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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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公にする意味

「最終目標……といっても内容はシンプルだ。それは平和……十年前の戦争より前から、大陸に住むの種族と魔族といがみ合ってきた。それは間違いなく事実であり、両者の間にも多数の憎しみの壁がある……けれど、今回のことを皮切りに、争いをなくす方向に進めたい」

「手を取り合うべきだと?」

「そこまでは言っていない。俺も確執があることは理解している。だから最初は交易などはしつつも、互いが干渉せず、天王達などと上に立つ者達で少しずつ、理解を深めていくという形が望ましいと思う」

「……側近達を倒すことで、私達が世を乱す可能性があるとは思わないのか?」


 思い切った発言。それに対し俺は、


「そこは正直賭けだな」


 肩をすくめ、返答した。


「どうなるかはわからない……が、今のままがまずいことはわかる。だからこそ、俺はあなた方が動けば手を貸すつもりだ」

「……もしどこかで裏切れば、貴殿が粛正をするか?」

「正直、俺にそんな権限はないと思うんだけどなあ……」


 ぼやく俺に対し魔族オリヴァーは苦笑し、


「……貴殿の考えはわかった。ならば――歪んだ今の治世を変えるために、動くとしよう」

「具体的にはどうするんだ?」

「妃様の顛末を公表し、さらに味方を集める。ここにいる者達だけでも大きな戦力だが、妃様が謀略に巻き込まれたことがわかれば、私達に支持する者は確実に増える」

「……俺の存在は、どうする?」

「そこも隠さず公表する――公にするからこそ、意味がある」

「意味?」


 聞き返すと、オリヴァーは微笑する。


「陛下を二度倒した勇者……私達に手を貸しているとすれば、間違いなく反発もあるだろう。だが同時に、貴殿に対する恐怖もある……同胞達の間に議論が呼ぶだろう。そこで私達が説得して回り、さらに味方を増やしていく」

「そう上手くいくのか?」

「そこはなんとかしてみせよう……貴殿の力を借りる以上、誤魔化すことはできない。ここは、私達が越えなければならない障害だ……とはいえ」


 オリヴァーはさらに俺へ語っていく。


「同胞達も、戦いに疲れている……貴殿の行動が戦いを終わらせるものであるという認識ならば、理解を示す者も多いだろう……そして」


 と、付け加えるようにオリヴァーは続ける。


「陛下の側近に支持をする者達は、貴殿がいることでこちらに入り込んでくることはないだろう」

「……つまり、スパイを防ぐことができる?」

「そうだ。側近達も勇者トキヤがいることで最大限の警戒をするだろう」


 確かに……そこで俺はメルへ首を向ける。


「例えばスパイをあぶり出す方法とかはあるか?」

「十年前の戦争でも色々とやりましたね……ええ、やり方はあります。その辺りの対策もご提案できるかと」

「至れり尽くせり、だな」


 オリヴァーは言うと、俺を見据え改めて告げた。


「私達は側近達に反逆する……おそらくは、貴殿の目的に合致する動きになるかと思う」

「……側近達は、どう動くと思う?」

「向こうは向こうで戦力を結集させるだろう。勇者トキヤがこちらの陣営にいる……その事実を利用し、様々な策で同胞を味方に引き入れようとするだろう」

「まずは味方をどれだけ集められるか、か」


 俺が呟くとオリヴァーは「いかにも」と応じ、


「時間との勝負になるだろう……側近達が動き出すより先に、どれだけ手紙の話を浸透させられるか……ただ、既に私達はどう動くか決めた。後は、策が上手くいくことを願おう」

「わかった……と、最後に一つ気に掛かることがあるんだが、いいか?」

「そこについては、何を問い掛けるのか予想できる。誰がこの戦いの盟主となるのか、だろう?」


 彼の問いに俺は頷く。


「誰かが陣頭に立つ必要がある……それは誰にするんだ?」

「ここについても無論、協議を行った。結論を言うと、私が先頭に立つ」


 胸に手を当て、オリヴァーはそう述べた。


「一族の格式などを考えると、私で良いのかという疑問はあるのだが……勇者トキヤに手紙を託された者、ということで同胞達は納得した」

「……なんだか、俺が来たから負担が大きいような気がするけど」

「構わないさ……それに、勇者トキヤとしてもやりやすいだろう」

「まあ、そこはあるかな……俺達は、あなた達が動く間に悪魔に関する調査を進めよう。魔王の側近達の兵力……その中心は、悪魔になるだろうからな」

「こちらにも魔物を生成する手段はある。とはいえ、魔物という面については向こうに部がある上、側近達に手を貸している多種族のことについて、能力などは不明だ」

「そこも俺達が調べる……いや、どういった存在が手を貸しているか、ある程度情報がなければ無理か」

「側近達はそこについて秘匿をするだろう……情報戦は現時点で負けている。側近達は私達の能力はつぶさに把握しているからな。しかし」


 オリヴァーは眼光鋭く、続けた。


「負けるつもりはない……私達の力で、側近達を、倒す」


 その言葉は、とても力強く、この場に集った魔族達もまた、決意に満ちていた。


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