顔を上げて
ミカイラはしばらく黙っていた。
そして――
「ふーん……」
キランが彼女を見る。
ミカイラの表情が、妙に真剣になった。
真剣すぎる。
「つまり……」
首を傾げる。
「私のこと、大切に思ってるんだ?」
キランが固まった。
あれだけいろいろ話したのに――
*そこ*に食いつくのか?
「俺、そんなこと言った?」
ミカイラの顔に笑みが浮かんだ。
キランは即座に目を逸らす。
「いや、その……」
頭の中で必死に逃げ道を探す。
「俺は……」
何も出てこない。
ミカイラが小さく笑った。
そして彼女の手が、キランの顎の下へ伸びる。
そっと顔を持ち上げた。
「うつむかないで」
キランは彼女を見る。
ミカイラが近づく。
「私は、ちゃんと顔を上げてる男が好きなの」
キランの緊張が消えた。
その瞬間――
ネオンはいなかった。
破壊されたレストランも。
警察も。
犯罪との戦いも。
明日何が起こるのかという不安も。
ただ――
彼女だけ。
ミカイラがさらに顔を近づける。
そしてキランにキスをした。
キランの目が見開かれた。
それから、ゆっくりと閉じる。
シトロン・シティの光が、二人の周囲でぼやけていった。
マッハは何も言わず、そっと気を利かせて距離を取った。
今度は――
誰にも邪魔されなかった。
サイバー・ドラゴンも。
サイクロプスも。
スーパーヴィランも。
武装ギャングも。
ただのキス。
やがて、ミカイラが唇を離した。
それでも距離は近いまま。
とても近い。
彼女の瞳とキランの瞳が重なる。
「わあ……」
キランが笑った。
「女の子を楽しませるの、上手いんだな」
「努力してるからね」
ミカイラが笑う。
するとキランの表情が、ふいに疑わしげなものへ変わった。
もちろん、冗談めいた意味で。
「待てよ」
コラージュの外で見たものを思い出した。
「本当にウルトラヴァイオレットをテーザーで倒したの?」
ミカイラはものすごく誇らしげな顔をした。
「やったよ」
キランがにやりと笑う。
「俺も」
ミカイラの目が見開かれた。
「ウソ!」
「ホント」
二人は再び歩道を進み始めた。
そしてなぜか――
あれだけのことがあったというのに――
二人は笑っていた。
ミカイラが首を振る。
「ねえ……」
キランを見る。
「これを超えるデートって、かなり難しそう」
キランが眉を上げる。
ミカイラはいたずらっぽく笑った。
「二回目は、もっと面白いのを期待してるから」
キランが笑った。
「覚えとくよ」
とはいえ――
シトロン・シティでいう*面白い*が何を意味するのかを考えると――
キランは二回目のデートで何が起きるのか、あまり知りたいとは思わなかった。
シトロン・シティの光から遠く離れた場所――
夜空の下に、広大な砂漠が広がっていた。
孤立した軍事施設の周囲には、何キロにもわたって何もない。
サーチライトが強化された外壁を照らしながら動いている。
武装した兵士たちが検問所を巡回していた。
正面入口の上には、一つの名前が掲げられている。
**クリーガー軍事基地**
敷地内には、未来型の大型トラックが停車していた。
数人の兵士たちが、そこから巨大な木箱を降ろそうと苦戦している。
「ゆっくり!」
監督官がクリップボードを持って隣を歩く。
「気をつけろ」
兵士たちは持ち方を調整した。
箱は信じられないほど重い。
「傷一つでもつけたら、将軍に俺の首を取られるぞ」
側面には、大きな文字でたった一語が刻印され




