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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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大きな炎

 俺達と話をした後、魔族達は速やかに動き始めた。彼らはそれぞれの領地へと帰り、急ぎ準備を始めるらしい。

 魔族の側近達はこの状況にどこまで気づけているのか……俺は仲間達と話をして、敵の動向について調べようと動くことに。といっても、メルが魔法を活用して悪魔に関する索敵をすることから始めたため、俺の出番はないんだけど。


「……魔族の領域である島は大きく、さすがに全範囲を網羅することはできません」


 と、メルは作業中に話し始める――場所はオリヴァー屋敷の外。原っぱに魔法陣を描き、作業を行っている。


「しかし、味方の魔族達がいる範囲くらいはなんとかいけそうです」

「メル、現時点で悪魔の解析は進んでいるか?」

「ある程度は」


 こちらの問い掛けにメルは即座に答えた。


「ただ残留魔力を解析しただけなので、まだまだ完全とは言いがたいですが……ひとまず悪魔を検知する魔法は開発しました」

「良いな。敵の動きが理解できるのであれば、戦い方はいくらでもある」

「戦争、か」


 ふいに近くにいるヘレナが呟く。次いで俺へと視線を向け、


「戦力差がどうあれ……情報戦は負けているとオリヴァーさんは言っていたけど」

「そうだな、魔王の側近達はオリヴァー達の素性を把握している。それに基づいて戦術を組み立てることができる……その中で俺達の存在はイレギュラーのように思えるが――」

「私やトキヤは、十年前の戦争で嫌というほど情報をとられているでしょう」


 と、メルは作業を進めながら俺の言葉に続いた。


「ヘレナのことだって、神族の能力については戦争から得られたデータにより把握できているはず。フィリスも作戦に駆り出したことを踏まえると、能力を把握している……つまり、私達の能力についても魔族達と同様にわかっている」

「そういうことだ」


 と、俺は肩をすくめる。


「十年前と比べ、俺が強くなっていれば話は変わってくるかもしれないが、残念ながら俺は変わっていないどころか加齢により全盛期は過ぎているからな。過去のデータをいくらでも利用できる」

「なるほど……まともに戦ったら不利になるってことか」

「そうだ。よって俺達がやることは魔王の側近について少しでも情報を得ること……悪魔についてはある程度調べられたし、これからの戦いでも調査は進めていく……生み出される悪魔に対し有効な魔法などを開発できれば、戦いを大きく有利にできるだろうな」

「悪魔の能力は、敵も変えてくるんじゃない?」

「だとしても、まったく違うような個体を生み出すことはできないはずだ……悪魔が魔王の力を帯びていたのであれば、ベースとなるのは魔王の力だ。その根底が一緒である以上は、そこまで性質を変えることは難しいだろう」

「私もそう思います」


 メルが続く。そこで彼女は、


「ただ、戦力については相手を大きく上回る可能性もあります……こうして悪魔について索敵をする間も、魔族オリヴァー達が動いているのがわかる。どうやら彼らは、相当大きな炎を起こしているようです」

「魔王の真実を知れば、さすがに魔族達は側近を糾弾せざるを得ないというわけだ……それに、神族など魔族以外の種族を魔王の城に入れていることもあって、反発は相応大きいみたいだし」

「魔王の側近に近しい者以外が味方に回る、くらいが理想的ですが……」

「さすがにそれは厳しいと思うぞ……ただ、味方が少なくてまずい状況に陥る、みたいな可能性はなさそうだな」

「――勇者トキヤ」


 ふいに魔族オリヴァーの声。見れば、屋敷から歩み寄ってくる彼の姿が。


「すまない、今後仕事を頼んでいいか?」

「仕事? 何かあるのか?」

「順調に同胞達が味方に回っているが……中立を宣言した者もいる」

「中立……戦いには加わらないってことか」

「そうだ。そこについても可能な限り説得していくつもりだが……陛下の側近達は、中立すらも許さず粛正する可能性がある」

「……俺達が、助けるってことか?」

「私を含め、領地を持つ同胞はおいそれと動くことができない。それこそ、側近達と全面的な戦争になるのであればその限りではないが、現状では領地を安定させる意味合いでも、急進的に動くのは危険だ」

「なるほど、自由に動ける俺達なら対処ができると」

「そうだ。無論、貴殿だけではなく私の配下が同行する」

「……犠牲を減らし、さらに俺達が側近達と敵対し、魔族を救うと知ってもらえれば、さらに味方を引き入れやすくなる意味合いもありそうだな」

「そうだな……引き受けてもらえるか?」

「それが犠牲を減らすことに繋がるのであれば」

「……おそらく、数日の内に側近達は現状を知ることになる。その際、悪魔が大々的に動き出す。その動向を注視し、もし中立を宣言した同胞が狙われたら――」

「仕事としては結構ハードかもしれないが……ま、勇者である俺の役目とも言える。喜んで協力させてもらうよ」

「わかった……ありがとう」


 礼を述べるオリヴァーは屋敷へと戻っていく。その後ろ姿を見ながら俺は仲間へ告げた。


「……戦いが始まれば、休めるような機会はなくなるかもしれない。今が体を休める最後の時だ。全員、体調だけは崩さないよう頼む――」


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