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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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初動の対応

 魔族オリヴァー達は、魔族の側近より先んじて動き始めたわけだが――それに気付いた時点で、魔王の側近達が何をするかわからない。俺達はどういう状況になっても動けるようにしていたが……相手の動きは、ひどく静かなものだった。

 側近達もどうやら動いている……数日後に魔族オリヴァーからそうした情報がもたらされたが、側近達が何をしているかは具体的にわからないらしい。とはいえ魔王の城、その周辺では明らかに魔力が高まっている……悪魔を生み出しているのは、間違いなさそうだ。


 一方でオリヴァーは魔王の側近達……その所業について大々的に公表した。それにより、オリヴァー達に味方する魔族も一気に増えた……なおかつ公表した中で俺についても公にしたのだが、それによっての反発も、当然あった。

 だが、それ以上に側近達の所業――そこの怒りが大きかったのか、明らかに味方になる魔族が多かった。初動では明らかにオリヴァー達が勝っている。側近達はほとんど動くことができず、例えばオリヴァーの主張に対し反論することもない……完全に魔王の城に引きこもっている様子。


 情勢的に大きく有利と言って良いはずだが、まだ戦いは始まったばかり……最初はとてもおとなしいが、水面下で何が起こっているかわからない以上、警戒は続けなければならない。

 だからこそ、オリヴァーを含め味方側――反乱軍は、気を緩めることなく戦いの準備を進めている。領地の状況を安定させ、いつ何時悪魔が来てもいいように……そして悪魔の襲撃を発見できるような処置を進めていく。


「……ひとまず、やれることはやっているような状況だ」


 オリヴァーの屋敷に滞在している俺は、彼に呼ばれて客室で話をすることに。数日経過したことで状況がどうなっているかの確認だ。


「今のところ、順調に味方が増えている……勇者トキヤがいるという状況であろうとも、今を変えることができる私達になびく同胞が多い……それに加え、何より魔族全体を裏切っていたと言ってもいい側近達のやり方は納得がいかない者が多かったのだろう」

「不満が噴出した結果ということかな……魔王の城について何か情報はあるのか?」

「現時点では動いていないが、悪魔の生成を進めているのは間違いない。おそらくある程度戦力が溜まった時点で、攻撃を仕掛けてくるのだろう」

「その前にこちらも防衛準備を……」

「そうだ。現在同胞達は魔物を早急に生成し、迎え撃つ準備を進めている」


 俺は彼の言葉に正しいと言わんばかりに小さく頷いた。


「なら、俺達は……」

「中立の立場を表明する同胞も多くいたが、説得を始めた。思いのほか側近達の動きが鈍く戦闘は起きていないため、説得できる時間ができている」

「俺達の出番はなし、か。その分、決戦の際に頑張ることになりそうだな」

「ああ、そうなるだろう……可能であれば、このまま戦力を結集させ押し切りたいところだが――」

「それはさすがに無理だと思うぞ」


 俺はオリヴァーの言葉に告げる。


「敵は俺達を含め情報を持っている。それだけで十分に脅威だ」

「こちらも可能な限り対策をしている……それが通用して欲しいが」


 そこまで言うと、オリヴァーは小さく息をついた。


「そう甘くはない、という話だな」

「……側近達は、多種族を引き入れただろう? そうした者達の能力も活用して、悪魔を強化する危険性だってある」

「特に私達魔族に対し有効な能力が付与されれば、途端にまずいことになるな」

「魔族じゃなくてあなた達が生み出した魔物にでも対策を立てられれば、状況は悪くなるだろう……敵は動いていないように見えるが、外に討って出た時、全ての準備が整っている……そうなったら――」

「正直、現状では有利に思えないな」


 俺の言葉にオリヴァーは深々と頷く。


「とはいえ、私達はやれることを進めていくしかない」

「味方が増えるのはいいことだが、統制はとれるのか?」

「どうにかやっていく、としか言えないな……懸念はもっともだが、そこは信頼してもらえると助かる」

「わかった。そちらの状況についてはとやかく言わない……俺は勇者で戦いには参加できるが、戦争ではあくまで兵士だからな。戦術的に上手く使ってくれ」

「……そうだな」


 オリヴァーは応じる。その様子からすると、


「戦術面に不安が?」

「……実を言うと、軍略を秀でた同胞はいない。いや、いるにはいるが、魔族を二分するような大規模な戦いが初めてと言うべきか」

「そういう軍略は魔王の側近達の方が有利か」

「中立の立場をとる者の中に、手を貸してほしい者がいるが……現在説得中であり、上手くいってほしいところだが――」


 そんな会話をしていた時だった。突如、部屋の外からオリヴァーのことを呼ぶ騎士の声が聞こえてきた。


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