中立の魔族
何かあったようだ――俺が察すると同時、オリヴァーも察して部屋の扉を開け騎士へ呼びかけた。
「どうした?」
「――ファルビア様の領内に悪魔が侵入したとの報告が」
名を受けてオリヴァーは息をのむ。こちらが視線を向けると彼は、
「先ほど話題にしていた軍略に秀でる同胞だ」
「……敵が先手を打った形か」
「中立だと見るや、側近達が仕掛けたのかもしれん」
俺はオリヴァーを見据える。どうすればいい、と言外に問い掛けたのだが――
「ここからそれほど遠くはない。全力で移動すれば、一時間で向かえる場所になる」
「……魔王の城から距離はあるよな。魔王の側近は、わざわざ悪魔を差し向けたのか?」
「敵はおそらく、相当警戒したのだろう。ファルビアのことを」
「つまり、中立ということでオリヴァー達がすぐ来ないだろうと判断し、将来邪魔になりそうな相手だとして動いたのか」
悪魔は上空から飛来することを考えると、距離はあまり関係ないかもしれないが……俺は状況を理解すると、
「わかった、俺達が向かう……けど、悪魔の数が多い場合は――」
「最悪、ファルビアをここに連れてくるだけでもいい。もっともその場合はファルビアが治める領地の同胞は見捨てることになるが」
「……これから戦うことを考えると、見捨てるような選択肢はとりたくないな」
俺はそう言うと、オリヴァーへ言った。
「なら、俺達が先行する。遅れて魔族ファルビアを助ける部隊をよこしてくれ」
「わかった……頼む」
オリヴァーの言葉に俺は力強く頷いた。
指示を受け、俺はメル達と共に魔族ファルビアの領地へと向かう。道中は無人の野を駆け抜けるようであり、途中には何ら障害はなく……俺達の移動速度により、当該の領地にはオリヴァーが想定した半分の時間で辿り着いた。
「……これは、あまり状況がよくありませんね」
そして現場に辿り着いた段階でメルは言った――既に悪魔が多数攻撃しており、魔族ファルビアの屋敷と思しき場所に加えて、屋敷近くにある村の建物にも被害が出ていた。
ファルビアの配下と思しき魔族も動いてはいるが、多勢に無勢かかなり苦戦している様子。このまま騎士が負ければ一方的な蹂躙が始まるため、すぐにでも加勢しなければならない。
「……これは二手に分かれた方がよさそうだな」
俺はそう判断した。
「ヘレナとメルは村にいる悪魔達を倒して回ってくれ……メル、今回の個体について、以前戦った悪魔と比べて個体差はあるか?」
「感じられる魔力の大きさは前回と同じですね」
「わかった。もし何か仕掛けなどがあれば、即座に退却して援軍を待ってくれ……俺とフィリスは屋敷へ向かい魔族ファルビアを助ける」
現状、屋敷周辺に悪魔はいるが、中には踏み込まれていない様子。どうやら屋敷には結界が張られており、それで攻撃を防いでいるらしい。
「屋敷の周りにいる悪魔を倒せば、魔族ファルビアは出てきてくれるだろう」
「わかりました……ご武運を」
「ああ……ヘレナ、警戒は怠るなよ」
「わかった」
俺達は動き出す。直後、悪魔がこちらに気付いて数体向かってきた。
「フィリスは状況に応じて援護を頼む」
俺は冷静に告げると共に悪魔と交戦開始。放たれた拳を剣でいなすと、即座に反撃に転じてその体へ一閃した。
結果、あっさりと悪魔は両断されて滅ぶ……感触はメルの言うとおり、前回と同じような悪魔だ。魔王の力……その一端は感じられるが、今の俺達であれば一撃だろう。
それを証明するかのように、接近してきた悪魔をフィリスの魔法が射貫いた。光の槍が突き刺さると悪魔は耐えきれず消滅。うん、問題はなさそうだな。
「このまま屋敷周辺にいる悪魔を倒して回る」
「うん」
「フィリスは周囲に伏兵がいないかなどを警戒しつつ、援護を。基本は索敵を優先していい」
俺は告げるとさらに迫ってくる悪魔を一刀両断。次いで屋敷へ近づき、それによってこちらに反応を示す悪魔を――立て続けに倒していく。
数は多いが、これならなんとかなりそうだ……そう考えるうちに、突如屋敷から魔力が。何事かと思った矢先、結界が一瞬光ったかと思うと、魔力が弾け光弾と化し周囲にいた悪魔に襲いかかった。
突然の攻撃に悪魔は避けられることなく直撃する……光弾は多数だったが、一発の威力は低いのか直撃しても多くの悪魔は生き残った。しかし、明らかに動きが鈍ったのは間違いない。
よって、俺はその隙にさらに屋敷に近づいて攻撃を仕掛ける……ここで俺は撃破速度を引き上げ、瞬く間に悪魔を滅していった。
「……今のは、結界越しに放てる防衛魔法かな」
推察しつつ、俺は最後の悪魔を倒しきる。村の方にはまだ悪魔はいるが、とりあえず魔族ファルビアの安全は確保できただろうか……。
考えていると、屋敷の扉が開く音。どうやら出てきた……俺はフィリスと顔を合わせる。彼女が頷くのを見て、俺は屋敷の入り口へと進んだ。




