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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第三話

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あらゆる可能性

「……俺達がここを訪れたのは、魔王に関する調査だ。魔王が一体何をしようとしているのか。十年前の戦争を再び引き起こそうとしているのであれば、それを止めるために動く必要がある」

「天王達と連携して動いているのか?」


 魔族オリヴァーの問い掛けに俺は頷き、


「そうだな……魔族の領域に入り込んだ点についてはもちろんリスクはある。だが、魔王と二度戦った俺としては……今回の魔王の行動はなんだか奇妙に思える。だから気になって調べているという面もある」

「奇妙、とは?」

「端的に言えば、やり方が十年前と比べて手ぬるいんじゃないかと。それこそ十年前のように、大陸側に気付かれず奇襲するくらいはできるはずだ」


 俺の言葉にオリヴァーは沈黙する……が、こちらの言葉に同意しているようにも感じられた。


「もしかしたら、魔王は復活していないのでは? と俺は推測した。けれど確証がない以上、そういうのを含め調査をしようと俺は決断した……で、天王の手引きで大陸へ逃れてきたジャルヴァ家の魔族と顔を合わせ、この場所を訪れた」

「そうか……」

「可能であれば情報のすりあわせを行いたい。まず、そうだな……現在の魔王の活動について、どう考えている?」


 俺の問い掛けにオリヴァーは一時沈黙する……こちらは敵意などはない声音であり、少なくとも向こう側が不快感を抱いているようには見えない。

 ひとまず、助けた恩もあってちゃんと話はしてくれるようだ……第一関門は突破できたと考えていい。ただ問題はここから――


「……この部屋へ来る前に、貴殿から渡された手紙を確認した」


 オリヴァーは口を開く。


「手紙を書いたアベル君も推測していたようだが……確かに、陛下の復活に関し疑う者もいるのは事実だ」

「確証はないんだな?」

「ああ、私自身陛下の居城を離れて久しい……というより、十年前の戦争。あの時点で離れていたからな。私としても何一つ情報がない状況であり、その一方で疑問を持っている。今回の戦い……すなわちフリューレ王国に対する侵攻は、陛下の指示によるものなのかと」

「魔王の側近達が、復活したと偽装して指示を出している、みたいな話か」

「そうだ」


 沈鬱な面持ちでオリヴァーは語る……その様子は、何が起こっているのか彼なりに理解しているのかもしれない。


「……陛下の近くにいたからといって、陛下の全てを理解していたわけではない。確実に言えるのは、陛下が変わってしまったことだけ……十年前の戦争――いや、復活した時から」

「……普通に考えるなら、俺と戦い敗北したからと考えることができるな」


 こちらの言及にオリヴァーは「そうだな」と同意する。


「私も復活後、急進的な行動に復讐だろうという考えがあった。しかし、同胞の犠牲を顧みることなく全てを破壊しようとするそのやり方は、貴殿と戦う前の陛下とは何もかも違っていた」

「……仮の、話なんだが」


 俺は慎重に、彼へ問い掛ける。


「魔王が復活した……その事実すらも魔王の側近が施した策であったとするなら、どうする?」

「つまりそれは、十年前の戦争の時点で陛下は別物であった、という話か?」

「あくまで仮の話だが」


 問い掛けにオリヴァーは唸る。だがそれを想像した時点で……彼の瞳には、力強い何かが宿っていた。


「もしそうであれば、もはや側近達に同胞を統治する資格はない……だが、十年前の陛下は、私の目から見ても陛下そのものであった。それを踏まえると、復讐心に駆られ動き出した、という風に考えている」

「そうか……」


 さて、ここからどう話をするか。雰囲気的にリドーテの手紙を渡しても十二分に効果がありそうではあるが――


「そちらは」


 と、オリヴァーは俺へ話しかける。


「十年前の戦争……陛下の存在を疑っているのか?」

「……俺が顔を合わせたのはたった二度だけだ。正直、魔王が本物か偽物かなんて判別する余裕はなかったし、魔力を精査してもわからなかっただろう……俺が疑問を呈するのは、単純にあらゆる可能性を考慮してのことだ。調査である以上、多角的に色々と検討すべき……そんな風に思い、動いている」

「あらゆる可能性……か」

「あなたは先ほど、従うか反逆かと語った。仮に、今の魔王が偽物であったとしたら……確固たる情報があれば、動くのか?」

「……現在の陛下、その指示に対し思うところがある同胞は、迷っているのが原因だ。偽物であったのなら、陛下の側近達に迷わず反旗を翻すだろう」

「……そうか」


 彼が反逆し、反乱の長になるかは不明だが、立場上重要な位置に座ることになるだろう。

 そしてオリヴァーの目は、迷っている風にも見える……俺は一度仲間達へ目を向ける。彼女達は同時に頷いた。いけるだろう、という意見で一致していた。


 ならば……俺は呼吸を整えた後、改めてオリヴァーへと問い掛けた。


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