立というのは疑問がある」
「……単に心変わりしたとかじゃないのか?」
俺は疑問をファルビアにぶつけた。すると彼女は、
「中立、という点に裏があると私は考えている」
「……どういうことだ?」
「例え側近が陛下を利用していようとも、それでも忠義を尽くすというのであれば、そもそも側近達が引きこもり始めた時点で陛下の城へはせ参じているはずだ。しかし、ジーガはこちらに味方するわけでもなく、側近の下へ向かうわけでもなく、中立だ」
「つまり、これまで彼が行動していた理由などを踏まえると、どっちつかずの中立というのは疑問があると」
「そうだ……とはいえ、例えば人質をとられているとか、そういうわけでもないだろう。そもそも妻もいなければ親族もいない……研究に全てを注ぎ同胞だからな」
「だとすれば、一体……?」
「……少し調べてみよう」
と、オリヴァーは口を開いた。
「ファルビアの言うとおり、彼の行動はこれまでの言動を踏まえると、疑問が多い。何か調べれば出てくるかもしれない」
「……仮に、難題を抱えているのなら、それを解決することで味方に引き込む、という形になるのか?」
「そうなるな」
「解決できる問題であればいいけどな」
俺の言葉にファルビアは「確かに」と応じつつ、
「しかし、この戦いにジーガは必要不可欠だ。オリヴァーもわかっていると思うが、現状では味方が多いように見えるが、情報戦で負けている。よって、戦力的にはまだまだ陛下の側近達が上だろう」
「ああ、そこはわかっている。他の同胞達も、認識は同じでありジーガの力が欲しいと考えている者も多い……彼の説得に失敗すれば、非常に状況は悪くなるだろう」
……もしかすると、側近達もジーガの力に目をつけ、味方に引き入れるために色々とやっているのだろうか? あるいは――
「……そのジーガという魔族に、悪魔は差し向けられているのか?」
俺の疑問に対しオリヴァーは首を左右に振る。
「いや、動きはない……彼はファルビアと並び敵に回ると厄介な存在だ。側近達も何らかの行動を起こすと思うのだが……」
そこまで言うと、オリヴァーは改めて俺達へ告げた。
「ジーガの領地についても警戒は行いつつ、情報も集める……ファルビアは私達の状況をまとめ、どう戦うか戦略を練ってくれ。勇者トキヤはひとまず、いつでも動けるように待機を。側近達の動きはまだ控えめだが、いつ大々的に動き出すかわからない以上、一時も気を抜くことはできない――」




