マッハ速度
三人目のネオンが角を曲がってきた。
「おい、中がヤベえことになってる! 俺たちも――」
足を止めた。
路地にはすでに、二人のネオンが意識を失って倒れている。
その間にいたのは――
キランとマッハ。
新たに現れたネオンは、ゆっくりとブラスターを持ち上げた。
目が見開かれる。
「……マジかよ」
撃つより先に――
**ドゴッ!**
金属の拳が後頭部へ叩き込まれた。
ネオンが倒れる。
キランは目を丸くした。
その背後には、強化外骨格を装着したレイモンドが立っていた。
「困ってそうだったからな……」
意識を失ったネオンを見下ろす。
「……ちょっと助けに来た」
キランは一瞬だけ笑った。
「助かる」
だが、すぐに表情が険しくなる。
「でも、まだ終わってない」
マッハがレストランへ振り返る。
「ネオンたちはコラージュを占拠したようです」
キランは即座に入口へ向かった。
「ミカイラがまだ中にいる!」
プラズマキャノンは展開されたまま。
「もしあいつらが彼女を傷つけたら、俺は――」
「そういうこと言うな」
レイモンドが隣へ並ぶ。
「そんなことにはさせない」
マッハは心配そうな顔をした。
「彼女がどれほど怖い思いをしているか……」
店内では――
ミカイラが手近にあった物を掴んだ。
装飾用の花瓶。
思い切り投げる。
**ゴンッ!**
ネオンの一人がよろめいた。
ワイルダー刑事が彼女を見る。
「いい肩してるな」
「どうも」
ワイルダーは倒れたテーブル越しに発砲した。
**バン! バン!**
レストランの反対側では――
ウルトラヴァイオレットの損傷したサイバネティック部品が、今も火花を散らしている。
グロウスティックは彼女を守るようにそばに立っていた。
ウルトラヴァイオレットは周囲の惨状を見渡した。
店中を巻き込んだ脅しの見せしめは、完全な大失敗になっていた。
「クソッ!」
近くにまた一発着弾する。
「なんてザマだ!」
顔が怒りで歪む。
「今すぐ終わらせるぞ!」
まだ抵抗している者たちを指さした。
「**全員殺せ!**」
その時――
正面玄関が勢いよく開いた。
キラン。
マッハ。
レイモンド。
三人はコラージュの中に広がる戦場を見つめた。
レーザー弾がレストランを飛び交っている。
テーブルはひっくり返されていた。
壁は焼け焦げている。
ミカイラとワイルダーは遮蔽物の後ろから動けない。
キランは一瞬で状況を確認した。
「よし、よし……」
レイモンドを見る。
「俺たちは左へ行く」
レイモンドが頷く。
「そっちは右、だな?」
「任せろ」
二手に分かれた。
キランがレストランを横切る。
**バシュッ! バシュッ!**
二人のネオンが身を伏せる。
別のプラズマ弾が壁へ命中した。
ミカイラが顔を上げる。
「キラン!」
その顔に安堵が広がった。
キランは彼女のところへ辿り着いた。
「俺たちが援護する!」
再び撃つ。
「入口まで走って、ここから出るんだ!」
ミカイラは一瞬ためらった。
それから頷く。
「分かった!」
走り出した。
キランはワイルダーと共に残る。
一瞬、二人の男は顔を見合わせた。
あまりの状況に、キランは笑いそうになった。
「ワイルダー刑事?」
頭上をレーザー弾が飛び抜ける。
「こんなこと言う日が来るとは思わなかったけど……」
キランが撃ち返す。
「……会えて嬉しいよ」
ワイルダーが笑った。
「俺もだ」
マッハは二人を交互に見る。
「なんとも幸運な偶然ですね」
レストランの反対側では――
レイモンドが一人の男を見つけた。
グロウスティック。
レイモンドの表情が変わる。
「お前!」
グロウスティックが振り返った。
レイモンドが突進する。
「借りを返させてもらうぞ」
二人が激突した。
レイモンドが相手を掴む。
グロウスティックも抵抗する。
レイモンドは腕のブラスターを向けようとする。
グロウスティックがそれを押しのける。
二人は床の上でもみ合った。
その頃――
キランは撃ち続けていた。
「そろそろ終わらせないと――」
**バシュッ!**
「ぐあっ!」
レーザーが肩へ命中した。
キランがよろめく。
マッハの目が見開かれた。
「キラン!」
瞬時に二人を包む球状のフォースフィールドが出現した。
さらに一発が直撃する。
**バキィン!**
キランは肩を押さえた。
ジャケットの生地が焼けている。
マッハが近づく。
「大丈夫ですか?」
キランは顔をしかめた。
「大丈夫」
残ったネオンたちを見る。
「ただ、もう終わらせたい」
マッハには、その意味がすぐに分かった。
キランの表情が鋭くなる。
「**マッハ速度で行くぞ!**」
マッハが笑う。
「起動します」
キランのスラスターが唸りを上げた。
そして――
**ドォン!**
消えた。
ワイルダーには瞬きをする暇さえなかった。
紫色の閃光がコラージュを駆け抜ける。
ネオンの一人が武器を構えた。
遅い。
**ドゴッ!**
撃沈。
別の一人が振り返る。
**バキッ!**
撃沈。
三人目は逃げようとした。
その真正面にキランが現れる。
「やあ」
ネオンが固まった。
**バシュッ!**
撃沈。
キランはレストラン中をジグザグに駆け抜けた。
左。
右。
上。
下。
まるで同時にあらゆる場所へ存在しているかのように。
ネオンたちは次々と倒れていく。
数秒後――
静寂。
ようやくキランが止まった。
床には意識を失ったネオンたちが何人も転がっている。
ワイルダーはゆっくりと銃をホルスターへ戻した。
キランを見る。
「次から最初にそれを使ったらどうだ?」
キランは息を吐いた。
「一回しか使えないんだ」
システムが冷却を開始する。
「だから、絶対に決められる時じゃないと使えない」
ウルトラヴァイオレットは、すでに外へ逃げ出していた。
コラージュからよろめきながら離れていく。
ミカイラに飲み物を浴びせられたサイバネティック部品からは、まだ火花が散っていた。
その時――
誰かを見つける。
ミカイラ。
建物の横に立っていた。
激しく息をしている。
これまでの騒ぎで疲れ、ひと息ついているところだった。
ウルトラ




