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残る挑戦はただ一つ

レイモンドは、あと少しで辿り着くところだった。

キランとマッハは、サイバー・ドラゴンとサイバー・サイクロプスをターンテーブルから引き離し続けている。

**ピュン! ピュン! ピュン! ピュン!**

プラズマ弾がクラブ内を駆け抜けた。

ドラゴンが咆哮する。

サイクロプスが腕を振るう。

キランは二体の間を飛び抜けた。

「ほら、来い!」

ドラゴンの爪の下をひねるようにかわす。

「俺だけ見てろ!」

作戦はうまくいっていた。

だいたいは。

ナオミとDJ Kre8は怪物を操ることに夢中で、背後から近づいてくるレイモンドに気づいていなかった。

レイモンドが腕を上げる。

武器にエネルギーが集まった。

狙いはターンテーブル。

一発。

それだけでいい。

**バドォン!**

外れた。

砲撃はナオミとDJ Kre8の背後で爆発した。

「なに――」

ナオミが振り返る。

レイモンドを見た瞬間、その目が見開かれた。

そして――

「ちょっと、ふざけんな!」

DJ Kre8が即座に音楽を切り替えた。

サイバー・サイクロプスがキランを追うのをやめる。

キランの目が見開かれた。

「レイモンド!」

サイクロプスが振り返った。

巨大な拳が振り抜かれる。

**ドゴッ!**

「ぐぅっ!」

レイモンドがクラブの反対側まで吹き飛ばされた。

激しく床へ叩きつけられる。

「レイモンド!」

キランは彼のもとへ向かおうとした。

だがサイバー・ドラゴンが進路を塞ぐ。

口から炎が噴き出した。

キランは回避する。

レイモンドは身体を起こした。

「俺は大丈夫だ!」

それはかなり怪しかった。

ナオミはライブ配信を見る。

「数字は?」

DJ Kre8が確認した。

笑みが広がる。

「爆上がりだ」

ナオミが笑った。

まさに望んでいたものだった。

キランとレイモンドは空中で合流した。

片側からドラゴン。

反対側からサイクロプス。

「こいつら全然止まらねえぞ!」レイモンドが叫ぶ。

「分かってる、分かってる!」

キランが急旋回する。

ドラゴンの爪が空を切った。

ギリギリだった。

その時、マッハが何かに気づく。

「キラン!」

キランが振り向く。

ドラゴンとサイクロプスの間――

隙間。

小さい。

だが、確かにある。

マッハが指さした。

「見てください! 隙があります!」

キランの目が見開かれる。

「そこだ!」

二体の怪物が隙間を閉じ始める。

キランは操縦装置を強く握った。

「マッハ速度で行くぞ!」

マッハが笑う。

「喜んで」

キランのスラスターが点火した。

**ドォン!**

姿が消えた。

ナオミの笑顔が消える。

「え――?」

紫色の閃光が、サイバー・ドラゴンとサイバー・サイクロプスの間を一直線に突き抜けた。

速すぎる。

どちらの怪物も反応できない。

次の瞬間、キランはナオミとDJ Kre8の真正面にいた。

二人の目が見開かれる。

キランのプラズマキャノンにエネルギーが集まった。

「ショーは終わりだ」

**バルゥゥン!**

砲撃がターンテーブルを直撃した。

「きゃあっ!」

ナオミとDJ Kre8が後方へ吹き飛ばされる。

機材が爆発した。

火花が飛び散る。

音楽が止まった。

その瞬間――

サイバー・ドラゴンがちらついた。

続いてサイバー・サイクロプスも。

二体の身体が半透明になる。

そして――

消滅した。

ヴァリアントを静寂が包んだ。

キランが降下する。

レイモンドも隣へ降りた。

ナオミはDJ Kre8のそばで床に倒れ、怪我を負い、朦朧としていた。

キランは二人を見る。

「こんなことになる必要はなかった」

ナオミが呻く。

キランの表情が険しくなった。

「本当に、それだけの価値があったのか?」

ナオミはゆっくりと頭を上げた。

「と、と……撮れ……」

キランは眉をひそめる。

「何?」

ナオミの目がカメラへ向く。

「今の……ちゃんと撮れてた……?」

キランは無言で彼女を見つめた。

レイモンドが腕を組む。

マッハはため息をついた。

やっぱりか。

その後――

警察がヴァリアントへなだれ込んだ。

デジタル式の立入禁止テープが、破壊されたダンスフロアを封鎖している。

警官たちがナオミに拘束具をつけ、DJ Kre8は停止させられた。

キラン、マッハ、レイモンドは少し離れた場所からその様子を見ていた。

すると――

「それで……」

キランは目を閉じた。

聞き覚えのある声。

アダムがパトロールと共に近づいてくる。

「これからは、俺たちの仕事まで全部やるつもりか?」

キランが振り返る。

アダムは両腕を広げた。

「もう全員、バッジを返して帰ればいいのか?」

キランが笑う。

「それもいいかもな」

アダムの表情が一気に険しくなる。

「お前に任せるわけにはいかないんだよ」

パトロールがすぐ前へ出た。

「我々はナオミを追い詰める寸前だった」

キランが眉を上げる。

「そうなの?」

「君が我々の捜査を邪魔したんだ」

アダムが頷く。

「俺たちだけでも捕まえられた」

マッハは二人の警官を見つめた。

「もちろんでしょうとも」

キランが鼻で笑う。

レイモンドも笑った。

三人は出口へ向かい始める。

アダムの顔が赤くなった。

「おい!」

キランはそのまま進む。

「どこ行くんだよ!?」

アダムが追いかける。

「まだ話は終わってないぞ!」

キランは肩越しに振り返った。

「こういう楽しいおしゃべりは大好きなんだけど……」

笑う。

「……もっと行きたい場所があるんでね」

アダムが足を止めた。

キランは手を振る。

「でも心配するな。また会うだろ」

マッハが小声で付け加える。

「残念ながら」

キランは笑いながら外へ出ていった。

翌日――

シトロン・アカデミーはいつもの日常へ戻っていた。

あるいは――

キランの人生における「日常」と呼べる程度には。

キランとマッハは、生徒たちが行き交う廊下を進んでいた。

キランが笑う。

「いやあ……」

首を振る。

「今回のことで、もう二度とSNSには戻らない気がする」

マッハが頷く。

「全面的に同意します」

「それに……」

キランは肩の力を抜いた。

「そのぶん、今をもっと楽しめる」

微笑む。

「カルペ・ディエムってやつだ」

その時――

キランは彼女を見つけた。

ミカイラが自分の教室の外に立っていた。

最後の生徒たちが教室へ入っていく中、壁にもたれている。

キランの表情が一気に明るくなった。

「そういえば……」

マッハが微笑む。

キランは彼女へ近づいた。

「やあ、久しぶり」

ミカイラが彼を見る。

その表情がぱっと明るくなった。

「キラン」

最後の生徒たちが教室へ入る。

やがて――

廊下には誰もいなくなった。

キランは彼女の隣で止まる。

「庭園で急に置いていって悪かった」

首の後ろをさする。

「ちょっと大変なことになってさ」

ミカイラは気にしていないように手を振った。

「知ってる」

笑う。

「二十六世紀にドラゴンを見るなんて、そうそうないものね」

「サイバー・ドラゴン」

ミカイラが笑った。

キランも笑う。

だが、その自信はすぐに消えた。

ここからが難関だった。

「それで……」

キランは唾を飲み込む。

「今週末、何してるのかなって思って」

ミカイラは彼を見る。

「空いてる?」

彼女の表情が変わった。

「うーん……」

キランの胃が沈む。

「たぶん無理かな」

ああ。

「妹が街に来ることになってて、今週末に会う約束してるの」

キランは落胆を見せないようにした。

ミカイラが続ける。

「もう少し早く誘ってくれてたら、別の日に変えられたかもしれないけど」

キランはぎこちなく笑った。

あまりにもぎこちなく。

「ああ、そっか」

後ろへ下がり始める。

「うん。大丈夫。全然気にしてない」

マッハが見守る。

「また今度だな」

キランは車椅子の向きを変えた。

「うん。オーケー。大丈夫」

そのまま走り去ろうとする。

「キラン」

止まった。

「ん?」

振り返る。

ミカイラは笑っていた。

申し訳なさそうな笑顔ではない。

いたずらっぽい笑顔。

「冗談よ」

キランは固まった。

マッハの目も見開かれる。

ミカイラが笑う。

「喜んで行く」

キランの顔が一変した。

「本当に?」

「土曜の夜でいい?」

少し考える。

「そうね……六時くらい?」

キランは危うく即答するところだった。

「う、うん!」

咳払いする。

「完璧!」

**キーンコーン!**

学校のベルが鳴った。

ミカイラが教室へ向かい始める。

その時、キランはあることに気づいた。

「待って!」

彼女が振り返る。

「場所を決めてない」

ミカイラが微笑んだ。

「驚かせて」

そう言い残し、教室の中へ消えていった。

キランは廊下に残された。

「……よし」

笑う。

「分かった」

ドアが閉まった。

マッハが彼を見る。

「おめでとうございます」

キランは大きく息を吐いた。

「ふぅ……」

廊下を進み始める。

「ありがとう」

笑みが広がった。

「一瞬、本気で断られたと思った」

マッハも後を追う。

「少なくとも、一番難しいところは終わりましたね」

キランが彼を見る。

「どこへ連れていくか、もう考えているんですか?」

「たぶんな」

キランはすでにいくつか候補を考えていた。

「コラージュっていう新しい店ができたらしくて、結構面白そうなんだ」

マッハが頷く。

「高級そうな名前ですね」

「ああ」

キランが笑う。

だが――

その笑顔がゆっくりと消えた。

動きを止める。

マッハが気づいた。

「どうしました?」

キランは前を見つめた。

デートの約束はできた。

時間も決まった。

場所の候補だってある。

だが、ミカイラと一晩を過ごしたいからといって、簡単に無視できるものではない部分が、彼の生活にはあった。

「さて……」

キランの表情に不安が浮かぶ。

「……残る挑戦は、ただ一つ」

マッハにはもう分かっていた。

キランはため息をつく。

「介助をどう調整するか、だな」

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