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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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魔族の予測

 屋敷入り口を訪れると、そこに騎士に守られた魔族――長い金髪を持つ女性魔族と鉢合わせた。


「勇者トキヤか」


 淡々とした物言いで女性は語る……俺はそこで、


「確認だが、魔族ファルビアか?」

「ああ、そうだ。オリヴァーから聞いてここにやってきたのか」

「危機的状況だとな」

「確かにあのまま籠城していても、膠着状態となっていただろう」


 そう言いつつ、ファルビアは視線を村の方へと向ける。


「あちらにも援護が入ったか……気配からすると、神族とエルフか」

「わかるのか?」

「魔法の心得もあるからな。この距離なら気配をつかむこともできる」


 そう言いつつ、彼女は歩き始めた。


「屋敷は無事だ。後は残る悪魔を駆逐するとしよう」

「……手伝うよ」

「ああ、助かる」


 端的な物言いと共に歩んでいく魔族ファルビア。なんというか、軍略家というイメージとはずいぶん違うような気がするけど……まあいい、今はとにかく悪魔を倒すことに専念しよう。

 そう考え、俺とフィリスはファルビアに追随し、村へと向かった。






 戦いそのものは、それから程なくして終了した。屋敷の中にいたファルビアとその護衛……彼らによって一気に状況は覆り、悪魔は殲滅が完了した。

 そして平穏を取り戻した後、ファルビアは速やかに騎士達に指示を出した。被害状況の確認などを行い始め……そこでメルとフィリスは周辺の索敵を開始。ヘレナはその護衛につき……それに対し俺はファルビアと話をすることに。


 村を見回せる場所にいた彼女に近づき……そこで一つ気付いた。


「思った以上に被害が抑えられているな」


 悪魔の襲撃を受けて、建物なども結構破壊されているが、ある程度の時間戦闘したにもかかわらず、オリヴァーの援護をした際に助けた村と比べれば、損傷具合はかなり少ない。

 これは俺達が早期に助けに入ったことも要因かもしれないが……それ以上に、どうやら家屋から魔力が感じられるため、何かしら補強をしているのだとわかった。


「備えていたのか?」


 俺は一通り指示を終えた魔族ファルビアへ向け問い掛ける。


「建物は屋敷を含め、魔法で保護していたみたいだが……」

「さすがに領地全ての建物に処置は難しかったが、屋敷周辺の家屋くらいは、だな……ともあれ、私としては建物の被害もゼロにしたかったが」


 そこまで言うとファルビアは肩をすくめ、


「さすがに悪魔の能力的に難しかった」

「……オリヴァーが動き始めたのと同じタイミングでの処置では、ないよな? 屋敷周辺の建物に魔法を、と言うのは簡単だが、それをやるにも時間や資材が必要なはずだ」

「陛下の側近達がおかしな動きをし始めたタイミングで、密かに準備をしていた。いざとなれば、領地を脱して他の同胞の場所へ逃げ込める手はずもあった」

「いつか自分の所に悪魔が来ると?」


 問い掛けにファルビアは頷き、その理由を説明し始める。


「陛下が復活するより前から、側近達から新たな作戦を行うため協力しろとお達しがあった。陛下の厳命であれば従うしかなかったが……側近達の動きがおかしかったため、色々と理由をつけて断っていた。そして協力しないのを理由に、粛正するだろうと予測していた」


 ……だからこそ、事前に準備を進めていたというわけか。


「おかしな動きというのは何だ?」


 俺が問い掛けるとファルビアはこちらを見返しながら、


「私は陛下と直接話をしたかった。十年前、作戦の立案に呼ばれた際も、直接向かい合って話をしたからな。同じ要領で、ひとまずどういう動きをとるのか陛下に直接確認したかったし、それが私のやり方だったのだが……今回は、側近達が会わせてくれなかった」

「会わせて……くれなかった?」

「会う約束をつけようとして、側近達に阻まれた。それがずいぶんと執拗であったため、私は違和感を抱いて今回の作戦には加わらなかった……まあ、十年前の戦争についても初期は軍議に参加していたが、攻撃を開始した時点で呼ばれなくはなっていたんだが」

「……あなたは、魔王の側近に近しい存在というわけではなさそうだな」

「作戦立案ができるため、都合良く利用できるくらいの存在だったのだろう……ま、それならそういう扱いでも構わんと思っていたが」


 と、彼女はどこかへ視線を向けた……たぶん、魔王の城がある方向かな?


「まさか十年前の時点で騙しているとは思わなかったが」

「……あなたも、怒りを覚えているわけか」


 こちらの指摘に再びファルビアは俺へ視線を向け、


「そういうあなたはどうだ? 十年前の戦争……その作戦の骨組みを私は請け負った。全て私の采配だと言う気はないが……戦争の犠牲者の中には、確実に私が成したものもある」

「あなたが大陸に渡ったとしたら、恨む人間だって出てくるだろう。だが、俺としては……あなたもまた、魔王の側近達に利用された存在、という認識だ」

「……そうか」

「少なくとも、敵意を向けることはないと言わせてもらおう……それで、だ。あなたの言動からすれば、中立ではなくオリヴァーの誘いを受けてもおかしくなさそうだが、どういう理由で中立を決断したんだ?」

「ああ、それについては」


 と、ファルビアは含みを持たせた笑みと共に、俺へ応じた。


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