ディナーと銃撃戦
キランとミカイラが料理を待っている頃――
コラージュのオーナーは、まったく別の会話をしていた。
経営者用オフィスでは、数人のネオンが彼を押さえつけている。
ウルトラヴァイオレットは机の端に気楽そうに腰掛けていた。
グロウスティックは壁の金庫のそばに立っている。
「金は金庫の中だ」
オーナーはネオンたちの拘束から逃れようともがいた。
「持って行ってくれ。それで帰れ」
ウルトラヴァイオレットが笑う。
「もうちょっと居させてもらうよ」
オーナーの顔が青ざめた。
「なぜだ?」
グロウスティックの手からネオンの光線が放たれた。
**ジジジジッ!**
火花を散らしながら、金庫を焼き切り始める。
ウルトラヴァイオレットは身体を後ろへ預けた。
「名誉」
肩をすくめる。
「誠実さ」
また肩をすくめる。
「アタシにとっちゃ、どうでもいいことばっかりだ」
オーナーは彼女を見つめる。
「でも、アタシの協力者となれば……」
表情が真剣になる。
「……話は別だ」
ついに金庫が開いた。
グロウスティックが未来型クレジットの束を取り出し、彼女へ渡す。
ウルトラヴァイオレットは金を確認した。
「橋を渡りたいなら……」
笑う。
「……通行料を払わなきゃな」
オーナーは気分が悪そうな顔をした。
「どうもウチの協力者どもは、それが理解できねえらしい」
ウルトラヴァイオレットは机から降りた。
「まあ、商売は商売だ」
部下たちへ振り返る。
「フロアへ行け、お前ら」
ネオンたちは即座に部屋を出始めた。
「派手なショーを見せてやれ」
オーナーが慌てる。
「待て!」
必死に拘束を振りほどこうとする。
「やめろ!」
ウルトラヴァイオレットは振り返りもしなかった。
「商売の代償だと思いな」
「きゃああああっ!」
キランとミカイラが同時に振り返った。
テーブルがレストランを横切って吹き飛んでいく。
**ガシャァン!**
人々が悲鳴を上げた。
ガラスが砕け散る。
ネオンたちがダイニングフロアへなだれ込んできた。
一人が椅子を投げる。
別の一人がディスプレイを破壊する。
客たちは出口へ殺到した。
その混乱の中心を――
ウルトラヴァイオレットは平然と歩いていた。
「悪いね、みんな!」
両腕を広げる。
「恨むならオーナーを恨みな!」
そして笑った。
「ああ」
自分を指す。
「それ、アタシらだったわ」
キランの穏やかなデート気分は一瞬で消え去った。
ミカイラは席に座ったまま、どうにか冷静さを保とうとしている。
マッハがキランのそばへ現れた。
ウルトラヴァイオレットは店内を歩き続ける。
「焦んなって……」
店の反対側では――
ワイルダー刑事が静かに事件資料を下ろしていた。
手が銃へ伸びる。
「バカな真似すんな……」
レストランはすでに滅茶苦茶だった。
逃げられた客もいる。
恐怖で動けない者もいる。
ウルトラヴァイオレットが笑う。
「すぐに全部終わるからよ」
マッハが彼女を見つめた。
「ネオン?」
目を見開く。
「逮捕されたはずでは?」
「されたよ」
ミカイラが即座にキランを見る。
「知り合いなの?」
キランが答えるより先に――
ウルトラヴァイオレットが二人のテーブルに気づいた。
その表情が明るくなる。
「おやおや」
近づいてくる。
「仲の良さそうなカップルじゃねえか」
キランの胃が沈んだ。
*頼むから、そのまま通り過ぎてくれ。*
ウルトラヴァイオレットは通り過ぎなかった。
もちろん。
椅子を引き寄せる。
「なあ……」
腰掛ける。
「面白いもんだな」
キランとミカイラは身動きしなかった。
ウルトラヴァイオレットはキランを見る。
次にマッハ。
目が細くなる。
「どうにも、前に会ったことがある気がすんだよな」
キランは無理やりぎこちない笑顔を作った。
「アタシらのシマに来たことあったか?」
「えっと……」
ウルトラヴァイオレットはじっと見続ける。
そして――
思い出した。
「ああ」
表情が険しくなる。
「思い出した」
**パチン!**
指を鳴らす。
二人のネオンがキランを掴んだ。
「な――!?」
キランがもがく。
ウルトラヴァイオレットは勢いよく立ち上がった。
「アタシらをチクったクソ野郎じゃねえか!」
怒りで顔が歪む。
「お前のせいで、どんだけ損したと思ってんだ!」
ミカイラが立ち上がった。
「ちょっと!」
ウルトラヴァイオレットは出口を指さす。
「外に連れてけ。少し教育してやれ」
「キラン!」
ネオンたちがキランの車椅子を無理やりテーブルから離していく。
キランはミカイラを振り返った。
「心配するな!」
自分が感じているより遥かに自信ありげな声を作る。
「すぐ戻る!」
ウルトラヴァイオレットは連れて行かれる彼を見送った。
「ずいぶん自信満々な野郎だな」
外では――
レイモンドが車の中に座っていた。
待機中。
約束した通りに。
のんびりと軽食を食べている。
その時――
何かが視界に入った。
レイモンドはコラージュを見る。
手から食べ物が落ちた。
二人のネオンが、キランを暗い路地へ押していく。
レイモンドは目を見開いた。
「何だありゃ?」
店内では――
ウルトラヴァイオレットがキランのテーブルへ戻ってきた。
ミカイラはまだそこにいる。
緊張している。
ものすごく。
ウルトラヴァイオレットが笑った。
「ずいぶん緊張してんな」
彼女の隣には、光るボトルを持ったネオンが立っている。
ウルトラヴァイオレットは彼を見る。
そして怒鳴った。
「突っ立ってんじゃねえ!」
ネオンがビクッとする。
「素敵なお嬢さんに一杯注いでやれ」
ミカイラは何も言わなかった。
光る液体がグラスへ注がれる。
ウルトラヴァイオレットが顔を近づけた。
「なあ、姉ちゃん……」
ミカイラを上から下まで眺める。
「あんたみたいないい女が、なんであんな障害者のクソ野郎と一緒にいんだ?」
ミカイラの表情が即座に険しくなった。
「彼のことをそんなふうに言わないで」
ウルトラヴァイオレットが鼻で笑う。
「じゃなきゃ何だ?」
ミカイラの指がグラスを握りしめる。
「アタシを説教でもすんのか?」
ミカイラはグラスを持ち上げた。
ウルトラヴァイオレットが反応する暇はほとんどなかった。
**バシャッ!**
「うあっ!」
液体が全身にかかる。
サイバネティック部品から火花が噴き出した。
**ジジッ!**
ウルトラヴァイオレットがよろめく。
ミカイラは走り出した。
「待ちやがれ!」
ウルトラヴァイオレットが指さす。
「あのクソ女を捕まえろ!」
二人のネオンがミカイラを追う。
彼女は走った




