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血を見せろ

ナオミの手は、ターンテーブルのすぐそばに置かれたままだった。

DJ Kre8も彼女の隣に陣取る。

二人とも、部屋の影に立つ見知らぬ男を信用していなかった。

ほんの少しも。

ナオミは男を睨みつける。

「アンタがどこの誰なのか知らないけど……」

指先がコントロールの上を漂う。

「……どうやってここに入ったのかも知らない」

サヴァントは何も答えなかった。

ナオミの表情が険しくなる。

「でも、さっさと出ていかないと……」

ターンテーブルの周囲で音楽エネルギーがちらつき始める。

「……二度と自分の足で歩けなくしてやるよ!」

DJ Kre8が頷く。

「マジだぜ!」

それでもサヴァントに焦った様子はなかった。

「疑ってはいない」

彼はゆっくりと部屋を歩きながら、その姿の大半を暗闇に隠したままだった。

「だが、それでも君のチャンネルが落ち目であるという事実は変わらない」

ナオミの顎に力が入る。

「アンタに何の関係があるの?」

サヴァントが足を止める。

「我々には共通の悩みがある。キラン・キリアンと、そのVentだ」

ナオミの表情が変わった。

「あの負け犬のこと?」

「ふむ」

サヴァントが微笑む。

「そうだ」

ナオミはわずかに警戒を緩めた。

「で? 何か解決策でもあるわけ?」

DJ Kre8は違った。

今も疑いの目で見知らぬ男を睨んでいる。

「なんでこんな道化に付き合ってんだよ?」

サヴァントは平然としていた。

「五分」

ドアを示す。

「話を聞き終えて、気に入らなければ……」

笑みが広がった。

「……私は『さっさと出ていく』としよう」

ナオミはDJ Kre8を見る。

五分。

それくらいなら。

「いいよ」

サヴァントが話し始める。

「自分の視聴者のことは理解しているのだろう?」

ナオミは腕を組んだ。

「当たり前」

「彼らは君に何を求めている?」

ナオミは即答した。

「イケてる映像」

DJ Kre8も続く。

「激ヤバなビート」

「アクション」

サヴァントは二人を見比べた。

「違う」

ナオミの眉が下がる。

「は?」

サヴァントはノートパソコンを示した。

「コメントを読め」

「もう読んだ」

「もっとよく見ろ」

ナオミは見たくなかった。

もう十分だった。

罵倒。

低評価。

チャンネルがクソだというコメント。

もっと面白いものを見せろという要求。

それでも――

彼女はもう一度見た。

ナオミがスクロールする。

最初に目に入ったのは、予想通りのものだった。

だが――

あることに気づいた。

パターン。

もっと暴力を見せろというコメント。

キランが逃げるのが早すぎたという不満。

サイクロプスが本当に彼を潰すところを見たかったという声。

爆発を求める者。

怪我を求める者。

痛み。

血。

ナオミの指が止まった。

サヴァントが背後へ移動する。

「分かったか?」

ナオミは答えなかった。

サヴァントは彼女の両肩へ優しく手を置いた。

DJ Kre8は今も居心地悪そうに見ている。

だがナオミは――

気づいてすらいないようだった。

「連中は歌や踊りを見るために来ているのではない」

サヴァントがさらに顔を近づける。

「血を見るために来ている」

ナオミはコメントを見つめた。

視聴者たちは、サイバー・サイクロプスを嫌っていたわけではない。

戦いが早く終わりすぎたことを嫌っていた。

誰も大怪我をしなかったことを。

見世物が、まだ足りなかったことを。

サヴァントの声は、まるで彼女を落ち着かせるように穏やかになった。

「再生数が欲しいのなら……」

ナオミはゆっくりと彼を見る。

「……望み通り、すべて見せてやれ」

翌朝――

シトロン・アカデミー。

キランとマッハは教室へ向かって廊下を進んでいた。

周囲には生徒たち。

話している者。

笑っている者。

大半はスマホを見ている。

一方、キランが考えていたのは――

サイバー・ドラゴンやサイクロプスよりも遥かに恐ろしいものだった。

採点。

「参ったな……」

ため息をつく。

「今日はマジで**全然**準備できてない」

マッハが彼を見る。

「どうしてです?」

キランは顔をしかめた。

「昨日のちょっとした騒ぎのせいで、課題の採点を完全に忘れてた」

マッハは問題について考える。

キランは期待するように彼を見る。

「アイデア待ってるんだけど」

「家族に緊急事態があったと言ってみては?」

キランは首を振る。

「あるいは体調不良だったと」

「いや」

キランは教室へ入った。

「そういうので生徒を誤魔化したくない」

ため息をつく。

「素直に認めて、怒られるしかないな」

少し間を置く。

「最近は慣れてきたよ」

マッハを見る。

「文字通り、殴られることにはな」

マッハは笑わなかった。

キランは眉をひそめる。

「ウケないな」

教室へ入る。

生徒たちは妙に静かだった。

小声で話している者もいる。

キランを見つめている者もいる。

何人かはスマホを手にしていた。

キランは気づかなかった。

教室の前へ移動し、プレゼンテーション画面を起動する。

「よし、みんな。遅れて悪かった」

背後の画面にタイトルが表示された。

**ロマン主義文学**

キランが微笑む。

「さて……」

生徒たちへ向き直る。

「ロマン主義文学について、何か知ってる人?」

沈黙。

キランは待った。

「誰か?」

何もない。

「まあ、一番面白いテーマじゃないのは分かるけど――」

「キリアン先生?」

キランが止まった。

ヴィエイラが手を上げていた。

もう片方の手にはスマホ。

キランの目が細くなる。

*こいつら……。*

「ヴィエイラ、スマホ没収されたいのか?」

ヴィエイラはふてくされた。

「はいはい」

スマホを下ろす。

「ただ、名指しで挑戦されたことについてどう思ってるのかなって」

キランが瞬きをする。

「挑戦?」

その後――

**ギアのガレージ。**

キランはコンピューター画面を見つめていた。

隣にはマッハ。

その後ろにはレイモンド。

ギアはコンピューターのそばに座っている。

画面の中では――

ナオミとDJ Kre8がカメラを真正面から見ていた。

動画の再生数はすでに百万回を超えている。

ナオミが口を開く。

「これはキラン・キリアンと、そのギアボックスに送るよ」

マッハの表情が険しくなる。

キランも目を細めた。

ナオミは続ける。

「いいショーを見せてくれるとは思ってたけど……」

にやりと笑う。

「……まさか、あんな**ビビり**みたいに逃げ出すとは思わなかった!」

キランは画面を見つめた。

レイモンドが腕を組む。

動画は続く。

「でも、今日は気前がいいからね」

ナオミがカメラへ身を乗り出す。

「もう一回チャンスをあげる」

キランには、もう嫌な予感しかしなかった。

「汚名返上したい?」

ナオミが笑う。

「**ヴァリアント**でやる私たちのショーに来て、勝負しなよ」

指を二本立てる。

「二対二」

DJ Kre8がフレームへ割り込んだ。

「ビビってなければな!」

キランは何も言わなかった。

すると、ナオミの表情が変わった。

ふざけた口調が消える。

「それと、逃げようなんて考えないほうがいいよ」

まっすぐカメラを見つめた。

「アンタが来ても来なくても、ショーは続けるから……」

一拍。

「……意味、分かるよね?」

動画が終わった。

画面が暗くなる。

ガレージを沈黙が包んだ。

レイモンドが即座に口を開く。

「行くな」

キランが振り返る。

レイモンドの表情には一切の迷いがなかった。

「罠くらい見れば分かる」

マッハも頷いた。

「私もレイモンドに同意します」

キランはため息をつく。

「分かってる」

暗い画面へ視線を戻す。

「でも、行くしかない」

レイモンドの目が細くなる。

「選択肢はいつだってある」

「聞いただろ」

キランは彼を見る。

「俺が行こうが行くまいが、ショーはやるって」

サイバー・ドラゴンを思い出す。

サイクロプスを。

再生数のためだけに、すでに引き起こされた破壊を。

「罪のない人たちを危険にさらすわけにはいかない……」

声が強くなる。

「……俺に何かできるなら、なおさらだ」

「ダメだ」

「レイモンド――」

「ダメだ」

キランは彼へ近づいた。

「**頼む。**」

レイモンドが止まる。

キランの声が弱くなった。

「もし俺のせいで誰かが傷ついたら……」

唾を飲み込む。

「……俺には耐えられない」

レイモンドを見つめる。

「分かるだろ?」

数秒間――

レイモンドは何も言わなかった。

やがて視線を逸らす。

その表情の奥に、何か痛々しいものが浮かんだ。

キランには見えない記憶。

レイモンドはため息をついた。

「……分かった」

キランの身体から少し力が抜ける。

するとレイモンドがまっすぐ彼を見る。

「ただし、俺も行く」

キランは反論しても無駄だと分かっていた。

今回は――

最初から、反論しようともしなかった。

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