↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
58/230

Ventシーカーズ

ジャリックは。

まるでミサイルのように。

キランへ突っ込んできた。

戦略などない。

ためらいもない。

手加減もない。

あるのは。

怒りだけ。

**ゴオオオッ!**

キランが。

身体ごと横へ捻るように回避する。

炎の一撃が。

轟音とともに横を通り過ぎた。

ジャリックは。

即座に追撃する。

もう一発。

さらに一発。

また一発。

キランは。

力で押し返そうとはしなかった。

まだ。

そのときではない。

ただ。

動く。

避ける。

待つ。

すべて。

作戦通り。

ジャリックの隣で。

ブレイズが叫んだ。

「いい度胸してんじゃねえか!」

キランのプラズマキャノンが。

二人へ向く。

**ズバッ! ズバッ! ズバッ! ズバッ!**

ジャリックが。

飛んでくる攻撃を避ける。

一発が。

車椅子の側面を。

かすめそうになった。

キランが。

照準を修正する。

そして。

再び撃つ。

**ドガァン!**

命中。

ジャリックとブレイズが。

空中を後方へ吹き飛ばされた。

キランが笑う。

「度胸だけじゃないぞ!」

ほんの一瞬――

作戦は。

完璧に機能していた。

そのとき。

キランの腕を。

氷が覆った。

「ぐあっ!」

反射的に。

身体を引く。

袖と装甲の一部が。

分厚い霜に覆われていた。

近くには。

ザイラ。

武器は。

まだこちらへ向けられている。

「そこまでよ!」

キランは。

凍りついた腕を押さえた。

その向こうでは。

ジャリックが。

すでに立て直している。

視線は。

一度もキランから離れなかった。

ザイラが。

弟へ近づく。

「ジャリック、挑発されてるのよ!」

ジャリックは。

答えない。

「乗っちゃ駄目!」

その表情は。

完全に正気を失っていた。

「いや……」

再び。

武器の周囲に炎が集まり始める。

「あいつを焼き尽くすのが、楽しみで仕方ねえ!」

ブリザードが。

ザイラを見る。

「完全に制御不能です」

見れば分かる。

「私たちに止められるとは思えません」

ザイラは。

ジャリックを見つめた。

「関係ない」

表情を引き締める。

「死なせるわけにはいかない」

ブリザードが。

彼女を見る。

「論理的に考えて――」

その瞬間。

一撃が。

二人を直撃した。

「ぐううっ!!」

ザイラとブリザードが。

螺旋を描きながら落下する。

車椅子の損傷部分から。

煙が噴き出していた。

ジャリックは。

気づきもしない。

まだ。

キランを追い回していた。

「いい一発だ!」

もう一発のプラズマを。

ギリギリで避ける。

「でも、そんな簡単に俺たちは倒せねえぞ!」

キランが。

再び撃つ。

ジャリックが。

横へ回転して回避。

ブレイズが笑う。

二人とも。

ほとんど恍惚としているようだった。

そのとき――

ジャリックが。

退屈そうな顔をし始めた。

それが。

なぜか余計に嫌な予感をさせた。

「なあ、ブレイズ」

キランが。

目を細める。

ジャリックが笑う。

「そろそろ飽きてきた」

ブレイズの表情が。

一瞬で危険なものへ変わった。

「もっと面白くしようぜ」

ブレイズは。

およそ一秒考えた。

「Ventシーカーズなんてどうだ?」

キランの攻撃が止まった。

マッハも。

動きを止める。

「Ventシーカーズ?」

どう考えても。

嫌な名前だった。

ジャリックが笑う。

車椅子の後部にある。

複数の格納部が開いた。

中には――

ミサイル。

小型。

コンパクト。

炎のような排気を。

赤々と輝かせている。

マッハが見つめる。

キランも見つめる。

ジャリックが。

スイッチを押した。

**シュシュシュシュシュシュッ!**

ミサイルが。

一斉に発射された。

マッハの目が。

大きく見開かれる。

「今すぐ全速力で飛ぶのが賢明かと思われます」

キランが頷く。

「だな」

二人は。

向きを変えた。

そして。

逃げた。

ミサイルが。

追ってくる。

速い。

ものすごく速い。

キランは。

空を加速する。

ミサイルも。

軌道を修正する。

左へ旋回。

ミサイルも左へ。

急降下。

ミサイルも急降下。

上昇。

ついてくる。

その後方で。

ジャリックは。

嬉しそうに眺めていた。

「お前って天才だって言ったことあったっけ?」

ブレイズが。

得意げな顔をする。

「全然足りねえな」

「一本取られた」

地上では。

ザイラが。

必死に姿勢を立て直していた。

ブリザードは。

空を駆け抜けるミサイルを見つめる。

そして。

表情が変わった。

「**馬鹿ども!**」

ザイラが。

彼女を見る。

「まだテストしてないのに!」

ブリザードの苛立ちが。

さらに強くなる。

「下手をすれば、私たち全員が死にます!」

ザイラは。

空を見上げた。

ジャリックは。

実験段階の兵器を使用した。

街のど真ん中で。

本当に制御できるのかすら。

分かっていないのに。

もちろん。

あいつならやる。

一方――

キランは。

打つ手がなくなりつつあった。

さらに加速する。

ミサイルは。

まだ後ろにいる。

「振り切れない!」

マッハが。

ミサイルの動きを分析する。

そして――

「振り切る必要はないかもしれません」

キランが。

彼を見る。

「どういう……?」

マッハは。

背後を見る。

そして。

ジャリックへ視線を向けた。

キランも。

その視線を追う。

理解した。

「あ」

ゆっくり。

笑みが浮かぶ。

遥か後方では。

ジャリックが。

あくびをしていた。

「ふぁ~あ……待ちくたびれて白髪になりそうだぜ」

ブレイズが笑う。

「そろそろ終わらせねえとな」

そのとき。

ジャリックが気づいた。

キランが。

方向転換している。

こちらへ。

ジャリックが眉をひそめる。

「おい……」

ブレイズが。

身を乗り出す。

「何してんだ?」

「知らねえ」

キランが加速する。

真っ直ぐ。

二人へ。

Ventシーカーズは。

その真後ろを追っている。

ジャリックが笑った。

「ビビって逃げてんじゃねえぞ!」

キランが。

さらに近づく。

「止まって俺たちと――」

キランが。

二人の横を通り過ぎた。

ジャリックが振り向く。

そして。

ミサイルを見た。

目が見開かれる。

ブレイズも。

同じだった。

ジャリックは。

迫ってくる自分の兵器を見つめた。

「スナット」

ミサイルが。

直撃した。

**ドガァァァン!!**

爆発が。

ジャリックとブレイズを飲み込んだ。

衝撃波で。

キランも前方へ吹き飛ばされる。

「ぐううっ!!」

車椅子が。

空中で回転する。

マッハのシステムから。

警告が鳴り響いた。

キランは。

必死に制御する。

その下では――

アダム。

パトロール。

レイモンド。

ザイラ。

全員が。

空を見上げていた。

巨大な火球が。

空を覆う。

そして――

消えていった。

キランが。

姿勢を安定させる。

煙が。

ゆっくり晴れていく。

ジャリックがいた場所を見る。

何もない。

車椅子も。

ブレイズも。

ジャリックも。

ただ。

金属片だけが。

空から落ちていた。

キランの顔から。

血の気が引いた。

「な……?」

マッハも。

何も言えず見つめていた。

キランの声が。

震える。

「俺は……」

ミサイルで。

ジャリックの車椅子を損傷させるつもりだった。

動けなくして。

戦いを終わらせる。

そのつもりだった。

こんな――

こんなことではない。

戦場の反対側で。

ザイラは。

空を見つめていた。

捻じ曲がった金属片が。

彼女の隣へ落ちてくる。

もう一つ。

さらに。

もう一つ。

弟の車椅子の破片。

ザイラが。

手を伸ばした。

一つを。

掴む。

手が震えた。

涙が。

目に溜まり始める。

止めようとした。

できなかった。

ジャリックは。

いなくなった。

弟。

守ると誓った。

あの少年。

六年間。

どうしているのか。

ずっと考え続けていた少年。

ようやく。

再会できた弟。

いなくなった。

ブリザードが。

彼女の隣へ移動した。

どちらも。

何も言わなかった。

ザイラは。

手の中の金属片を見つめる。

そのとき――

「**一歩も動くな!**」

アダムの声が。

その瞬間を打ち砕いた。

警察が。

二人を包囲していた。

武器が。

一斉に向けられている。

先頭には。

パトロール。

「逮捕する!」

ブリザードが。

武器を起動しようとする。

何も起こらない。

「武器システムが故障しています」

ザイラは。

答えなかった。

まだ。

破片を見つめている。

「投降する以外に選択肢はありません」

アダムの表情が。

険しくなる。

「その通りだ!」

ザイラは。

抵抗しなかった。

もう。

戦おうともしなかった。

警官たちが。

近づいてくる。

拘束具が。

取りつけられた。

ブリザードのシステムが。

停止させられる。

ザイラは。

警察のホバー車両の後部へ。

大人しく収容された。

その間も。

ジャリックの車椅子の破片から。

一度も目を離さなかった。

その近くでは――

アダムが。

キラン、マッハ、レイモンドへ近づいていた。

キランは。

ほとんど気づかなかった。

「こんなこと言う日が来るとは思わなかったが……」

アダムが。

三人を見る。

「……助太刀、感謝する」

レイモンドが笑った。

「警察のお役に立てたなら何よりだ」

アダムは。

歩き去ろうとする。

だが。

振り返った。

「ああ、それと。次に警察の仕事へ首を突っ込んだら……」

片方の口角が。

上がる。

「……今度はこんなに優しくしないからな」

レイモンドが。

手を振って追い払うような仕草をした。

「はいはい、分かってるよ」

アダムとパトロールは。

他の警官たちのほうへ向かった。

レイモンドが。

キランの隣へ移動する。

「まあ」

周囲の惨状を。

見回した。

「いろいろあったな」

キランの目は。

まだ空を見ていた。

「……ああ」

レイモンドが気づく。

冗談めいた表情が消えた。

「大丈夫か?」

キランは。

答えなかった。

レイモンドは。

少し空気を軽くしようとした。

「お前、誰かに母ちゃんをMMMされたみたいな顔してるぞ」

一拍。

そして。

顔をしかめる。

「……言ってから想像すると、吐きそうになるな」

ようやく。

キランが口を開いた。

「俺が殺した」

レイモンドが止まる。

キランが。

彼を見る。

目には。

涙が浮かんでいた。

「ミサイルで、あいつの車椅子を動けなくするつもりだった」

マッハが。

頭を下げる。

「でも……完全に吹き飛ばした」

キランは。

唾を飲み込んだ。

「あいつは狂ってた……」

落ちていく金属片を見る。

「……でも、死ぬべきじゃなかった」

レイモンドが。

ため息をついた。

「そんなに気にするな」

キランが。

彼を見る。

レイモンドの声が。

少し柔らかくなった。

「前線で四年過ごした人間から言わせてもらえばな」

キランは。

視線を逸らす。

「今はきつい」

レイモンドが続ける。

「でも時間が経てば、慣れる」

キランの表情が。

即座に変わった。

「でも、俺は慣れたくない」

その答えに。

レイモンドは。

黙った。

少しの間。

そして――

「分かった」

レイモンドが頷く。

「じゃあ、こう考えろ」

キランが。

彼を見る。

「あいつなら、一瞬もためらわずにお前を殺してた」

マッハも。

静かに付け加えた。

「私も同意します」

キランが。

マッハを見る。

「他に選択肢はありませんでした」

キランは。

黙ったままだった。

二人の言う通りなのかもしれない。

違うのかもしれない。

今は――

分からなかった。

「……そうかもしれないな」

だが。

その言葉を口にしても。

少しも。

気持ちは楽にならなかった。

ほんの少しも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。