仕事をお探しですか?
レイモンドは、屋上から屋上へと続く、かすかな機械液の跡を追っていた。
簡単ではなかった。
RB–211の移動速度は速く、黒い機械液はすでにシトロン・シティの建物を覆う汚れに紛れ始めていた。
それでも、レイモンドは見つけ続けた。
ここに一滴。
あそこに一筋。
そして――
跡が途切れた。
レイモンドは速度を落とした。
眼下には、古びたアパートが建っている。
大家にとっての「修理」が、雨漏りする天井の下にバケツを置くことを意味していそうな場所だった。
レイモンドは建物を見渡した。
そして。
見つけた。
機械液の跡は、上層階にある一室へまっすぐ続いている。
レイモンドが笑った。
「ビンゴ」
建物へ向かって飛ぶ。
静かに。
今度は、自分から存在を知らせるつもりはなかった。
レイモンドはアパートの窓際へ移動し、慎重に中を覗き込んだ。
マンドレイクがRB–211の前に立っている。
ロボットの損傷した脚には、テープが巻かれていた。
レイモンドが眉を上げる。
*まあ……それも修理っちゃ修理か。*
室内では――
マンドレイクが明らかに苛立っていた。
「何人に見られた?」
RB–211は即答した。
「一人だけです、サー」
マンドレイクがうめいた。
「スナット! どうしてこんなことになった?」
RB–211の脚に巻いた応急処置を締め直す。
「お前は*専門家*だったはずだろ」
「申し訳ありません」
RB–211は完璧なまでに冷静だった。
「不意を突かれただけです」
窓の外で。
レイモンドは会話を聞いていた。
そして、ゆっくりヘルメットの側面へ手を伸ばす。
小型カメラが起動した。
**カシャッ。**
写真を一枚。
マンドレイク。
RB–211。
二人とも、はっきり写っている。
室内では、RB–211が頭部付近の収納部を開いた。
そこから取り出したのは。
USBメモリほどの大きさの、小型データチップ。
「任務そのものは達成しました」
マンドレイクがチップを受け取る。
コンピューターへ挿入した。
瞬時に。
画面いっぱいに情報が表示された。
博物館の見取り図。
出入口。
警備位置。
警備員の巡回ルート。
レイモンドの表情が真剣になる。
ただの泥棒と、そのロボットではない。
何かを企んでいる。
「考えられるすべての侵入口に武装警備員が配置されています」
RB–211が説明した。
マンドレイクは情報を確認する。
「マジか?」
スクロールする。
表情がさらに険しくなった。
「クロックス」
博物館側は。
予想どおりの対応をしていた。
「警備を三倍にしやがった」
マンドレイクは背もたれへ身体を預けた。
「綺麗には入れないな」
RB–211が状況を分析する。
「任務を中止することが、我々にとって最善かと思われます、サー」
マンドレイクがすぐに振り向いた。
「駄目だ」
RB–211が止まる。
マンドレイクの指が再びキーボードへ戻った。
「仕事の準備をしろ」
「ですが、サー――」
「やれ」
部屋が静まり返る。
マンドレイクは入力を続けた。
「ここまで来て、今さら引き返せるか」
表情が険しくなる。
「多少、手が血で汚れたって構うもんか」
レイモンドの目が細くなった。
十分だ。
顔は押さえた。
次の強盗を計画している証拠もある。
そして。
計画を成功させるためなら、人を傷つける覚悟がマンドレイクにあることも確認した。
レイモンドは。
静かに窓から離れた。
だが――
アパートの中でマンドレイクが口にした言葉には。
もう一つの意味があった。
すべては。
数か月前に始まっていた。
**四か月前。**
シトロン・シティ廃棄場は。
タイムカードのある地獄だった。
煙が空気を満たす。
機械が悲鳴を上げる。
金属が金属を擦る。
作業員たちは廃棄された機械の山の間を動き回り、その向こうでは巨大な焼却炉が燃え盛っていた。
そして至るところで――
RBユニットが破壊されていた。
「もっと急げ、お嬢ちゃんたち!」
ビッグ・ボスが廃棄場を歩き回る。
ただそこへ現れるだけで、すでに最悪な職場環境をさらに悪化させるという、ある意味では特殊能力を持った年配の男だった。
「明日までに、このRBユニットを*全部*廃棄しなきゃならんのだぞ!」
作業員たちはロボットの身体を運び。
焼却炉へ直接繋がるコンベアへ載せていく。
その中に――
アラン・マンドレイクがいた。
疲れ果てている。
汚れている。
汗だく。
そして何より。
自分の人生に完全にうんざりしていた。
マンドレイクはRBユニットを一体掴み、コンベアへ投げる。
もう一体。
さらにもう一体。
背後では。
ボスがまだ怒鳴り続けている。
「時間が足りないなんて心配してる奴がいるなら、安心しろ!」
マンドレイクの表情が曇った。
「必要なら*徹夜*で働けばいい!」
ボスが止まる。
そして。
ニヤリと笑った。
「ああ、悪い悪い」
マンドレイクには。
もう次に何を言うか分かっていた。
「今、『俺たち』って言ったか?」
ボスが笑う。
「*お前ら*の間違いだ」
マンドレイクは奥歯を噛み締めた。
何も言わない。
口答えをすれば、一日がさらに長くなる。
それくらいは。
とっくに学んでいた。
そのとき――
何かが目に入った。
廃棄の山の中に。
もう一体のRBユニットが横たわっている。
マンドレイクが足を止めた。
他の大半とは違い――
驚くほど状態がいい。
ほとんど損傷していない。
識別番号も。
はっきり残っていた。
**211。**
マンドレイクは見つめた。
まだ動きそうな機械を。
どうして捨てる?
身を屈め。
手を伸ばす。
触れた瞬間――
ロボットの目が点灯した。
マンドレイクが飛び上がる。
「!」
RB–211が。
まっすぐ彼を見る。
「こんにちは」
マンドレイクは。
固まった。
「RB–211、任務に復帰します」
ロボットの声は。
完全に明瞭だった。
「何をお手伝いしましょうか?」
信じられない。
動いている。
かろうじてではない。
一部だけでもない。
完全に正常に見える。
「おい!」
マンドレイクの胃が縮み上がった。
振り向く。
ビッグ・ボスが。
こちらへ向かって歩いてくる。
「何をしてる!?」
マンドレイクは即座にRB–211を。
他のロボットの山へ戻した。
RB–211が停止する。
「いつもの仕事ですよ、ボス」
年配の男が目の前で止まる。
「また減らず口か?」
マンドレイクは前を向いたまま。
「それなら、すぐ直せるぞ」
ボスが周囲を見回した。
「誰と話してた?」
「誰とも」
「誰とも?」
マンドレイクの目が。
彼を裏切った。
ほんの一瞬――
RB–211を見てしまった。
ボスは。
見逃さなかった。
「本当か?」
一歩近づく。
「デジタル音声みたいなのが聞こえたが」
マンドレイクは黙った。
その瞬間――
**バシッ!**
ボスが。
彼の側頭部を平手打ちした。
マンドレイクの全身が硬直する。
「俺が話してるときは、こっちを見ろ!!」
顔の筋肉が。
すべて強張った。
殴りたかった。
心の底から。
殴りたかった。
だが。
しなかった。
ボスは待った。
「何か言いたいことは?」
マンドレイクは何も言わない。
「ふん」
男が首を振った。
「なんでお前なんかに時間を無駄にしてるんだか」
背を向ける。
「仕事に戻れ」
マンドレイクは。
ボスが他の作業員たちの間へ消えるまで。
その場から動かなかった。
そして。
RB–211を見る。
ロボットは。
完全に静止していた。
周囲では――
作業員たちが。
次々と機械を焼却炉へ送っている。
一体。
また一体。
マンドレイクは炎を見た。
次に。
RB–211を見る。
一つの考えが。
頭の中で形になり始めた。
とんでもなく悪い考え。
そして。
人生で思いついた中で最高の悪い考えかもしれない。
「こんな仕事、スラッグだ」
ロボットへ近づく。
身体を軽く叩いた。
「もう行ったぞ」
反応なし。
マンドレイクは周囲を確認する。
そして。
小声で――
「起きてるか?」
RB–211の目が点灯した。
「起きています」
マンドレイクが笑った。
焼却炉を見る。
遠くにいるボスを見る。
そして。
もう一度。
ロボットを見る。
「仕事、探してるか?」
**現在。**
マンドレイクは。
コンピューターの画面に映し出されたトリニティ博物館の計画図を見つめていた。
四か月前。
彼はRB–211に。
逃げ道を与えた。
そして今――
RB–211が。
彼自身に逃げ道を与えようとしている。
マンドレイクは。
最後のコマンドを入力し終えた。
「よし」
RB–211を見る。
「全部準備できた」
ほんの一瞬。
その表情が柔らかくなった。
「俺を誇らしい気持ちにさせてくれよ」
RB–211は。
準備を整えて立っていた。
「はい、サー」
アパートの外では――
レイモンドが。
静かに飛び去っていった。
マンドレイクもRB–211も。
彼の存在には気づいていない。
秘密は守られている。
誰も自分たちの計画を知らない。
そう信じていた。
だが。
間違っていた。
その夜――
ギアのガレージは。
いつもよりずっと混雑していた。
キランは車椅子に座って呼吸療法を受けながら。
レイモンドが撮影した写真を見ていた。
写真には。
マンドレイク。
その隣には。
RB–211。
キランが写真を見つめる。
「こいつが博物館を襲ったのか?」
レイモンドが頷いた。
「ああ」
ギアが。
さらに顔を近づける。
ロボットを見た瞬間。
その表情が変わった。
「RBユニットだ」
キランが。
ギアを見る。
ギアは写真をじっと観察した。
「犯罪目的で簡単に改造されたり、プログラムを書き換えられたりする問題があって、市場から回収されたんだ」
キランは。
もう一度RB–211を見る。
ほんの数秒前より。
そのロボットが。
遥かに危険な存在に見えた。
そしてレイモンドによれば――
そいつはすでに。
**次の襲撃に向けて動き始めていた。**




