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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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魔族達の決断

 俺達は雑談を続けつつ周辺を調査したが、悪魔がいるような痕跡は見当たらなかった。

 もしかすると、俺達がいることで魔王の側近達は警戒したのかもしれない……それならそれで好都合ではある。オリヴァーの動きが邪魔されないわけだから。


 そして彼の呼びかけは成功し、彼の屋敷に多数の魔族……しかも高位の魔族が集った。俺達はさすがに屋敷の外へ出て様子を窺うことにする。


「……相当、頑張ったと思う」


 と、屋敷に入る魔族達を見てフィリスはそう呟いた……オリヴァーのことだ。


「私達と顔を合わせて数日で、あれだけの魔族を呼んだ……私でも顔を知っている同胞もいる。結集すれば、確実に一大勢力になる」

「後は彼らを魔族オリヴァーが説得できるか否か、だな」


 俺達は遠巻きにその様子を眺め……ただ結果がわかるまで待ち続ける。

 風が流れ、俺達の体を吹き抜けていく……悪魔もいない魔族の領域は平穏で、当然だが空の色は変わらず、周囲の木々や草花もさほど変わりがあるわけではない。


 ただ、魔族達が暮らしているためなのか、自然豊かなこの場所でもどこか荒涼とした印象を受ける……俺達はほとんど会話もせず、ただ話し合いの終わりを待つ。

 ひとまず議論が紛糾し怒鳴り散らすような様子はなさそうだが……やがて、魔族達が屋敷に入り一時間ほどした時だろうか。明らかに屋敷内で魔族達が動く気配があった。


「終わったようですね」


 メルも俺と同じ見解か、口を開く。少しして、屋敷から魔族オリヴァーが姿を現した。

 何をするのか、と思っていたら俺達がいる方向へ彼は手を振った。屋敷の外で様子を窺うと知っているので、それは明らかに俺達へ向けられたものだ。


「……こっちに来いと言っているみたいだな。話し合いの際に俺達のことも話したか」

「魔族オリヴァーが説得され、ここで私達を倒すことにしよう、と結託した可能性もありますが」


 メルが警戒を込め呟く。確かにそうなんだが……ちなみにこの間にも屋敷を訪れた魔族がぞろぞろと出てくる。そうした彼らに、殺気などはまったくない。

 ……俺の目から見て、魔族オリヴァーは説得に成功したように見られた。とはいえ、完全に警戒を解くこともできない。


「……俺が先頭を歩く。メル達は数歩後ろでついてきてくれ」

「わかりました」


 メルの指示に従う返事を聞いた後、俺は歩き出す。ゆっくりと、地面を踏みしめ近づくのを、魔族達はじっと佇み見ている。

 やがて十メートルほど手前まで到達した時、俺は立ち止まる。


「悪いが、完全に警戒を解くわけにはいかない」

「ああ、わかっている。どのような状況下でも、警戒を緩めないその姿は、さすがといったところか」


 オリヴァーはそう述べた後、俺達へ告げる。


「合議の結果を言わせてもらおう。私達は、戦うことを決意した」

「魔王の側近達を、討つと」

「そうだ……側近達、いや奴ら反逆者は、陛下の全てをもてあそんだ。陛下が潰えたことで謀略を始めたのか、それとも復讐のためかはわからない。だが確実に言えるのは、陛下の魂を愚弄するような行為を、現在も行っていることだけだ」


 オリヴァーの言葉には怒りが満ちていた。


「そして陛下だけではない……妃様もまた、奴らの犠牲となった。私達はこれを許すことはできないと結論づけ、戦う道を選ぶ」


 ……魔族の中には、号泣でもしたのか赤い目をした者もいる。間違いなく、リドーテの手紙によって……魔王の妻が記した手紙によって、彼らは一つとなった。


「そこで、一つ確認だ……勇者トキヤ」

「ああ」

「私達が手を貸してほしいと望むのであれば、貴殿は戦線に加わってくれるのか?」

「それが犠牲を減らすことに繋がるのであれば」


 数名の魔族がおお、と声を上げる。魔王を倒した勇者の参戦……そこについて、俺の言葉から聞いて驚いている様子。


「……皮肉なものだな」


 そうした中、オリヴァーが口を開く。


「陛下と戦っていた勇者が、魔族に手を貸すなど」

「俺は魔族が憎いわけではないよ……異世界の人間だからこそ、この世界の人とは価値観も違う。俺は平和のため魔王と二度戦った人間だ……俺としても、魔王という存在を利用し思うがままに動く側近達は、倒さなければならないと思っている」

「彼らが世を乱すからか」

「そうだ」


 そこでオリヴァーは目を細める。


「……勇者トキヤ、貴殿は陛下について調査をするためこの島を訪れた」

「そうだな」

「しかし、戦いに加わることは本来の仕事とは逸脱するだろう……だが、むしろ貴殿は現状を受け入れている。調査が目的であることは間違いないようだが……最終目標は、別のところにあるようだな」


 オリヴァーは告げる。俺の目的が何かをわかっているような雰囲気が見て取れた。


「可能であれば、そこについて教えてもらっていいだろうか?」

「……わかった」


 俺は彼の言葉に応じ、魔族達へ向け発言を始めた。


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