Ventシーカーズ
ジャリックは。
まるでミサイルのように。
キランへ突っ込んできた。
戦略などない。
ためらいもない。
手加減もない。
あるのは。
怒りだけ。
**ゴオオオッ!**
キランが。
身体ごと横へ捻るように回避する。
炎の一撃が。
轟音とともに横を通り過ぎた。
ジャリックは。
即座に追撃する。
もう一発。
さらに一発。
また一発。
キランは。
力で押し返そうとはしなかった。
まだ。
そのときではない。
ただ。
動く。
避ける。
待つ。
すべて。
作戦通り。
ジャリックの隣で。
ブレイズが叫んだ。
「いい度胸してんじゃねえか!」
キランのプラズマキャノンが。
二人へ向く。
**ズバッ! ズバッ! ズバッ! ズバッ!**
ジャリックが。
飛んでくる攻撃を避ける。
一発が。
車椅子の側面を。
かすめそうになった。
キランが。
照準を修正する。
そして。
再び撃つ。
**ドガァン!**
命中。
ジャリックとブレイズが。
空中を後方へ吹き飛ばされた。
キランが笑う。
「度胸だけじゃないぞ!」
ほんの一瞬――
作戦は。
完璧に機能していた。
そのとき。
キランの腕を。
氷が覆った。
「ぐあっ!」
反射的に。
身体を引く。
袖と装甲の一部が。
分厚い霜に覆われていた。
近くには。
ザイラ。
武器は。
まだこちらへ向けられている。
「そこまでよ!」
キランは。
凍りついた腕を押さえた。
その向こうでは。
ジャリックが。
すでに立て直している。
視線は。
一度もキランから離れなかった。
ザイラが。
弟へ近づく。
「ジャリック、挑発されてるのよ!」
ジャリックは。
答えない。
「乗っちゃ駄目!」
その表情は。
完全に正気を失っていた。
「いや……」
再び。
武器の周囲に炎が集まり始める。
「あいつを焼き尽くすのが、楽しみで仕方ねえ!」
ブリザードが。
ザイラを見る。
「完全に制御不能です」
見れば分かる。
「私たちに止められるとは思えません」
ザイラは。
ジャリックを見つめた。
「関係ない」
表情を引き締める。
「死なせるわけにはいかない」
ブリザードが。
彼女を見る。
「論理的に考えて――」
その瞬間。
一撃が。
二人を直撃した。
「ぐううっ!!」
ザイラとブリザードが。
螺旋を描きながら落下する。
車椅子の損傷部分から。
煙が噴き出していた。
ジャリックは。
気づきもしない。
まだ。
キランを追い回していた。
「いい一発だ!」
もう一発のプラズマを。
ギリギリで避ける。
「でも、そんな簡単に俺たちは倒せねえぞ!」
キランが。
再び撃つ。
ジャリックが。
横へ回転して回避。
ブレイズが笑う。
二人とも。
ほとんど恍惚としているようだった。
そのとき――
ジャリックが。
退屈そうな顔をし始めた。
それが。
なぜか余計に嫌な予感をさせた。
「なあ、ブレイズ」
キランが。
目を細める。
ジャリックが笑う。
「そろそろ飽きてきた」
ブレイズの表情が。
一瞬で危険なものへ変わった。
「もっと面白くしようぜ」
ブレイズは。
およそ一秒考えた。
「Ventシーカーズなんてどうだ?」
キランの攻撃が止まった。
マッハも。
動きを止める。
「Ventシーカーズ?」
どう考えても。
嫌な名前だった。
ジャリックが笑う。
車椅子の後部にある。
複数の格納部が開いた。
中には――
ミサイル。
小型。
コンパクト。
炎のような排気を。
赤々と輝かせている。
マッハが見つめる。
キランも見つめる。
ジャリックが。
スイッチを押した。
**シュシュシュシュシュシュッ!**
ミサイルが。
一斉に発射された。
マッハの目が。
大きく見開かれる。
「今すぐ全速力で飛ぶのが賢明かと思われます」
キランが頷く。
「だな」
二人は。
向きを変えた。
そして。
逃げた。
ミサイルが。
追ってくる。
速い。
ものすごく速い。
キランは。
空を加速する。
ミサイルも。
軌道を修正する。
左へ旋回。
ミサイルも左へ。
急降下。
ミサイルも急降下。
上昇。
ついてくる。
その後方で。
ジャリックは。
嬉しそうに眺めていた。
「お前って天才だって言ったことあったっけ?」
ブレイズが。
得意げな顔をする。
「全然足りねえな」
「一本取られた」
地上では。
ザイラが。
必死に姿勢を立て直していた。
ブリザードは。
空を駆け抜けるミサイルを見つめる。
そして。
表情が変わった。
「**馬鹿ども!**」
ザイラが。
彼女を見る。
「まだテストしてないのに!」
ブリザードの苛立ちが。
さらに強くなる。
「下手をすれば、私たち全員が死にます!」
ザイラは。
空を見上げた。
ジャリックは。
実験段階の兵器を使用した。
街のど真ん中で。
本当に制御できるのかすら。
分かっていないのに。
もちろん。
あいつならやる。
一方――
キランは。
打つ手がなくなりつつあった。
さらに加速する。
ミサイルは。
まだ後ろにいる。
「振り切れない!」
マッハが。
ミサイルの動きを分析する。
そして――
「振り切る必要はないかもしれません」
キランが。
彼を見る。
「どういう……?」
マッハは。
背後を見る。
そして。
ジャリックへ視線を向けた。
キランも。
その視線を追う。
理解した。
「あ」
ゆっくり。
笑みが浮かぶ。
遥か後方では。
ジャリックが。
あくびをしていた。
「ふぁ~あ……待ちくたびれて白髪になりそうだぜ」
ブレイズが笑う。
「そろそろ終わらせねえとな」
そのとき。
ジャリックが気づいた。
キランが。
方向転換している。
こちらへ。
ジャリックが眉をひそめる。
「おい……」
ブレイズが。
身を乗り出す。
「何してんだ?」
「知らねえ」
キランが加速する。
真っ直ぐ。
二人へ。
Ventシーカーズは。
その真後ろを追っている。
ジャリックが笑った。
「ビビって逃げてんじゃねえぞ!」
キランが。
さらに近づく。
「止まって俺たちと――」
キランが。
二人の横を通り過ぎた。
ジャリックが振り向く。
そして。
ミサイルを見た。
目が見開かれる。
ブレイズも。
同じだった。
ジャリックは。
迫ってくる自分の兵器を見つめた。
「スナット」
ミサイルが。
直撃した。
**ドガァァァン!!**
爆発が。
ジャリックとブレイズを飲み込んだ。
衝撃波で。
キランも前方へ吹き飛ばされる。
「ぐううっ!!」
車椅子が。
空中で回転する。
マッハのシステムから。
警告が鳴り響いた。
キランは。
必死に制御する。
その下では――
アダム。
パトロール。
レイモンド。
ザイラ。
全員が。
空を見上げていた。
巨大な火球が。
空を覆う。
そして――
消えていった。
キランが。
姿勢を安定させる。
煙が。
ゆっくり晴れていく。
ジャリックがいた場所を見る。
何もない。
車椅子も。
ブレイズも。
ジャリックも。
ただ。
金属片だけが。
空から落ちていた。
キランの顔から。
血の気が引いた。
「な……?」
マッハも。
何も言えず見つめていた。
キランの声が。
震える。
「俺は……」
ミサイルで。
ジャリックの車椅子を損傷させるつもりだった。
動けなくして。
戦いを終わらせる。
そのつもりだった。
こんな――
こんなことではない。
戦場の反対側で。
ザイラは。
空を見つめていた。
捻じ曲がった金属片が。
彼女の隣へ落ちてくる。
もう一つ。
さらに。
もう一つ。
弟の車椅子の破片。
ザイラが。
手を伸ばした。
一つを。
掴む。
手が震えた。
涙が。
目に溜まり始める。
止めようとした。
できなかった。
ジャリックは。
いなくなった。
弟。
守ると誓った。
あの少年。
六年間。
どうしているのか。
ずっと考え続けていた少年。
ようやく。
再会できた弟。
いなくなった。
ブリザードが。
彼女の隣へ移動した。
どちらも。
何も言わなかった。
ザイラは。
手の中の金属片を見つめる。
そのとき――
「**一歩も動くな!**」
アダムの声が。
その瞬間を打ち砕いた。
警察が。
二人を包囲していた。
武器が。
一斉に向けられている。
先頭には。
パトロール。
「逮捕する!」
ブリザードが。
武器を起動しようとする。
何も起こらない。
「武器システムが故障しています」
ザイラは。
答えなかった。
まだ。
破片を見つめている。
「投降する以外に選択肢はありません」
アダムの表情が。
険しくなる。
「その通りだ!」
ザイラは。
抵抗しなかった。
もう。
戦おうともしなかった。
警官たちが。
近づいてくる。
拘束具が。
取りつけられた。
ブリザードのシステムが。
停止させられる。
ザイラは。
警察のホバー車両の後部へ。
大人しく収容された。
その間も。
ジャリックの車椅子の破片から。
一度も目を離さなかった。
その近くでは――
アダムが。
キラン、マッハ、レイモンドへ近づいていた。
キランは。
ほとんど気づかなかった。
「こんなこと言う日が来るとは思わなかったが……」
アダムが。
三人を見る。
「……助太刀、感謝する」
レイモンドが笑った。
「警察のお役に立てたなら何よりだ」
アダムは。
歩き去ろうとする。
だが。
振り返った。
「ああ、それと。次に警察の仕事へ首を突っ込んだら……」
片方の口角が。
上がる。
「……今度はこんなに優しくしないからな」
レイモンドが。
手を振って追い払うような仕草をした。
「はいはい、分かってるよ」
アダムとパトロールは。
他の警官たちのほうへ向かった。
レイモンドが。
キランの隣へ移動する。
「まあ」
周囲の惨状を。
見回した。
「いろいろあったな」
キランの目は。
まだ空を見ていた。
「……ああ」
レイモンドが気づく。
冗談めいた表情が消えた。
「大丈夫か?」
キランは。
答えなかった。
レイモンドは。
少し空気を軽くしようとした。
「お前、誰かに母ちゃんをMMMされたみたいな顔してるぞ」
一拍。
そして。
顔をしかめる。
「……言ってから想像すると、吐きそうになるな」
ようやく。
キランが口を開いた。
「俺が殺した」
レイモンドが止まる。
キランが。
彼を見る。
目には。
涙が浮かんでいた。
「ミサイルで、あいつの車椅子を動けなくするつもりだった」
マッハが。
頭を下げる。
「でも……完全に吹き飛ばした」
キランは。
唾を飲み込んだ。
「あいつは狂ってた……」
落ちていく金属片を見る。
「……でも、死ぬべきじゃなかった」
レイモンドが。
ため息をついた。
「そんなに気にするな」
キランが。
彼を見る。
レイモンドの声が。
少し柔らかくなった。
「前線で四年過ごした人間から言わせてもらえばな」
キランは。
視線を逸らす。
「今はきつい」
レイモンドが続ける。
「でも時間が経てば、慣れる」
キランの表情が。
即座に変わった。
「でも、俺は慣れたくない」
その答えに。
レイモンドは。
黙った。
少しの間。
そして――
「分かった」
レイモンドが頷く。
「じゃあ、こう考えろ」
キランが。
彼を見る。
「あいつなら、一瞬もためらわずにお前を殺してた」
マッハも。
静かに付け加えた。
「私も同意します」
キランが。
マッハを見る。
「他に選択肢はありませんでした」
キランは。
黙ったままだった。
二人の言う通りなのかもしれない。
違うのかもしれない。
今は――
分からなかった。
「……そうかもしれないな」
だが。
その言葉を口にしても。
少しも。
気持ちは楽にならなかった。
ほんの少しも。




