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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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魔族の覚悟

「……俺達としては、より詳細な情報を得たいと考えている。その中で、魔王に関し詳しい話が聞ける存在はいるか?」


 そう言いつつ、俺はオリヴァーを見据え、


「あなたは魔王に近しい存在だったみたいだから、あなたの話を聞くということでも構わないんだが……」

「私は確かに陛下の城の中で仕事をしていた身だが、より詳しい……それこそ、陛下に近しい存在は他にいる。例えば、陛下の妃様などがあげられるが」

「……今も魔王の城にいるのか?」

「先日、亡くなられたと発表され……が、同胞達によって謀殺されたのでは、とも言われている……これも、表だって言う同胞はいないが」

「そう語られる根拠はあるのか?」


 こちらが聞き返すと、オリヴァーは一時沈黙した後、


「具体的な証拠などはない。ただ陛下の姿が見られない中で、命令だけが飛んでくるような状況である以上、もしこの命令が陛下の側近によるものだとしたら……陛下の妃は反発するだろうし、その結果――」

「状況的に、謀殺されているかもしれないと」


 重々しくオリヴァーは頷く。ふむ、これなら――


「あなたは魔王の妃と親交はあったのか?」

「城にいた以上、会話をする機会はあったな。とはいえプライベートな話をするようなことはなかった。交わした内容は主に執政に関することだ」

「執政? 魔王の妃は政治に関与していたのか?」

「妃様自身は政治を動かしているわけではなく、陛下の代行者として色々と動いていただけだ」

「代行者……か」

「あの御方はそれこそ、平穏を求める方だった。陛下は苛烈な性格ではあったが、二十年前、貴殿と戦うまでは戦争を引き起こすようなことはなかったのは、妃様の存在も大きかったように思う。もっとも」


 と、オリヴァーはそう語りながらも肩をすくめ、


「それはあくまで表立っての話だ。側近達から話を聞き、謀略により動いていたのは間違いない」

「あなたはそうした謀略に関わりが?」

「残念ながらそういう分野に携わることはなかった」

「そうか……」


 彼の言葉を聞き、俺は踏ん切りがついた。


「……俺は魔族の領域を訪れるより前に、ジャルヴァ家の魔族アベルと、別の魔族と顔を合わせ、手紙を託された」

「別の魔族?」

「その者は、魔王の妃……その従者であると語っていた」


 俺の言葉にオリヴァーは目を見開く。


「次いで、妃より手紙を託された……事の真相全てを記した物であると」


 そう言った後、俺は懐から手紙を取り出す。その時点で、オリヴァーは明らかに目の色を変えた。


「その封に刻まれた魔法は……」

「わかったみたいだな。妃の従者が言うには、この封自体が極めて特殊なものであり、これを示せば誰が封をしたのかわかると」

「ああ、そうだな……それはまさしく、妃様が封をした物だ」


 オリヴァーは手紙から目線を離すことなく告げる。


「それには、真実が書かれていると?」

「……俺はこの手紙を従者から託されたのは事実だが、その内容についてはおおまかな話を聞いただけで、詳細はわからない」


 そう俺はオリヴァーへ応じる。


「封を切れば当然、魔族へ渡しても信用してもらえないだろうからな……ただ、妃の従者はいくらか魔王の妃から話は聞いていた。その内容だけでも……魔族の領域をひっくり返すには十分だろうと思う」

「――手紙を託せる魔族を探していた、というわけか。それで、ジャルヴァ家の推薦もあって私に今、手紙を渡そうとしていると」


 オリヴァーの言葉に俺は頷いた。


「妃の従者から話を聞いて、何をすべきか道は見えている……が、あなたが俺の目論見通りに動くとは限らないし、どうなるかは未知数だ。けれど、現状を変えなければならないのもまた事実」

「ああ、そうだな……その手紙の内容を改めるのは、私でいいのか?」

「……おそらく、この手紙には全てを覆す内容があるかもしれない」


 俺はそう言いながら手紙を一瞥する。


「だからこそ、手紙を託す以上は……覚悟があるのかを問いたい。俺達にとってこれは、一度しか使えない切り札でもある。こちらの目的を成就させるものである以上は、確認しておきたい」

「覚悟……今の陛下を否定する事実があったとして、変革する覚悟があるかと」

「そうだ」


 オリヴァーは手紙を見据えながら、思考する。俺は待つ構えをとり、仲間達も彼の言葉を待つ。

 少なくとも、こちらの言葉を無下にする様子はないが……やがて、


「いいだろう、手紙を確認してもいいか?」

「ああ」

「……ただ、私に貴殿が考えるような結果を生み出せるかはわからないぞ」

「そこは百も承知だよ」


 手紙を渡す。オリヴァーはゆっくりとした動作で、封を切る。


「内容はここで確認させてもらうが、いいか?」

「ああ」


 返事にオリヴァーは封筒から手紙を取り出し、読み始める。

 その間は、無表情であった。感情を表に出さないよう努めているようにも見え……やがて一読した後、口を開いた。


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