↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
69/193

プロフェッサー・テック

「撃て!」

アダムの命令が、すべての狙撃手の通信機に響いた。

三丁のライフルが同時に火を噴く。

**バン! バン! バン!**

レーザーがプロフェッサー・テックめがけて一直線に走った。

キランは、当然避けるものだと思った。

だが。

避けなかった。

プロフェッサー・テックは、ただ片手を上げた。

レーザーが止まった。

空中で。

キランの目が見開かれる。

「なっ――?」

三本のエネルギー光線が、プロフェッサー・テックの目の前で完全に静止している。

機械の触手に首を締めつけられ、必死にもがいていたマドックスさえ、信じられないものを見るように目を見開いた。

「どうやって……?」

プロフェッサー・テックが笑った。

「知っているか? レーザーの一発一発には、顕微鏡でも見えないほど微小なナノマイトが含まれている」

指を動かす。

空中で静止していた光線が向きを変えた。

「だからこそ――俺が操れる!」

マッハは即座に何が起きているのか理解した。

「まずい……」

プロフェッサー・テックが手を払った。

レーザーが逆方向へ飛ぶ。

屋上へ向かって。

**ザッ! ザッ! ザッ!**

「ぐあっ!」

「うっ!」

「がっ!」

三人の狙撃手が全員撃ち抜かれた。

その身体が崩れ落ちる。

キランは呆然と見つめた。

プロフェッサー・テックは攻撃を防いだだけではない。

警官たち自身の武器を。

そのまま彼らへ返したのだ。

プロフェッサー・テックは再びマドックスへ向き直った。

「次に誰かから技術を*盗む*ときは……」

触手がさらに締まる。

「……せめて、その技術の能力を最大限に引き出す方法くらい覚えておけ!」

マドックスは必死に首元を掻きむしった。

その瞬間――

**ドガァン!**

触手を制御していた装置が爆発した。

プロフェッサー・テックが勢いよく振り返る。

「なに?」

触手がマドックスを解放した。

彼はステージへ崩れ落ち、激しく咳き込む。

すぐさまボディーガードたちが駆け寄り、安全な場所へ引きずっていった。

プロフェッサー・テックは攻撃してきた者たちへ向き直る。

アダム。

そしてパトロール。

アダムが彼の前へ浮かび上がった。

「そこまでだ、電気頭!」

武器を構える。

「逮捕する!」

パトロールも隣へ移動した。

「両手を上げて――」

プロフェッサー・テックが片手を上げた。

パトロールが硬直した。

「ンンンッ!」

アダムが横を見る。

「パトロール?」

ロボットの身体が激しく震え始める。

装甲から火花が噴き出した。

「どうした!?」

「分かりません!」

パトロールの声が歪む。

「回路が……焼けています……」

プロフェッサー・テックが拳を握った。

パトロールが絶叫する。

そして。

プロフェッサー・テックは腕を横へ振り払った。

パトロールの身体がステージを横切って吹き飛んだ。

アダムも巻き込まれる。

**ドガァン!**

二人が地面へ叩きつけられた。

「ぐぅぅっ!」

キランは目を見開いた。

警察の武器は使えない。

パトロールも使えない。

テクノロジーである限り。

何もかもがプロフェッサー・テックの武器になり得る。

ギアがキランを見る。

キランが何をするつもりなのか。

もう分かっていた。

キランの車椅子が変形を始める。

装甲が所定の位置へ移動する。

プラズマキャノンが展開された。

「仕事の時間だ」

ギアの表情が険しくなる。

「気をつけろ」

キランが加速した。

マッハも隣を飛ぶ。

接近する二人に気づき。

プロフェッサー・テックが振り返った。

キランは数メートル手前で停止する。

「お前が誰なのかも、何のためにここへ来たのかも知らない……」

キャノンにエネルギーが集まる。

「……でも今すぐやめないなら、ぶっ飛ばすぞ!」

プロフェッサー・テックは。

どこか面白がっているようだった。

「俺の名はプロフェッサー・テック」

倒れた警官たちを示す。

「さっきの実演を見ていなかったのか知らないが、そのブラスターは俺には通用しないぞ!」

キランがマッハを見る。

マッハもキランを見る。

二人とも。

何も言わなかった。

キランが撃つ。

**ズァッ!**

プラズマ弾がプロフェッサー・テックの胸へ直撃した。

「!?」

男の身体がステージから吹き飛ぶ。

**ドサッ!**

キランが瞬きをする。

「おお」

マッハが笑った。

「予想より簡単でしたね」

プロフェッサー・テックがゆっくり身体を起こす。

「理解できん……」

キランの武器を凝視する。

「どうやって……?」

「ブラスターはプラズマ式です」

マッハが説明した。

キランがニヤリと笑う。

「つまり……」

再びキャノンを構える。

「……操れるテクノロジーがない」

プロフェッサー・テックが見つめる。

姿を現して以来。

初めて。

心から驚いているように見えた。

だが。

その驚きもすぐに消える。

「なるほど。賢い」

立ち上がった。

「ただし、一つ重要なことを忘れている……」

キランの笑みが消える。

プロフェッサー・テックが手を上げた。

「弾そのものはテクノロジーではないかもしれない……」

指がゆっくり曲がる。

「……だが、お前のVentは違う!」

マッハが絶叫した。

「アアッ!」

キランが振り向く。

「マッハ!?」

マッハの身体が激しく明滅した。

紫色の光が歪み。

輪郭が崩れる。

「システムに侵入されています!」

マッハは頭を抱えた。

「制御……できない……」

腕が勝手に跳ね上がった。

武器システムが起動する。

そして――

マッハが。

逃げ惑う一般市民へ向き直った。

キランの血の気が引いた。

「マッハ……」

キャノンにエネルギーが集まり始める。

「何してるんだ!?」

マッハは必死に自分の身体へ抗っていた。

「私ではありません! 制御できないんです!」

プロフェッサー・テックが笑う。

「そのとおり」

キランはマッハを掴もうとした。

だが。

何の意味もない。

マッハは物理的にそこに存在しているわけではない。

掴める身体などない。

力ずくで押さえ込むこともできない。

あるのは。

ソフトウェアだけ。

そして今。

そのソフトウェアをプロフェッサー・テックが支配していた。

マッハの照準システムが群衆をなぞっていく。

男。

女。

子供。

必死に逃げようとしている人々。

「正気か!?」

キランがプロフェッサー・テックへ振り向いた。

「本気でこんな無関係な人たちを殺すつもりか!?」

プロフェッサー・テックは微動だにしない。

「必要ならな」

キランは彼を睨んだ。

「マドックスには、俺にしたことの代償を払わせる!」

プロフェッサー・テックがどんな恨みを抱えていようと。

マドックスが何をしたというのだろうと。

もうキランには関係なかった。

その答えが。

これだというのなら。

警官たちがマッハと一般市民の間へ駆け込んだ。

武器をプロフェッサー・テックへ向ける。

「やめろ!」

一人の警官が叫ぶ。

「やめなければ撃つ!」

プロフェッサー・テックが彼らを見る。

その自信が。

わずかに揺らいだ。

警官が多すぎる。

目撃者が多すぎる。

不確定要素が多すぎる。

離れた場所からギアが見ていた。

「最悪だ……」

プロフェッサー・テックはゆっくり後退する。

マッハの武器は。

まだ一般市民へ向けられたまま。

「こいつらが来て運がよかったな」

キランを見る。

「でなければ、とっくに引き金を引いていた」

キランの表情が険しくなる。

プロフェッサー・テックが少し近づいた。

「だが覚えておけ……」

電子音声が低くなる。

「俺の邪魔をするなら、お前もマドックスと一緒に死ぬ」

キランは目を逸らさない。

プロフェッサー・テックが首を傾げる。

「だから、よく考えろ」

間。

「奴にそこまでの価値があるのか?」

キランの恐怖が。

怒りに飲み込まれた。

「同じことを、お前に聞こうと思ってたよ」

プロフェッサー・テックの両手が動いた。

突然。

キランの車椅子が激しく跳ねる。

「なっ――!?」

マッハも一緒に引きずられた。

そして――

**ガシャァァン!!**

キランとマッハは警官たちの中へ投げ飛ばされた。

警官たちが次々と倒れる。

キランもその中へ激しく叩きつけられた。

「ぐっ!」

車椅子のシステムが明滅する。

ようやく顔を上げたときには――

プロフェッサー・テックはすでに逃走を始めていた。

いくつもの機械が男の周囲へ浮かび。

その身体を運びながら、エキスポ会場から遠ざかっていく。

警官たちが発砲する。

だが。

すべて外れた。

キランは追おうとした。

しかし。

車椅子が足元ならぬ車体の下で激しく痙攣する。

マッハの姿も激しく明滅していた。

「キラン……」

キランが止まる。

マッハの声は。

弱々しかった。

「私は……」

その瞬間。

アバターが消えた。

キランの目が見開かれる。

「マッハ?」

返事はない。

「マッハ!?」

車椅子は。

完全に沈黙した。

そして突然――

**プロフェッサー・テックを止めることは、もはやキランにとって最大の問題ではなくなっていた。**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。